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議論沸騰!! 「トヨタEV戦略見直し報道」の真偽 豊田章男社長決断のカギを握るのは……?

掲載 更新 42
議論沸騰!! 「トヨタEV戦略見直し報道」の真偽 豊田章男社長決断のカギを握るのは……?

 2022年10月24日、突如として一部で報道されたトヨタのEV戦略見直し。トヨタがEV専用のプラットフォーム、e-TNGAがその開発コストの高さから見直しの対象となっていると報じられた。2021年12月11日には豊田章男社長が2030年までにEVの世界販売を350万台にすると明らかにしているが、果たして真相はどうなのか、国沢光宏氏が緊急レポートする!

本文/国沢光宏、写真/トヨタ、ベストカー編集部

議論沸騰!! 「トヨタEV戦略見直し報道」の真偽 豊田章男社長決断のカギを握るのは……?

■EV評価が3つに分かれるのはわが国もトヨタ内部も同じ

プロトタイプ試乗会での筆者とトヨタbZ4X(左)とスバルソルテラ(右)。ヒョンデのアイオニック5、BYDのATTO3など競合車への競争力不足が見直しの根本か?

 ロイターが興味深い報道をしている。「トヨタ、EV戦略見直し検討 クラウンなど開発一時停止=関係者」という記事。興味あればご一読願いたい。

 内容は正しく最近トヨタ内部で「このままじゃ電気自動車競争で致命的な負け戦になる!」と危惧されているとおりのもの! エンジン車と共用プラットフォーム、e-TNGAを採用したbZ4Xの競争力不足などを受けたんだと思う。

 状況は少しばかり大きな規模になるため外堀りから紹介していきたい。最近、電気自動車について「コメントできるメディア」でポジティブな記事を書くと、必ず「電気自動車なんかダメだ!」という人が大量に出てくる。

 電気自動車否定の理由はさまざまだ。「むしろ二酸化炭素の排出量が増える」や「電力不足になる」。はたまた日本にハイブリッド技術で勝てない欧米の陰謀説まで(笑)。そんなことから我が国の世論における電気自動車を巡る評価は次の3つに分かれる。

「電気自動車完全否定」と「時代の流れを見ながら対応していく」、そして「電気自動車しかない」というもの。おそらく一番の多数派は私と同じ「なるようになるのでしっかり準備はしておくべき」というあたりだろうけれど、右派も左派も主張する声が大きく、自分の意見に反対する人を叩く。

 トヨタの中も日本の縮図のようなものらしく、3派に別れているそうな。話を聞くと、私と同じような「どうなっても生き延びる」戦略を考えている人に強く共感する。そういった人たちは皆さん、今回のロイターの記事にある危機感を持っているのだった。

 ちなみにロイターの記事の後半部分(クラウンの件)はまったく違う件なので無視しておく。そんなちっちゃい話じゃありませんから。

■商品戦略を変える旗振り役にトヨタの寺師茂樹氏はまさに適任!

今年2月の試乗会でヒョンデのEV、アイオニック5をドライブした筆者。その完成度の高さに舌を巻いていた

 トヨタ、明らかに昨今の電気自動車への強い流れを過小評価しているし、ライバルたちの急成長も予想していなかったと思う。bZ4X/ソルテラの開発チーム、ヒョンデのアイオニック5が出ても、急いで試乗しようという動きはなかった。

 かくいう私もアイオニック5に乗って「こらヤバイ!」と状況を理解した次第。bZ4X、どんな評価基準を持ってしてもアイオニック5に届いていない。

 もちろん、トヨタの中にも「このままだと負ける!」と認識する人がたくさん出てきたものの、どんな企業にも言えることながら、自分の職域外のことはできない。

 例えば、ハイブリッドを使う次期型車を開発している人が電気自動車を開発したくても無理。37万人ほどいるトヨタ社員のうち、規模が大きい商品戦略を決められるのは上を見て20人くらいしかいないと思う。

 ロイターのニュースを読んでみると具体的な内容が多く、信憑性も高い。「e-TNGAを使って電気自動車を作っても勝てない?」と検討しているチームは寺師茂樹さん(トヨタエグゼクティブフェロー)が中心になっていると書いてあるけれど、さもありなん。

 寺師さん、現実的かつ素晴らしい見識を持っている。逆に考えると今のトヨタの商品戦略を大きく変えられるのは寺師さんくらいしかいないと思う。適役です。

■豊田章男社長の気概は「やるなら、もっといいEVを作ろう!」

豊田章男社長はEVを好んでいないとされるが、筆者は「決してEVが嫌いではなく、本気でいいEV、そしていいトヨタを作るために本気でぶつかってくる部下を求めているだけだ」と指摘する

 となると気になるのが豊田章男社長の裁量。広く知られているとおり、電気自動車をあまり好んでいない。ただ、章男ウォッチャーの私からすれば「電気自動車なんか絶対やめろ」ということじゃない気がする。

 日本の自動車の歴史を考えると、先日逝去された久米元ホンダ社長が、空冷絶対主義者だった本田宗一郎さんと争った時を思い出す。最後は本田宗一郎さんも水冷を容認した。

 加えて章男社長、水冷絶対反対だった本田宗一郎さんより明らかに電気自動車を理解している。現在のトヨタを見ると、章男社長に熱意を持って電気自動車論を展開する人がいないだけのように思える。

 表現を変えると「もっといいトヨタにしたい!」という熱い気持ちを持たないと厳しいんじゃなかろうか。寺師さんならできると思う。このチームが本格的に動き出せば心強い。

 ただ、ロイターの記事にあるとおり時間がない。燃料タンクなど電気自動車だと不要な装備を除いたり、よりコストダウン可能な新しい電気自動車専用のプラットフォームやパワーユニットを開発したりしようとしたら製品化まで3年以上かかる。

 2026年あたりから始まる可能性が高まった世界規模の電気自動車ニーズの急増に対応しようとしたら今決断するしかない。新しい情報があれば随時レポートします。

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みんなのコメント

42件
  • 産業を守るために車を作るという考え方が
    市場要求からズレていってるの問題だと思う。
  •  現時点でのEVはガソリン車に航続距離は全く及ばない。それを前提として買うべき車なのに、「東京名古屋高速で走れば何回充電」的な、「そんな走りを頻繁にするは全体の何%?」というような記事ばかり。世の中のドライバーの大半の「日常使い」にはどうなのか、という採り上げ方は一切しない。EV嫌いをせっせと量産する一方で「水素」の大問題、「充填場所が増やせるのか?」には絶対に触れない。自動車大国のはずの日本で、自動車雑誌がそういう煽り記事ばかり垂れ流す。その罪は重いと思う。
     単体で日本の半分近く、グループや資本提携先まで含めるなら4分の3になるトヨタが本気にならない限り、日本のEVは取り残されるばかり。「トヨタがその気になれば簡単」という人が多いのも、「ハイブリッド潰しの陰謀」も、自動車雑誌の無責任な記事が元なんだから。
     アクセル全開で突っ走る欧米中韓を「いつでも簡単に追い越せる」程甘い話では無いだろう
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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