ワンオーナーで大切に乗られてきた1台
2024年5月18日、アイコニック・オークショネアーズがイギリス・ノーサンプトンシャー州で開催したオークションにおいて三菱「ランサーエボリューションX FQ-400」が出品されました。わずか35台のみが限定生産されたFQ-400の中で17台目に製作されたモデルです。さらにファントムブラックのエクステリアカラーを持つモデルは、6台しか存在しない希少価値抜群の1台でした。
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イギリスで人気のランサーエボリューションX
「ランサーエボリューションXは、歴史にその名を残すだろう。2015年に生産が終了して以来、三菱は後継車を販売してはおらず、事実、ブランドそのものもイギリスからは完全に撤退している。エボXを購入するということは、史上最高のパフォーマンスカー・シリーズの究極の進化形を買うということにほかならないのだ」
先日イングランドのノーサンプトンシャー州で趣味性の強いスポーツカーやクラシックカーを集めてオークションを開催したアイコニック・オークショネアーズ社が、2010年式の三菱ランサーエボリューションX FQ-400を解説するカタログの冒頭に掲げた言葉は、このようなものだった。
じっさいにランサーエボリューションの生産終了が三菱から発表されたのは2014年のこと。アメリカや日本市場では翌2015年半ばまで販売は継続して行われたが、同様に「ランエボ」の人気が高かったイギリスでは、最終モデルとなったFQ-440 MRが40台の限定販売をわずか60分で終了するなど、こちらもその終わりはじつにセンセーショナルだった。
今回出品されたモデルは、2010年式のランサーエボリューションX FQ-400。ちなみにこのモデルは、ランエボIX(FQ-360)をベースとしたもの。だが、それ以前に注目しなければならないのは、やはりエボXが一連のランサーエボリューション・シリーズのどのモデルよりも、先代モデルから大きな進化を果たして誕生していたという事実だろう。
それまでと同様に搭載エンジンは2Lの直列4気筒ターボが継承されたが、シリンダーブロックは鋳鉄製からアルミニウム合金製へと変更され、それだけでも12kgの軽量化を達成。タイミングベルトに代わってタイミングチェーンを採用したことや、吸気のみから吸排気の両側にMIVECバルブタイミング機構を導入したことも、メカニズム上での大きな話題だった。
こうして誕生したFQ-360を、三菱が指定したニュージーランドを拠点とするチューニング・ファクトリー「WRCデベロップメンツ」によって、ハイフロー・フューエル・インジェクター、新型ハイブリッドターボ、アップグレードされたインタークーラー、そして再マッピングされたECUなどでチューニングしたのが、ここで紹介する「FQ-400」だ。
走行距離は1万2160kmと少ない
彼らの仕事はシャシーまわりにもおよび、ビルシュタイン製のダンパーとアイバッハ製のスプリングを新たに採用し、車高は30mmローダウン。前後のトレッドはともに20mm拡大され、それがコーナリング時のコントロール性能を大幅に高めている。ブレーキもそれまでのブレンボに代わってアルコンを採用。その制動力や耐フェード性は三菱も認めるところだ。
エクステリアでは、軽量なフロントバンパーやリアバンパー、そしてこちらもFQ-400専用となるボンネットや大径のセンター出しエキゾースト、18インチ径ホイールなどで、より戦闘的な外観に仕上げられている。
ちなみに今回出品されたモデルは、わずか35台のみが限定生産されたFQ-400の中で17台目に製作されたもの。さらにファントムブラックのエクステリアカラーを持つモデルは、6台しか存在しないというから希少価値は抜群だ。
2010年に三菱のディーラー、コルト・カーズUK社を通じて、ファーストオーナーにデリバリーされたこのモデルは、同年の3月1日に登録され、以後ワンオーナーのまま現在まで保管されてきた。走行距離はわずか7600マイル(約1万2160km)。オーナーは著名なカー・コレクターだったが2023年に他界し、彼の妹がそれを相続。だが彼女はこのFQ-400をドライブしたこともなく、現在は海外に居住しているという。車両とともにハンドブックやセールス・パンフレット、そして膨大なヒストリー・ポートフォリオが付属するこのロットに、アイコニック・オークショネアーズは5万~6万ポンド(約988万円~1185万円)のエスティメート(推定落札価格)を掲げたが、落札者は現れなかった。
最高出力で約409ps、0-62マイル(約99.2km/h)加速で3.8秒を記録したという、この4ドア・スーパーカー。1日も早く、その走りを心から楽しんでくれるセカンド・オーナーが見つかることを期待したいところだ。
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