2018年1月17日、政府、内閣官房・内閣府皇位継承式典委員会(委員長・安倍晋三首相)は、第3回会合を開き、新天皇が2019年10月22日に行われる祝賀パレードで使用するクルマを、「トヨタセンチュリー」に決定した、と発表した。
そこで、ベストカーではさっそく、センチュリーをベースにしたオープンカーと、御料車センチュリーロイヤルのオープンカーをCGで作ってみた。まだ、実車がどのような形になるのかわからないが、ひと足早くお見せしよう。
世界に1台だけ!! “黒い”センチュリー GRMNが突如出没!! 【東京オートサロン】
文/ベストカーWEB編集部
写真/工藤直道写真事務所 ベストカー(CG)
初出/ベストカー2019年1月26日号
■ロールス・ロイスからどのお車に代わるのか、会議が重ねられた
2019年4月30日、天皇陛下の御退位に伴い、皇太子徳仁殿下が御即位。その御即位を広く国民に披露するパレード「祝賀御列の儀」が2019年10月22日に執り行われる。
御即位を公に宣明されるとともに、その御即位を内外の代表がことほぐ「即位礼正殿の儀」の後、同日に行われる「祝賀御列の儀」。前回、1990年の天皇陛下御即位の時は11月12日に行われ、天皇皇后両陛下はロールス・ロイス・コーニッシュIIIにお乗りになり、皇居宮殿から赤坂御所(現・東宮御所)まで進まれた。
この時に使われたロールス・ロイス・コーニッシュIIIは、皇太子同妃両殿下による結婚の儀の際にも使用されたが、登録自体が1990年9月と古く、2007年3月には廃車。現在は参考用として保管されている。
それでは2019年秋の祝賀御列の儀に使用されるお車は何になるのか? 政府が示した案は第1案/平成度の御料車を整備。第2案/新車を購入。第3案/現在の御料車を使用、の3案。
平成度の御料車(ロールス・ロイス・コーニッシュIII)を整備するという(1)の案は、エンジン、ミッションのオーバーホールや車内クリーニング、塗装そして車両の再登録も必要とのことで選択肢から外れ、第2案に決まった。
■お車に求められる厳しい要件
お車の求められる条件等については、第2回式典委員会において、「新車の要件」として掲げられた以下を満たすことが前提となった。
お車に求められる要件等
1/国内で入手可能
2/車列を組む他の車両より車格が高く、サイズが大きい
3/後部座席に一定の広さを確保可能
4/安全性能(衝突安全、自動ブレーキ等)が高い
5/環境性能(燃費、排出ガス浄化性能等)が高い
また儀式の趣旨等を踏まえると、以下の点も考慮する必要があると発表された。
ア/後部座席にご乗車になる天皇皇后両陛下のお姿が沿道等から見えやすいこと
イ/環境物品等の調達に関して、内閣府本府が定める方針(平成30年度)に合致すること
ウ/車体強度の確認、試験走行等を十分に行った上で、儀式までに余裕をもった期日までに確実に納車さ れる見地味があること
エ/用途に支障をきたすことのないよう良好な整備・保守サービスを継続的に受けることができる体制が 整えられていること
オ/儀式終了後の有効活用や日常の保守管理が容易であること
※原文まま
■予算は8000万円、6社に打診
内閣官房・内閣府・皇位継承式典事務局が検討した結果、第2案の新車購入(オープンカーに改造)の方針で固まり、トヨタ、日産、ホンダ、ロール・スロイス、ダイムラー(メルセデスベンツ)、BMWに打診。結局、BMWを除く5社から提案があり、最終的にトヨタセンチュリーとすることが決まったそうだ。
もう少し詳しい話を聞こうと、内閣官房・内閣府・皇位継承式典事務局に電話で聞いてみたところ、予算は8000万円で、これがセンチュリーベースなのか、御料車のセンチュリーロイヤルがベースになるのか、まだ具体的なことは決まっていないそうだ。また、オープンカーの架装をどこで行うのかについても、これから決めるという。
■新型センチュリーベースのオープンカーをCGで製作
そこで、センチュリーとセンチュリーロイヤルベース、2台のオープンカーをCGで作ってみた。
まず2018年6月、21年ぶりにフルモデルチェンジし、3代目となった新型センチュリーをオープンカーにしたものを見てほしい。
新型センチュリーは全長5335×全幅1930×全高1505mmの堂々としたボディに5L、V8エンジンベースのハイブリッドシステムを搭載。
先進安全装備「トヨタセーフティセンス」も搭載し、掲げられた新車に求められる要件のほとんどを満たしている。
もともとクローズドボディのセンチュリーの威風堂々としたスタイルはそのままに、オープンカーとしての華やかさが加わり、古式ゆかしい和の美を感じさせる。
■もう1台はセンチュリーロイヤルベースのオープンカー
そしてもう1台は御料車センチュリーロイヤルをオープンカーにしたもの。もちろん新型センチュリーのオープンカーと同じようなオーソドックスなタイプも考えられるが、ほぼ同じスタイルで代わり映えしないので、Bピラーまでは通常のセンチュリーロイヤルのままだが、以降のルーフおよびピラーを透明なポリカーボネートで製作したオープンカーを作ってみた。沿道に並ぶ奉祝者からの可視性を確保しつつ、荒天時の対応やセキュリティの面でも優位性がある。
荒唐無稽に思えるかもしれないが、実際にこのようなボディを持つクルマは、モナコ公国でレクサスLSベースの車両が、アルベールII世大公の結婚パレードの際に使用されている。ルーフは着脱できるため祝賀御列の儀当日の天候がよく、さらに万全の警備体制が敷けるのならばルーフは外してもいいだろう。
さて、まだ現段階では新天皇のパレードカーが、センチュリーベースになるのか、センチュリーロイヤルベースになるのかわからない。
ちなみにセンチュリーの価格は1960万円。センチュリーロイヤルは、天皇皇后両陛下が乗車する標準車(ナンバー「皇1」)で1台5250万円。防弾性能等が強化された国賓接遇用の特装車(ナンバー「皇3」、「皇5」)で1台9450万円。
センチュリー、センチュリーロイヤル、いずれもオープンカーに架装しても8000万円の予算内に収まりそうだが、現実的な線を突き詰めていけば、やはりセンチュリーベースとなるだろうか。
2019年10月22日に行われる祝賀パレードでは、センチュリーのオープンカーとともに、奉祝者に、にこやかに手をお振りになる天皇皇后両陛下のお姿を早く拝見したいものだ。
■主な日本歴代御料車図鑑
最後に、主な日本歴代の御料車を紹介しておこう。
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