■人気のジムニー、オーナーの悩みとは?
2020年の1年間で、約4万台の販売台数を記録しているスズキ「ジムニー」。
発売から3年が経過しましたが、新型コロナ禍や半導体不足などの影響により、未だ通常の納期には至っていません。
契約を済ませた人は、もはや達観気味に納車の日を待っていることと思いますが、すでにジムニーオーナーになっている人には見逃せないこともあります。それはドライブフィールです。
先代のJB23型に搭載されていたK6A型と、現行モデルに搭載されているR06A型は同じ直列3気筒ターボエンジンですが、似て非なるものです。
新世代エンジンということもあり、各部に改良が施されています。圧縮比は先代の8.4から9.1に高められており、最大トルクこそ減らしましたが、理論上は過給圧が低い状態でも応答性がいいエンジンになっています。
またフライホイールも先代よりも慣性モーメントを7.5%アップし、低速で粘るエンジンに仕上げました。
しかし乗ってみると、必ずしも満足のいくフィーリングではないのが実情です。
まず最高出力が6000rpmで発生(先代は6500rpm)するようになったことで、高回転域での伸びが感じられなくなり、スポーティ感が抑えられてしまったほか、中速転域でもユーザーから不満が噴出しました。
停止状態から発進すると、途中まで気持ち良く加速をしていきますが、アクセルを開けているにも関わらず、途中でガクンと加速が落ち込んでしまいます。
R06A型はエンジンを保護するためなのか、過給がかかればかかるほどスロットルを閉じるECU制御になっているのです。
本来はノーマルタービンでも0.8-0.9kg/cm2までかけられる過給圧が、実際は0.6kg/cm2程度しかかかっていません。
中間加速に加えて高速での伸びも悪く、とくに100km/h付近ではどうしても物足りなさを感じてしまいます。
では、ECUを解析してデータをいじればいいのではと思うのですが、現行型ではそれも容易にできません。
ジムニーのノーマルタービンも製造しているIHIターボサービスの廣川貴之さんに、その理由を聞いてみました。
「現行型ジムニーには、最新の第五世代のECUが使われています。
このECUの特徴は、なかのデータが高度に暗号化されており、しかもその暗号が数秒ごとに変わるようにできています。これを解析するのは、非常に難しいといえます」
実際、多くのジムニーチューナーが解析に挑んできましたが、現行型デビューから3年が経った今でも、未だ成功したという話は聞きません。
そのため、チューニング業界ではスロットルコントローラーやサブコンピューターなどを装着したり、吸排気系パーツの交換によって、フィーリング改善をおこなってきました。
とくにスロットルコントローラーは、比較的安価なわりに効果がはっきりと出るため、ユーザーの間でも人気となりました。
しかし、装着してスロットルに疑似信号を送るこのアイテムは、フィーリングアップと同時に燃費悪化も招いてしまうというデメリットも。まさにオーナーにとっては諸刃の剣になっているのです。
■現行オーナーの悩みを解決するタービンが登場?
そんななかで、ジムニーファンに福音をもたらされました。それが、JB64用のタービンです。
このタービンはノーマルと同じサイズのハウジングを使いながら、吸気側のインペラを大径化。
吸気側の上部で23mmから28mm、下部で37mmから40mmにサイズアップ。同じ回転数でも、より多くの空気をエンジン内に送り込み、燃焼改善を図ります。
実際に乗ってみると、中速から高速域のトルクがグッと太くなっており、とくにMTで感じていた運転のしにくさ、加速での不満が大きく改善されました。
このタービンは、取り付けるだけでノーマルよりも0.1-0.2kg/cm2ほど過給圧がアップされ(出荷時状態)、吸排気系がノーマルのままでも目に見えるフィーリング改善を望めます。ECUの変更も必要ありません。
また、ターバックル調整式ウェストゲートアクチュエーターを採用しているので、エンジンスープアップにも対応。ブースト圧で0.9-1.1kg/cm2、馬力で約100馬力まで想定しているといいます。
ちなみに販売はジムニー専門店「APIO」とコラボレーションしており、同社で販売している「JB64ハイフローターボ」は同社製マフラーとの相性が考えられています。
しかし、前述の通りノーマルマフラーでも効果十分。しかも純正と同じIHI製ということもあって信頼性が高いです。
筆者(山崎友貴)もJB64の高速性能に満足できず、リッターオーバーのJB74の購入を考えましたが、自動車税のことを考えると、それも悩ましいところ。
しかし、このタービンを付けた状態であれば、1.5リッターエンジンも必要ないかなと思えるようになりました。
長距離ドライブが非常にラクになったうえに、燃費も7km/L以上と上々で、価格も19万8000円(税込み)です。
JB64の“かったるさ”を改善するにはうってつけなパーツかもしれません。
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