マンタイ・レーシングの手によるGT3 RS
text:Andrew Frankel(アンドリュー・フランケル)
【画像】991型911 GT3とGT2 最新992 GT3 RSプロトも 全115枚
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
991型のポルシェ911 GT3 RSのオーナーで、さらなる速さと俊敏さを求める人は、どの程度いるのだろう。ちょっと身近には思い浮かばない。
今回試乗したのは、そんなポルシェ911。モデル名に追加された「MR」は、マンタイ・レーシングの略で、ポルシェが51%の株式を握る優秀なレーシングチームだ。
マンタイ・レーシングはレース参戦だけでなく、ポルシェ911のチューニングをドイツの拠点で展開してきた。英国の認定ディーラーを通じて、コンプリート・モデルの購入が可能となったのは今回が初めて。それが、このGT3 RS MRとなる。
英国での販売を請け負ったのは、ポルシェのチューニングやレストアを手掛けるRPMテクニック社。親切なGT3 RS MRのオーナーの了承のもと、少しの試乗が許された。
当面は、チューニング・パッケージという構成で英国では販売される。個々の部品としての購入も可能だという。
サスペンションは、フル調整式のマンタイ製コイルオーバー・ダンパーユニット。ブレーキパッドと金属メッシュ製のブレーキラインも、マンタイ・レーシングの専用品となる。ホイールはマグネシウム製で、バネ下重量を12.6kgも削減してくれる。
そして何より、GT3 RS MR最大の特徴となるのが空力特性を高めたボディ。カーボンファイバー製の巨大なウイングと、強度を高めたブラケットがその象徴となる。
クルマ抜きのパッケージだけで931万円
軽量なガーニーフラップが一体となったカーボン製エンジンカバーや、フロントのアンダースカートなどが見た目を引き締める。ホイールセンターを覆うカーボン製のカバーも、空気抵抗を減らしつつダウンフォースを高めている。
これら一式のパッケージ価格は、RPMテクニック社による取付費用を含めて英国では6万9000ポンド(931万円)。もちろん、911型のGT3 RSは含まれない。
最高出力520psを発揮する4.0Lの自然吸気フラット6と、7速PDKは完全にオリジナルのまま。賢明な判断だと思う。英国で提供される911 GT3 RS MRの台数は11台のみ。限られた数だが、マンタイ・レーシングの目指すところを確かめてみよう。
ダウンフォースの数値は公表されていないものの、参考としてニュルブルクリンクのラップタイムはわかる。1台はMR仕様のGT2 RSで、もう1台は標準のまま。どちらもポルシェのテストドライバーがステアリングホイールを握り、2018年にアタックした。
その結果、マンタイ・レーシングのGT2 RSは、6分40秒3という驚くべき速さを残している。標準のGT2 RSより、7秒も速かったのだ。現在でも公道走行が許されているモデルとしての、ファステスト・ラップに刻まれている。
今回の911 GT3 RS MRも、それに近いタイムを出せると考えていいだろう。実際、猛烈に速い。
催眠術にかかったように運転へ浸る
試乗では、腕利き揃いのサーキット走行会にも加わったのだが、一緒に走るフェラーリやランボルギーニ、911が障害物になるほど速かった。しかし、まだGT3 RS MRの真髄には届いていないだろう。
筆者程度のドライビングスキルでは、限界領域まで到達することは可能ながら、催眠術にかかったように運転へ没入し、穏やかな気持ちになってしまう。不思議なことに。それくらい速すぎる。どんなポルシェ911でも、経験したことがないほど。
手が加えられたサスペンションによって、高速コーナーでの精度は一段と引き上げられ、改善された空力性能でボディは路面へ押さえつけられる。シルバーストーン・サーキットを、飛ぶように走り回れる。
外で見ている人からすると、信じられない速度で911が駆け抜けていく。しかし中で運転しているドライバーは、平穏なまま。
もう作られることのない991型のGT3 RSに、手を加えないでほしいと考える人もいて当然。筆者も、わずかにトゲのあるサーキットでのキャラクターが好きだと、GT3 RSの試乗で書き残している。ドライバーに委ねられ、深い充足感が味わえる。
もし、そんなクルマを今探しているなら、718ケイマンGTSを選ぶといいだろう。費用もだいぶ安く済む。
ハンドリングで、より優れるクルマを運転した経験はある。だがGT3 RS MRは簡単に速く運転できるうえ、強い一体感も得られる。むしろそれ以上に惹き込まれる、脳に直接響くような体験だと感じた。言葉にすることが難しいけれど。
領域でのニュアンスに惹きこまれる
サーキットに合わせて設定されたGT3 RS MRのサスペンションは極めて硬く、一般道では鋭い振動が容赦ない。ダンパーの設定を緩めることで、どこまでフレンドリーな乗り心地になるのか、試してみたいところ。
実際に運転してみるまでは、MRのチューニング・パッケージ価格は高すぎるように思えるかもしれない。しかし、実際には引き出せないような領域の性能に多額のお金を投じたいと考える、スーパーカー・オーナーは少なくない。
911 GT3 RS MRは、派手なドリフトマシンではないし、超高速に充足感を感じたい人のクルマでもない。
限界領域に挑むことを好むドライバーが、その領域でのニュアンスをサーキットで一度味わえば、この911 GT3 RS MRに強く惹きこまれるに違いない。そんな人のための、特別な11台だ。
ポルシェ911 GT3 RS MR(991型/英国仕様)のスペック
価格:6万9000ポンド(931万円/チューニング・パッケージのみ)
全長:4557mm
全幅:1880mm
全高:1297mm
最高速度:310km/h
0-100km/h加速:3.2秒
燃費:-
CO2排出量:-
車両重量:1430kg
パワートレイン:水平対向6気筒3996cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:520ps/8250rpm
最大トルク:47.8kg-m/6000rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック
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みんなのコメント
一般公道で「限界領域を味わう」のはやめて下さい。
シルバー世代の運転するプリウスが居たら車間を開けて追従して下さい。
それが出来ないなら車に乗るな。