■市販化直前で突如「白紙撤回」… 幻のMID4は語り継がれる伝説に
コンセプトカーは、これまでにない奇抜なデザインをまとった夢のあるモデルから、非常にリアリティがあり、市販化しそうなモデルまでさまざまです。
しかし、なかには市販化直前までいったものの、断念された幻のモデルも存在します。そのひとつが日産「MID4」。現在もなお、スポーツカーファンを中心にさまざまな意見が寄せられています。
【画像】超カッコイイ! 日産「“ミッドシップ”スポーツカー」を画像で見る(30枚)
MID4(ミッドフォー)は1985年のフランクフルトショーで世界初公開された2ドアスポーツカーのコンセプトモデルです。
その名の通り、ミッドシップレイアウトの4輪駆動スポーツカーというパッケージングで登場。当初は研究開発の成果を示す実験的モデルという立ち位置でした。
ボディサイズは、全長4150mm×全幅1770mm×全高1198mm。ホイールベースは2435mmで、車両重量は1230kgです。
軽量なFRPによるボディは、ミッドシップレイアウトを強調する、ローアンドワイドな立ち姿。
フロントフェイスは当時のスーパーカーやスポーツモデルで流行していたリトラクタブルヘッドライトを採用し、空力性能だけでなくスペシャリティな雰囲気を演出するのに一役買っていました。
ボディサイドはエンジン冷却のためのインテークが設けられていますが派手なものではなく、むしろ控えめなスタイルがスポーツカーというよりも「GTカー」に近いキャラクターを感じさせます。
テールは小型のスポイラーに加え、NISSANロゴのガーニッシュを装着。直線のシンプルなテールランプ上部にはエアの出口を設けています。
パワートレインは、横置きの自然吸気3リッターV型6気筒DOHC24バルブエンジン×5速MTで、最高出力230馬力を発生。このエンジンはのちに登場し、多くの日産車で採用されることになる「VG30DE」のプロトタイプでした。
そして駆動方式はセンターデフにビスカスカップリングを組み合わせたフルタイム4WDを採用。
これに4輪ストラット独立懸架サスペンションと、当時は非常に画期的だった後輪操舵機能「HICAS(ハイキャス)」を搭載。ハンドリングの向上と走行安定性を高めています。
また、ブレーキは4輪ベンチレーテッドディスクとし、タイヤは当時としては大径かつ低扁平の205/60VR15サイズを採用しています。
非常に意欲的なパワートレイン構成は、世界ラリー選手権(WRC)でのグループBカテゴリへの参加を目指していたといわれ、現代でも十分高性能ともいえるスペックです。
日産による新たなスポーツカーの提示ということもあり、大いに世間を賑わせましたが、フランクフルトでの披露後、さらに開発が進んでいきます。
バブル景気真っ只中の1987年10月、東京・晴海で開催の第27回「東京モーターショー1987」で、日産はMID4の進化版「MID4 II」を世界初公開しました。
80年代らしいスクエアなデザインを脱却し、曲線を取り入れた美しい姿へと変貌したMID4 IIは、内外装だけでなくすべてにおいて進化が図られています。
ボディサイズは全長4300mm×全幅1860mm×全高1200mmと、ひとまわり大きくなり、車重も1400kgと重くなっているものの、パワートレインはさらに強化されました。
大幅に進化したユニットは、最高出力330馬力のV型6気筒DOHCツインターボエンジンの「VG30DETT型」。従来通りリアミッドシップに押し込まれましたが、これを縦置きに変更。
5速MTのトランスミッションはエンジンの前方に配置され、駆動方式はビスカスカップリングとセンターデフを組み合わせたフルタイム4WDを踏襲。
そして足回りはフロントにツインダンパー式のダブルウイッシュボーン、リアにはHICAS付きのマルチリンクを採用。路面の追従性と運動性能が飛躍的にアップしています。
タイヤサイズはフロントが235/55ZR16、リアが255/50ZR16の前後異径サイズと、動力性能の向上に合わせ、最高速度240km/h以上のZR規格を採用しました。
また、内装デザインも先進的なラウンドデザインの採用や、操作しやすい集中配置のスイッチ類とするなど、もはや市販化が決定しているような完成度の高さでした。
さらに、ジャーナリスト向け試乗会も開催されており、まさに発売まで秒読みといった段階まで進んでいきました。
しかし、その計画は突如としてまったくの白紙に戻されてしまうのです。
バブル景気ということもあったのか、当時の日産は過剰ともいえる設備投資によって財政状況が悪化する一途を辿っていました。そんななかで莫大な開発費用や工数を捻出できるわけがなかったのです。
また、販売価格は当時でも数千万円級におよぶとされ、販売したところで利益の確保は難しいとされました。
1990年から起こるバブル景気の終焉を待たずして、日産のスーパーカーになるはずだったMID4 IIは単なる「無謀な計画」として消えていったのです。
しかし、ハイパワーなVG30DETTユニットは1989年デビューの「フェアレディZ(Z32)」へ搭載、HICASの技術は「スカイラインGT-R(BNR32型)」の「スーパーHICAS」として進化。いずれも現在もなお名車として多数のファンを持つ存在となっています。
そんなMID4およびMID4 IIについて、SNSなどでは登場から40年が経過しようとするなか、今でもさまざまな意見が寄せられています。
「技術的、メカニカル的な部分が32系のZやGT-Rに活かされたので無意味では無かったでしょう」「開発は無駄ではなかった」など、意欲的な挑戦が結果として良いものを生むことになったと肯定する意見が多数ありました。
一方で「市販化されたらメチャメチャ欲しかった」「当時、本当にワクワクしていました。残念だった」「世に出ていれば伝説の車になっていただろうに」など、登場を期待していた人が非常に多かったようで、いまでも「伝説のクルマ」として語り継がれています。
ちなみにMID4 IIは、神奈川県座間市にある展示施設「日産ヘリテージコレクション」に保存されており、実車を間近で見ることができます。
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何でもかんでも「反響多数!」って書けばいいもんじゃない