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クラシックカーは「金の鉱脈」? JDクラシックス訪問 成功の鍵を探る

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クラシックカーは「金の鉱脈」? JDクラシックス訪問 成功の鍵を探る

もくじ

ー 趣味がビジネスに変わった瞬間
ー ロータスの前取締役も参画
ー ショールームによろめく
ー まるで少量生産メーカーのよう
ー 番外編1:クラシックカーの価格 これからどうなる?
ー 番外編2:JDクラシックスの将来 さらなるビジネス

ロールスやベントレー、「死」の先にある希望 超高級車の墓場を訪ねる

趣味がビジネスに変わった瞬間

エセックスをベースとするJDクラシックスの創始者であるデレク・フッドは、世界最大のクラシックカー・ビジネスを作り出そうとはしなかったし、億万長者になろうとも思わなかった。

これを彼は「30年前の偶然」のせいだというが、本当は彼が30年にわたりコツコツと築き上げてきたビジネス哲学の結果なのだ。

彼のクラシックカー経歴は1986年に突然に始まる。エセックスの若き歯科医だったフッドは、趣味として購入したクラシックカーをいじっては楽しんでいた。

しかし1986年のある日、すべてが変わった。

その日、たまたま通りかかった愛好家がフッドの運転するシミひとつないジャガーMk2を盗み見て、譲ってほしいと言った。とても断れないような金額で。

喜んだフッドは、その売り上げでミニ・クーパーSを購入し、レストアし、そして……同じことが起きた。そのクルマもすぐに売れたのだ。

「2番目のクルマの後」とフッドは言う「この商売のポテンシャルを無視することはできませんでした。わたしは地元でロータス・コーティナを買い、新車と見紛うばかりに仕上げ、宣伝し、同じ日に売りました。わたしは学生のころから売買に興味があったので、その後、もっと本腰を入れてクラシックカーの売買を始めたんです」

1987年までにはJDクラシックスとなる会社を立ち上げ、エセックスのレッテンドンに店を開いた。ほどなく歯医者をしている時間はなくなった。

JDクラシックスは、フッドの外科的基準に従って本格的にカー・レストアを始めた。全面的にオリジナルの古趣あふれる状態とするか、それともオーナーの好みに合わせて体裁よくきれいに仕上げるか、選択が可能だった。

そしてレース。最初、JDはジャガーに注力したが、およそ10年前にはその他のメーカー(多くはフェラーリ、ポルシェ、アストン マーティン)も扱い始めた。

JDの重要な顧客となったシリアルカー・コレクターと並んで、偉大なクルマをいっとき所有し、また別のクルマに移っていく金持ち連中もいることがわかったからだ。

ロータスの前取締役も参画

クラシックカー価格の数回の落ち込みを乗り越え、ビジネスは急速に拡大した。2000年代の初めまでにはJDは大きく成長し、レッテンドンを出てマルドン郊外にある現在の9000平米超の敷地に移った。

そこには7つの風変わりなショールームがあり、150以上の素晴らしいロードカー、レーシングカー、そして有名なオートバイが収まっている。すべて売り物だ。

「われわれのモットーは『完璧に仕上げられた素晴らしいクルマ』です」JDの取締役であるデビッド・ゴッドバーは説明する。ロータスカーズの前取締役であるゴッドバーは、この7カ月間JDに在席している。

個人投資会社のチャーム・キャピタル・パートナーズでJDに大いに興味を持ったゴッドバーは、経済紙がいうところの「相当な儲け」をフッドに託し、会社を辞めてすぐにJDに加わった。

ゴッドバーは優に1時間はかかるというツアーにわれわれを連れ出し、道すがら、JDのフィロソフィーを説明してくれた。

「われわれは、クルマの設計者/製造者の哲学にきわめて忠実に、クルマを工場出荷状態に戻すことを目指しています。クルマの扱い方についてはとても頑固です。われわれは正統性と出所由来を極めて重視します。実際、ビンテージカーのオーナーには、クルマのドキュメント保管用に耐火金庫を買いなさいとアドバイスしています。それが何よりも大事ですから」

メイン・ショールームのドアを開けると、1953年フェラーリ250MMヴィグネール・スパイダーと対面した。

ショールームによろめく

1953年フェラーリ250MMヴィグネール・スパイダーは、マイク・ホーソーンがレースで乗ったやつだ。近くには、あり得ないほど低走行の初期のフェラーリ・デイトナ、右ハンドルだ。

その向こうにはなんと、ル・マンのヒーロー、マイク・サルモンが21歳の誕生日にプレゼントされたジャガーXK120が鎮座している。さらにその隣には、完璧な状態の赤いランボルギーニ・ミウラSV、20台しか製造されなかった右ハンドルだ。

すぐ近くのもうひとつのショールームには、伝説のレーサー、ゲリー・マーシャル所有のジャガーMk1セダン。もう恋に落ちそうだ。そして正真正銘のシェルビー・コブラ289、キャロル・シェルビー自身が最後にレースで乗ったやつ。本当によろめいてしまう。等しく重要なクルマたちを前にして、頭がくらくらし鼓動が高まる。

クリス・ワードはJDの運用主任。ニッサン・ワークスのレーシング・ドライバーだった彼は、レースの打ち合わせで初めてフッドに会い、うまく事が運んで、今では主要な大会、ル・マン・クラシック、ミッレ・ミリア(JDが冠スポンサー)、グッドウッド・リバイバルなどでJDの最も重要なクルマたちを嬉々として走らせ、キャンペーンを行っている。

