2020年4月10日、東京地区のスバルディーラー「東京スバル」のウェブサイトにて、レガシィB4(2020年6月22日まで)とBRZの注文受付を(「2020年7月20日まで」で)終了する、とアナウンスがあった。
掲載されたのがスバルのメーカー公式Webサイトではなく(販売会社である)東京スバルだったため、スバル本体の広報部に詳細を確認したところ、「両モデルとも、国内での現行モデルの注文受付を(発表された時期に)終了する」ということが明らかになった。
レガシィに関しては、いずれ日本国内においてB4(セダン仕様)の販売が終了してアウトバック1本となる。この情報は以前から入ってきていたものの、この2020年4月というタイミングでのBRZ注文受付終了発表には驚かされた。
しかも、兄弟車であるトヨタ86の注文受付終了のアナウンスは、トヨタ側からはいっさいなし、というのも不思議だ。
そこで、今回は次期BRZ&86の開発はどうなっているのか? こうなった背景の裏に何か隠されているのか? これらについて、関係者に取材してわかった情報をお届けしよう。
文/宇井弘明(『ベストカー』元編集局長)
写真/スバル トヨタ ベストカー編集部
CGイラスト/ベストカー編集部
【画像ギャラリー】現行86&BRZの輝かしい進化の系譜
早くも次期モデルへのカウントダウン開始
2020年4月10日、東京地区のスバルディーラー、東京スバルの公式ホームページに公開された、2020年7月20日をもって、BRZの注文受付を終了するというアナウンス
トヨタとスバルの電撃的な提携(2005年)によって生まれた久々のFRスポーツ、「86」と「BRZ」。
すでに2012年のデビューから8年が経過し、進化が必須のスポーツモデルとしてはそろそろ次期モデルの登場(つまりフルモデルチェンジ)がささやかれる時期に差し掛かっている。
すでに次期モデルに関しては何度か当サイトでもレポートしてきているが、今回公表された「2020年7月20日の受注終了」も、この「次」の話が大きく影響を与えているのは間違いない。
あるトヨタ関係者によれば、スバルBRZの受注終了は販売台数的に見ても妥当なところではないか、という。
2020年1月、2月の販売台数を見ると、1月が86の340台に対してBRZは64台。2月は同343台に対して同37台と、約10分の1程度まで落ち込んでいる。
トヨタとしては「86はまだ充分商品力がある」という判断なのに対し、スバル側は「早く次期モデルに移行したい」という、それぞれ異なった事情がある、というのがそのトヨタ関係者の見方だ。
また、両社の異なる事情は、商品戦略についても現れているという。
この商品戦略上の事情とは、端的に言うとスバルが2018年に策定した中長期ビジョン「STEP」にある。
スバルは「2030年までにスバル車による交通死亡事故ゼロ」の目標を掲げ、今年1月20日に行われた「SUBARU技術ミーティング」で中村知美社長がより具体的な技術発表を行い、安全性の推進を強く表明した。
そのいっぽうで、BRZはスバル車の中で唯一「アイサイト」を搭載していない。そのことがスバルにとって「問題」ということなのだ。このことが次期モデルに大きく影響を与えていることが今回判明した。
これまで『ベストカー』本誌でも「86/BRZの次期モデル発表は来年(2021年)秋以降」と報じてきたが、どうやらその計画が半年ほど前倒しされるらしい、という情報がある。
早ければ2021年3月にも次期モデルに切り替わる。すなわち、受注終了が次期モデルへのカウントダウンが始まったということを意味している。
次期BRZと86開発の陣頭指揮を執る上級プロジェクトゼネラルマネージャー、阿部一博氏から新型BRZ&86の開発が順調と聞かされていたのだが、現行モデルの販売終了がここまで早まるとは……
水平対向2.4LはトルクフルでAT重視
86とBRZでは現行同様にエクステリア上で大きく差別化されることはない。現行とほぼ同サイズながらより抑揚のあるデザインとなるはずだ(CGイラストはベストカーが製作したもの)
FRのプラットフォームは現行86/BRZのものをキャリーオーバーで使用する。何度も手を入れて熟成されているプラットフォームを使うのはスポーツカーでは常套手段(CGイラストはベストカーが製作したもの)
では、開発呼称860B、次期「86」と「BRZ」はどんなモデルなのか? 2019年9月27日に発表された「新たな業務資本提携」でも明らかにされたように、次期86/BRZもトヨタとスバルの共同で開発が進んでいる。
本誌独自スクープで、すでにデザインもほぼ判明しており、車両開発テストの聖地、ドイツ・ニュルブルクリンクでも繰り返しテストされているのも確認されている。
現行型86/BRZが開発当初ベンチマークしていたライバル車はポルシェケイマンだった。
比較的軽量なスポーツカーとして徹底的にリサーチし、性能面はもちろん、スポーツカーにとって重要な感覚が重要視された。視認性だけではなく路面からシートまでの高さや、ステアリングやシフトの位置など細かく研究された、
進化しているポルシェケイマンに対し、次期86/BRZはどう対抗していくのかが注目されるが、プラットフォームなど、基本的なパッケージはこれまでの86/BRZと同じ。
しかし、大きく進化するのがエンジンとトランスミッション系と言われている。それによる性能アップは当然だし、スバルとしては進化版アイサイトの採用による安全性の向上も必須。
エンジンは現行の2L、FA20から、2.4LのFA24と変更され、パワーは207psから220psへ、トルクも21.6kgmから24.5kgmとなる見通し。
スペック的には強烈な進化とはいえないものの、新時代への対応としてATモデルのスポーツ性を維持しながらも使いやすさを特化する。これが次期86/BRZの大きな武器となる。
スバルが北米で販売しているSUVのアセントに搭載されるFA24は2.4L水平対向直噴ターボだが、次期86/BRZにはこれのNAバージョンが搭載される
もちろん、アイシンAW製の6速MTは用意されるが、大きなマーケットである北米だけでなくグローバルでATの需要が高まっていて、トルク特性の重要性からエンジンのスケールアップが図られている。つまり、誰もが楽しめるスポーツカーが次期86/BRZのテーマでもあるわけだ。
サイズ的には全長4250×全幅1780×全高1315mm、ホイールベースが2570mmで変わらないと言われる。
世界中のスポーツカーが高性能、高価格に進み、手の届かない存在になりつつあり、高い安全性と環境性能が求められるなか、次期86/BRZの存在は、日本の宝として世界に送り出されていくことになる。
前述のように、デビュー時期は早ければ2021年3月頃。すでに1年をきっている。次期86&BRZの発売を期待して待っていよう。
(この情報は2020年4月時点にて取材したものです。コロナ禍の影響やそのほかの事情で後ろ倒しされる可能性もあります。その場合は引き続き、当サイトにて最新情報をお届けいたします)
リアトランクにはダックテールのようなウィングがつく。リア周りのボリューム感は全体的にアップしている。現行型でもバランスのよい走りをするだけに新型もハンドリングなどで勝負するようだ(CGイラストはベストカーが製作したもの)
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