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知っていたらマニア? 忘れ去られたドイツ車ブランド31社 後編

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知っていたらマニア? 忘れ去られたドイツ車ブランド31社 後編

クラインシュニットガー(1950年~1957年)


パウル・クラインシュニットガーは1950年に125cc 単気筒エンジンを積み、前輪を駆動する屋根なし2シーターモデルの生産を開始している。この2ストロークエンジンの出力はわずか5.5ps、最高速は69km/hに過ぎなかったが、アルミニウム製ボディを持つF250の燃費は31.9km/ℓに達しており、購入者にはより重要な点だった。

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写真のF250は1950年から1957年の間に約3000台が生産されており、1954年には250ccのプロトタイプクーペが生み出されたが、実際に生産されることはなく、その3年後にはブランド自体が消滅している。

クロボット(1954年~1955年)


グスタフ・クロボットの自動車づくりは戦前と戦後の2期に分かれていた。1931年から1932年にかけて、このブランドからは2ストロークエンジンを積んだ2シーターモデルが約150台送り出されている。だが、決して注目されたブランドとは言えないものの、クロノスといえば戦後の歴史のほうが有名だろう。写真は1954年のクロボット・アルヴェッターローラーだ。

1954から1955年にかけて、彼は197cc単気筒エンジンを積む3ホイーラーを55台前後作り出すとともに、174ccエンジンを積んだ4輪モデルもわずかながら作り出したことから、その名は戦後の方がよく知られるようになった。だが、1950年代中盤にはブランド自体が完全に消滅している。

ロイト(1908年~1963年)


Norddeutsche Automobil und Motoren GmbH/North German Automobile and Engines(北ドイツ自動車&原動機)は1908年に北ドイツ・ロイト輸送会社によって設立された。ほとんどのモデルにはロイトの名が冠されたが、1929年にボルクヴァルトの帝国に吸収されると、その名は表舞台から消えていった。

だが、1950年、カール・ボルクヴァルトは排気量250ccから596ccまでの小型エンジンを積んだ低価格モデルのために、ロイトの名を復活させている。1957年には900ccエンジンを積んだサルーンモデルのアラベーラが登場したが、1961年にボルクヴァルトが清算されることになると、ロイトの命脈も尽き、1963年には完全に消滅している。写真は1955年のロイト600だ。

マイコ(1955年~1958年)


1955年にチャンピオンが完全に清算されると、その資産は非常に安価な価格で売却されることになり、オートバイメーカーだったマイコが跡を継いで2シーターモデルの400を継続生産することになった。

4シーターバージョンが直ぐに登場し、次に452ccエンジンを積んだ現在ではマイコ500として知られる写真のモデルも生み出されているが、このクルマはより本格的なライバルたちほどの競争力は備えていなかった。

自動車生産継続のための最後の抵抗として、500スポーツカブリオレのプロトタイプが10台生産されたが、そこで資金は尽きた。辛うじて破算を免れたマイコは、オートバイ生産に注力することにしたが、1986年にはブランド消滅の憂き目に会っている。

メルクール(1985年~1989年)


数十年以上も米国メーカーは自国市場では独自の道を歩んでいたが、1980年代に欧州ブランドが勢いを増し始めるとこの状況にも変化が訪れた。フォードはドイツで生産していた車両に米国法規に合致するためのモディファイを施し、メルクールのブランド名で米国市場に導入したのだ。

当初は欧州でシエラXR4iとして販売されていたXR4 Tiだけだったが、その後写真のスコーピオも導入されている。しかし、消費者の関心を惹きつけることはできず、メルクールブランドは1989年には消滅した。

マイラ(1948年~1956年)


ヴィルヘルム・マイラは1948年に3輪の車椅子生産を始めたが、1953年には197cc単気筒エンジンを積んだリア1輪のバブルカーである写真の200を創り出している。

200にはイセッタと非常に良く似た1枚のフロントドアが設けられていたが、なぜかこのドアは車両全幅の半分しかなく、大柄なパッセンジャーの乗り降りを制限することとなった。1956年に会社が清算されるまでに、530台が生産されている。