何億円もするビンテージカーをレースで走らせると、ワークショップがとてもいい仕事をしているのがわかります、と彼は言う。

JDのビジネス(年間150億円を超える)は大雑把に言って3つにわかれるとワードは考えている。

大きくわかれる3つのビジネスとは、顧客のクルマのレストア、仕入れたクルマのレストアと販売、そして世界中でのレース(クライアントの営業支援やクルマの広告宣伝のため)だ。

マルドンの敷地の半分はワークショップのスペースだ。どこも興味深いクルマが入っている。ここは数年前にドイツのクライアントから仕入れたXK120のギアボックスを5速に戻しているところ、あちらはとてもキュートなフィアット・ジョリー、XK120の近くではクラーク・ゲーブルがいっとき所有していたトライアンフTR5がレストアの真っ最中だ。

歩き続けるうち、ひらめいたことがある。

まるで少量生産メーカーのよう

こんなにたくさんの作業スペース、設備、専門技術があるなんて、まるで少量生産メーカーの工場じゃないか。ここにはレストア工場、ボディ工場、板金工場、レース準備工場、エンジン工場があり、隣には2階建ての広大な中古部品倉庫。そこには250ものエンジンが出番を待っている。

「レストア作業用にオリジナルのパネルもたくさん作りました」とゴッドバーは言う。「いくつかの定型パーツはそのまま使えますが、われわれがレストアしているクルマの多くは、取り付けのたびに部品を修正しなければならなかった時代のものです。自分で部品を作らないと、最高品質の仕事は保証できません」

そうはいっても、ファブリック縫製、鋳造、ある種の機械加工といった専門的な仕事には、高度な技術を持つサプライヤー(多くは半径3km以内だとワードは言う)のネットワークも使っている。

デカール、バルブ、バッテリー、レンズ、ヒューズといった小さな部品のサプライヤー・ネットワークも30年かけて築いてきた。JDはまた、実習生を雇って年季仕事の技術を習得させたり、地元の学生・生徒を招いたりしている。

JDクラシックス見学の最後は、詳細検査技師の匠、フィル・グレイ親分が仕切っている検査場だ。彼が最終の品質検査を行い、出荷承認を判断するのだ。

われわれが行った時には、彼はきらりと光るポルシェ356の最後の仕上げをしている最中だった。ロンドンの高級ホテルに届けられるとのこと。サプライズのバースデー・プレゼントになるらしい。

思いがけず、あっという間に時は過ぎ、品格あるJDを離れる時間になってしまった。出発前、わたしはゴッドバーに、オイル消費の激しいクルマに対する弾圧や目前の電動化の時代にどう対処していくつもりか尋ねた。

「簡単ですよ」彼は何度も同じ答えをしているに違いない。

「われわれの扱うようなクルマは、いつも特別なんです。将来はもっと特別になります。昔は馬を飼うのは当たり前だった。でも今では贅沢です。まったく同じですよ」

番外編1:クラシックカーの価格 これからどうなる?

デレク・フッドは価格にはこだわらない。多くのクラシックカーの価格はすでにピークを迎えており、すでに値下がりしたクルマもある。しかし、市場で最高のクルマはそうじゃないと彼は強調する。

「この30年で3回の価格下落がありました」と彼は言う「理由はいつも同じです。もっとも値上がりの速かったクルマは、最高の品質と最高の物語を持ったモデルだということをひとは忘れるのです」

「今は、平均的ないし標準以下のクルマを狙った投機筋が首を突っ込んでいる状況です。市場の30~35%を占めていますね。目利きは少ないです」

経済状況が悪くなると仕入れたクルマを売る必要に迫られるが、市場には買い手がおらず、いわゆる投げ売りが始まるのだとフッドは説明する。

「最高ランクのオークションをよく見れば」とフッドは言う「最高品質のクルマの市場は全く様相が異なることに気づくはずです。この市場はいまでも強い。ここ数カ月で世界記録が4回も出たんですよ」

番外編2:JDクラシックスの将来 さらなるビジネス

創立30年を迎えたJDクラシックスのビジネスはとても好調に見えるが、新たなオーナーであるチャーム・キャピタル・パートナーズは、さらに拡大の余地があると信じている。

「2年前に開設したパーク・レーンのショールームはおかげさまで好調です」と取締役のデビッド・ゴッドバーは説明する。「近々、大西洋を渡ってニューポート・ビーチにもショールームを開設します。これがうまくいけば、さらにショールームを増やす計画ですが、レストア作業は引き続きエセックスで行います」

彼は言う「われわれのビジネスはつねにレース、レストア、販売の3本柱で成り立っています。でも、われわれにできることはもっとたくさんある。ファイナンス、保険、保管と運搬、それにイベントのサポートなどです。いくつかはすでに手掛けていますが、もっと拡大したい。個人のコレクションをより充実させるため、売買のアドバイスも始めています」

「ちょっと走らせるのが難しいようなクルマを実際に走らせるお手伝いもしたいと思っています。F1カーとか、ブガッティEB110のようなちょっと普通じゃないクルマです。どこにでも出向きますよ」

クラシックカーのソサイエティは急速に拡大を続けています、とゴッドバーは言う。

「国際イベント、ショー、コンクール、クラブ、それにレース・ミーティングはどんどん増えています。われわれは30年の経験をもって、オーナー、コレクターの皆様のどんなご要望にもお応えします」

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