雨や雪道などあらゆる路面状況で高い安定性を実現したシンメトリカル4WDはスバル車の魅力のひとつ。今回はスバルが誇る「総合雪国性能」を試すべく、アウトバックとWRX S4で雪解け間近の新潟を目指した。
モータースポーツで鍛え上げられた4WDテクノロジー
スバルが持つ4WD技術の源は実に多彩だ。現在、ラインナップの大半を占める4WDモデルは、過酷な環境の中で鍛え上げられ、ニーズに合った最適解のもと、その基盤技術を中心にパッケージングされて世に送り出されている。
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スバルファンにとっては周知の事実だが、車両のコンセプトに合わせて異なる4WDシステムを使い分けることで、オンロードからオフロード、サーキットシーンに至るまで、幅広く4輪への理想的な駆動力配分を実現している。
すべてはあらゆる環境での安全な走りを目指すとともに、縦置き水平対向シンメトリカル4WDの持つ重量バランスの良さを生かした、ハンドリング性能との融合だ。
その技術の元となるのがモータースポーツ活動である。少し前の世界ラリー選手権では多くのメーカーが凌ぎを削り、過酷な戦いを続ける中で、スバルは常にトップ争いを続けてきた。近年ではニュルブルクリンク時間レースでの常勝チームとなっている。
ラリーでは刻々と変わる路面状況やスピードレンジ、タイトでツイスティなコーナーから超高速レンジへと多彩なシーンを持つ欧州の山岳路。そして、一般路のような滑りやすくエスケープゾーンすらろくに用意されていない高速コーナーが続くサーキットでの時間連続走行での過酷な走り。ともにスバルにしかないシンメトリカル4WDと歴史ある技術基盤があって、可能にした戦いでもある。
今回、そんなモータースポーツで鍛え上げられた4WD技術を元に最適な駆動システムを採用した2台に試乗するチャンスを得た。1台はフラッグシップモデルのレガシィアウトバック。もう1台はスポーツモデルのWRX S4だ。ともに4WD技術とスバルグローバルプラットフォーム(SGP)を元に、オンとオフを極めたスバルの代表モデルである。
アウトバックの高い安定感。あらゆる路面状況で安心
それだけに、春を目前としている中、我々はあえて雪解け時期を迎え、安定しない路面状況を探しに、厳しい環境の冬山を目指した。
アウトバックはワゴンのスタイリングながら、歴代最大の213mmというロードクリアランスを持ち、ボディ全体を囲むプロテクターによるタフなフォルムが特徴だ。それでいて室内に乗り込めばサルーンの幅広感や快適性を持つことで、オフロードの王者というような風格が感じられる。
高速道路でのドライブはその期待を裏切らないものだった。SGPを採用したボディと新設計された前:ストラット式、後:ダブルウイッシュボーン式サスペンションの組み合わせは、セダンボディに対して重心高が高くなっていながらもフラット感をキープ。山岳地帯で外乱が大きくなってもボディが揺さぶられることがない。
雪山が前方に見えてくる頃には刻々と路面状況が変化し、わだちや残雪で本来なら神経を遣うシーンもあったが、安定感は変わらない。滑りやすい路面やグリップ変化に対応すべく、スタンバイしている4WDシステムは、外乱の影響を最小限にとどめ、駆動力を的確に4輪へ配分。何事もなかったかのように進路を定める。
山岳路で水が溢れ、雪が残るコーナーを遠慮なく加速していくと、瞬間的にはフロントに滑りが生じ、通常はフロントに多めのトルクが流れるFFベースのオンデマンド4WDであることが理解できる。しかし、直後にはハンドルの向いている方向に強い推進力を得て、何事もなかったかのように旋回姿勢を保つという、4WDならではの高い駆動力の恩恵にあずかれる。
路面が荒れるほどに、同行したS4では地上高の低さが気掛かりだったが、アウトバックなら遠慮はいらない。深くなるほどに4WDシステムは積極的に雪をかき、たっぷりとした足元はあらゆる変化に対応する。先鞭隊とも言える状況で新雪に向かっていく時にはXモードでマッドやダートモードを選べば、個々のタイヤに駆動力とブレーキを小刻みにかけることで路面を確実に掴んで突き進む。
全天候型スポーツモデルWRX S4の強みを発揮
悪路では後塵を拝したものの、ワインディング路に入るとS4のハンドリングの良さが際立つ。センターデフを介して45対55の前後駆動力配分を基本にしていることで、旋回初期からハンドル操作に忠実に高い駆動力のもと、進路と速度をキープ。加速態勢や低μ路に対しては前後駆動力配分を積極的にコントロールすることで4輪のグリップ力を最大限に発揮。駆動力と旋回力のバランスを高次元で保つことで、パワーを正確に伝達。速さを求めた味付けが行われている。正にモータースポーツで鍛え上げられた理想的な駆動力配分の強みを遺憾なく発揮してくれた。