ネッカー(1959年~1967年)


ネッカーはハイルブロンにあったNSUの工場を買い取ったフィアット経営陣が考え出した暫定的なブランド名だった。NSUが1959年に車両生産を再開すると、NSUフィアットには新たなブランド名が必要となり、選ばれたのが工場敷地内を流れていた川の名に因んで名付けられたネッカーである。しかし、1967からはフィアットが生産車両に自社の名を冠することにしたため、あえなくネッカーブランドは消滅している。写真はヴァインスベルク500だ。

NSU(1905年~1977年)


1873年、クリスチャン・シュミットは織物機械メーカーとしてMechanische Werkst・・tte zur Herstellung von Strickmaschinenを設立したが、1886年には自転車を、1901年にはオートバイ、そして1905年には自動車製造に乗り出している。1929年、苦境に喘ぐNSUは自社工場をフィアットに売却したが、1957年にプリンツで自動車生産に復帰するまで、オートバイメーカーとして命脈を保った。

その7年後には、NSUは世界初のヴァンケルエンジン搭載モデルであるスパイダーを発売しており、NSUのモデルがすべてロータリーエンジンを積んでいた訳ではないものの、1967年の欧州カーオブザイヤーカーであり、その驚くべき脆弱性によりNSUを破綻させる原因となったRo80がブランドを代表するモデルだろう。1969年にはフォルクスワーゲンに買収され、その後、1977年に完全にブランドが消滅するまで、アウディNSU アウトウニオンAGとしてその名を残していた。

写真のモデルは1967年に登場したNSU TTだが、NSUがこの名前の使用権を持っていたことで、1998年にアウディからアウディTTが産み出されている。

NSUフィアット(1929年~1967年)


非常にややこしいので注意が必要だ。1929年、倒産の危機に瀕していたNSUはハイルブロンにあった工場をフィアットへと売却し、その権利はフィアットとドレスナー銀行が半分ずつ保有し、NSUからは一切の出資が無かったにも関わらず、ここにNSUフィアットが誕生している。

初期のモデルはNSUフィアット・スタンダードと呼ばれたが、実際にはバリラや1100、1500、さらには500と600など、単なるフィアットだった。

オートバイ生産も継続していたNSUだが、別の工場で自動車生産にも再度乗り出し、混乱を避けるため再度ブランド名がネッカー・オートモビルヴェルケへと変更されたものの、依然として生産された車両のなかにはNSUフィアットのバッジを付けたモデルが存在していた。

1967年以降はすべてのモデルからネッカーの名が消え、フィアットを名乗ることとなったが、1973年にはドイツ・フィアットAGへと再度の名称変更を行っている。ご理解頂けただろうか? 写真のモデルはヤクスト770 リビエラだ。

トラバント(1957年~1991年)


ここに登場するすべてのブランドのなかで、もっとも有名なのがベルリンの壁崩壊を象徴するモデルとなったこのトラバントだろう。旧東ドイツ公認のファミリー向けモデルであり、トラバントの正式名称であるVEBザクセンリンクが最初に創り出したのは1957年のP50、または500と呼ばれるモデルだった。同年にはさらに600も登場し、1963年には写真の601へとフェースリフトを受けているが、その後は1991年にトラバントが消滅するまで、ほとんどモデルチェンジが行われることはなかった。

生産台数370万台にも及ぶほぼすべてのトラバントが小型の2ストロークエンジンを積んでいたが、生産最終年にはフォルクスワーゲンの4ストロークエンジンをベースとした1.1ℓエンジン搭載モデルも登場している。

ヴァンダラー(1911年~1942年)


ヴァンダラーは1911年にオートバイメーカーだったヴィンクルホファー&イェーニッケ(W&J)により設立された。当初ヴァンダラーはW&Jの輸出ブランドとしての位置付けだったが、直ぐに国内市場にも導入され、高品質なミドルレンジの4気筒モデルに注力している。1926年には6気筒モデルも登場しているが、1932年にヴァンダラーはアウトウニオングループの一部となった。

