日本向け最上位はスポーツセダン
執筆/撮影:Hajime Aida(会田肇)
【画像】中国BYDのEVセダン「シール」 デザイン/内装【隅々まで見る】 全14枚
2022年夏、中国・深センに本社を置く自動車メーカー「BYD」は、ATTO3、ドルフィン(DOLPHIN)、シール(SEAL)の3車種の電気自動車を発売することを発表して注目を浴びている。そんな中で第3弾となるシールは2024年初めに発売されることが明らかになった。
このシールのプロトタイプに、中国の珠海(ズーハイ)のサーキット内で試乗することができたので、その印象をお伝えしようと思う。
シールはBYDが日本で展開する3車種の中で最上位に位置するスポーツセダンだ。
イルカを意味する「ドルフィン」や、カモメを意味する「シーガル」と同じ同社の「海洋デザイン」シリーズに属するモデルで、シールについてはアザラシの意味を持つ。
ボディサイズは全長4800×全幅1875×全高1460mm。ホイールベースは2920mmと、スタイリッシュかつエレガントなデザインに仕上げられている。
実車を目の前にして感じるのは、そのデザインが奇をてらうことなくひたすら美しさを追求していること。これなら日本で走行しても存在感をしっかりアピールできるのではないかと思った。
内装のクオリティをチェック
インテリアはBYDらしく、大型のディスプレイが目を引く。ドライバー正面のディスプレイは10.25インチと、ATTO3のほぼ2倍!
それだけに見やすさも抜群だった。そして中央のディスプレイは15.6インチと、これも12.8インチのATTO3と比べて遙かに大きい。しかもスイッチでタテ表示になるのはATTO3やドルフィンと同様だ。
シートはサイドサポートがしっかりとした立体的なデザインで、背面と座面には菱形の柄が織り込まれている。ダッシュボードやトリムなど、手で触れる場所は弾力のあるソフトパッドで覆われ、インテリア全体の質感は極めて高いことを感じさせるものだった。
また、スマートフォン用ワイヤレスチャージャーが2台分用意されているのも見逃せない。ちなみに、日本仕様で展開されるかは不明だが、「カラオケ」がマイク付きで楽しめるようになっていたのは面白かった。
パワートレインは、中国国内では後輪駆動のスタンダードと4輪駆動のハイグレードが用意されているが、日本へ導入されるのはハイグレードのみとなるようだ。
コースイン エンブレムは「3.8S」
バッテリーにはBYDのBEVが採用するリン酸鉄リチウムイオン電池を使用した「ブレードバッテリー」を車体に組み込んでボディと一体化するCTB(Cell to Body)技術を採用。これによって安全性と安定性を両立させることに成功している。
ちなみに電池容量は82.5kWhで、満充電時の航続距離は欧州のWLTPモードで555kmを達成しているそうだ。
そこから発生するスペックは数値だけを見てもタダ者ではないことが窺える。
フロントには最高出力230kW・最大トルク360Nmのモーターを、リアには最高出力160kW・最大トルク310Nmのモーターを組み合わせ、そのシステム出力は最高出力390kW・最大トルク670Nmに達する。
聞けば、0-100km/h加速はわずか3.8秒! プロトタイプにはこれを誇示するかのように「3.8S(S=Secondの意味)」のエンブレムが貼られていた。
走り出すとピットロードで路面の凹凸をリニアに拾う硬さを感じたものの、本コースに入ればそんな印象は吹き飛ぶような安定した走りを見せた。アクセルを踏むとアッという間に高速域まで到達。先行車もいたため、130~140km/h以上は出せなかったが、直線路ならさらに上の速度域まで楽に行けそうな感じだった。
走りのいい所 気になる所
コーナリングでもその安定ぶりは見事なもので、速度が多少出ている状態でも不安なく走り抜けることができた。
これは4輪駆動モデルに採用された最新の「iTAC(スマート・トルク制御)」によるトルク制御が功を奏しているものと思われる。
一方でブレーキのタッチはやや緩慢さが感じられ、慣れないうちはコーナリングの直前で少し戸惑うこともあった。
ただ、こうした部分も含めた制御についてもソフトウェアのアップデートで改善は図れるはずだ。日本へ導入されるまでにまだ少し時間もあり、そのあたりの進化に期待したい。
ちなみに中国での価格は現地で27万9800元(日本円換算:約590万円)。
日本では700万円前後になるのではないかと予想する。仮にこの価格帯で発売されれば、多くのBEVのスポーティセダンの驚異となるはず。発売までを楽しみに待ちたいと思う。
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