モータースポーツで鍛え上げられた4WD技術やボディワークは悪条件になるほどポテンシャルの高さを見せ、全天候型のスポーツモデルとしての魅力を味わえる。
トランスミッションは、変速比を加速性能を重視した低速寄りのワイドレンジ化とエンジンの協調制御で、SとS#のドライブモードでは8速固定シフトやブリッピング機能を可能にしたCVT。スバルパフォーマンスミッションと呼ばれるこのシステムによって、2.4L水平対向4気筒ターボエンジンが発生する275ps/275Nmのパワーを容易に引き出すことができている。
車高の高さを感じさせない素直な操作性と安定感
一方、アウトバックのパワーユニットは1.8L水平対向4気筒直噴ターボエンジンで、177ps/300Nmを発生。最新のユニットにふさわしく、その乗り味は低速域での粘り強さと、コンパクトユニットゆえの軽い吹け上がりが持ち味。2000rpm弱の領域から直噴ターボ特有の燃焼音が高まると同時に力強さが増し、その加速感は6000rpm付近まで持続する。
組み合わされるリニアトロニックCVTはマニュアルモードやパドルシフトを採用することで、エンジンパワーをメリハリよく引き出すとともに、ノーマルモードでもダイレクト感とスムーズさを両立。滑りやすい路面での駆動力維持によって、姿勢の乱れを抑えることにも一役買ってくれている。
ワインディング路での走りをあとにして、市街地に入るとこのノーマルモードの滑らかさと低速域での力強さに魅力を感じた。全開領域ではエンジン音にスバルらしさを見せてくれる一面もあったが、市街地ではストップゴーの連続でも滑らかさを失うことなく落ち着いた走りが味わえる。
当初、この大柄なボディに対して1.8Lという排気量には少なからず疑問を覚えたが、現実には従来型よりも低速域で力強く、伸びもあってパワーもついてきてくれる。リニアトロニックとの統合制御によって街乗りから高速道路まで幅広くカバーし、その疑問はまったくの杞憂に終わった。
帰路についてあらためて今回のドライブを思い返してみると、高い車高にもかかわらず、ロングドライブでの疲労の少なさや高速での安定感、ワインディング路などでの素直なハンドリングを可能にしたのは、むしろ1.8L化によるメリットの方が大きいのではないかという結論に至った。
先代モデルと比較すると100kg近い重量増はあるものの、基本骨格を共有するS4と比較するとホイールベースで70mm長く、ボディサイズは全長で200mm、全幅50mmも大ぶりで、ガラス面積も多いのに重量差はほぼ大人ひとり分のわずか80増でしかない。
スバルが厳しい環境下で鍛え上げているのは4WD技術ばかりではない。ボディワークや重量バランス、パッケージングに至るまで最適解を求めた結果、悪路から高速性能まで高い要求を満たす2台のプレミアム4WDが生まれたのだ。ロングドライブがいつになく心地良かったのは、その恩恵に違いなく、都市圏の渋滞での記憶も頭の片隅から消え去っていた。(文:瀬在仁志/写真:永元秀和)
スバルWRX S4 STI SPORT R EX主要諸元
●全長×全幅×全高:4670×1825×1465mm
●ホイールベース:2675mm
●車両重量:1600kg
●エンジン:対4DOHCターボ
●総排気量:2387cc
●最高出力:202kW(275ps)/5600rpm
●最大トルク:375Nm/2000-4800rpm
●トランスミッション:CVT(スバルパフォーマンストランスミッション)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・63L
●WLTCモード燃費:10.8km/L
●タイヤサイズ:245/45R18
●車両価格(税込):477万4000円
スバル レガシィ アウトバックX-BREAK EX主要諸元
●全長×全幅×全高:4870×1875×1670mm
●ホイールベース:2745mm
●車両重量:1680kg
●エンジン:対4DOHCターボ
●総排気量:1795cc
●最高出力:130kW(177ps)/5200-5600rpm
●最大トルク:300Nm/1600-3600rpm
●トランスミッション:CVT(リニアトロニック)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・63L
●WLTCモード燃費:13.0km/L
●タイヤサイズ:225/60R18
●車両価格(税込):414万4000円
[ アルバム : SUBARUレガシィ アウトバックと WRX S4で雪国ドライブ はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
急激なトルク変動を絶対に阻止する制御だから
すなわちダイレクト感0なんだけど