第2次世界大戦中、ヴァンダラーは軍需物資の製造工場として生き延びたが、1945年に生産設備が破壊されると、ブランドはそのまま消滅している。写真は1937年のヴァンダラーW24だ。

ヴァルトブルク(1956年~1990年)


もうひとつの旧東ドイツが誇るブランドであるヴァルトブルクの正式名称はVEBアウトモービルヴェルケ・アイゼンナッハという。当初1898年から1904年にかけてこのブランド名が使用されており、その後、1955年にIFA F9の後継モデル名として復活している。F9の2サイクル 3気筒900ccエンジンはそのままだったが、ボディシェルは完全新設計のコンバーチブルとサルーン、さらにはエステートが用意されていた。モデルイヤーとボディスタイルによって、311(写真)、312、または313として知られるこの魅力的なモデルだが、1966年には353へとモデルチェンジしている。

353は右ハンドル仕様が英国へと導入されたが、これがヴァルトブルクの西側諸国における悪評の原因となった。西側のライバルたちとはまったく勝負にならない出来だったものの、ブランド自体は1989年のベルリンの壁崩壊まで、自国市場で生き延びることに成功している。

東西ドイツ統一後、工場は当時GMのドイツにおける子会社だったオペルの生産拠点として活用された。

ヴィースマン(1993年~2014年)


ヴィースマンは2014年に一旦消滅したものの、最近復活がアナウンスされたとおり、いまや失われたブランドではない。ふたりの兄弟が設立したこのメーカーからは、1993年に最初のモデルが登場している。レトロなスタイリングに最新のBMW製メカニカルコンポーネンツを組み合わせたMF30は、非常に高価ではあったが、魅力的なモデルだった。BMW製3.0ℓ直列6気筒エンジンから始まったこのブランドだが、2003年に登場したMF4では新たなV8時代に突入している。さらに、2009年登場のMF5では、BMW製V8エンジンに替えてV10エンジンを搭載していた。

ゼンダー(1969年~現在)


1960年代後半、ゼンダーはクルマをパーソナライズするためのボディキットとデカールのメーカーとして誕生した。1980年代にボディキットへの需要が高まると、ゼンダーは巨大なフェンダーとホイールを特徴に、そのブームの先頭に立つ存在となったが、メーカー公認ボディーパーツも製作する自分たちの実力を示すべく、写真のファクト4を含むいくつかのショーカーも創り出している。現在でもゼンダーグループとして存続しているものの、2001年以降ショーカーの製作は行っておらず、最近では再びスタイリングキットの製作に注力している。

ツェンダップ(1957年~1958年)


1917年にはオートバイ生産を始めたツェンダップだが、最初のクルマを送り出すまでに、さらに40年の月日を要している。それが、ふたつの顔を持つローマの神から名付けられた写真のヤヌスだ。もともとドルニエ・デルタとして開発されたこのバブルカーは、エンジンのうえにパッセンジャーを背中合わせで座らせる前後対象のパッケージングが特徴のモデルだった。

高価格と不安定なハンドリングにより需要は限定的だったが、ツェンダップがこのプロジェクトをボッシュに売却するまでにおよそ7000台のヤヌスが生産されている。その後、1984年に破綻するまでツェンダップはオートバイメーカーとして存続した。

ツヴィッカウ(1956年~1959年)


IFAの後を受けて誕生したのがツヴィッカウであり、VEB AWZ(Volkseigenes Betrieb Automobilwerke Zwickau/Zwickau Automobile Works Company Owned by the People/ツヴィッカウ自動車製造人民公社)の省略である。略称のなんと素晴らしいことか・・・ グラスファイバー製ボディをもつ最初のドイツ車であり、世界でもシボレー・コルベットに次いで2番目に登場したP70には、サルーン、クーペ(写真)とエステートボディが用意され、ツヴィッカウP70のあとをトラバントP50が継ぐまでに、約3万6000台が生産された。

文:AUTOCAR JAPAN 編集部
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