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戦力拡大のダンロップ「レベルが上がった」新構造タイヤと、FCY直後に抱えた不安【第2戦富士GT300分析】

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戦力拡大のダンロップ「レベルが上がった」新構造タイヤと、FCY直後に抱えた不安【第2戦富士GT300分析】

 スーパーGT第2戦富士、GT300クラスで長丁場の戦いを制したのはSYNTIUM LMcorsa GR Supra GT、0.7秒差の2位にはSUBARU BRZ R&D SPORTが続き、ダンロップタイヤがワン・ツー・フィニッシュを飾った。

 このほか、最終ラップに入るまではGAINER TANAX with IMPUL GT-Rも4番手を走行しており(リザルトは5位。理由は後述)、ダンロップ勢は3台がポイントを獲得。また、優勝したSYNTIUM LMcorsa GR Supra GTは、2レース連続で河野駿佑が決勝ファステストラップも記録するなど、今季導入したGRスープラ+ダンロップタイヤというパッケージを、早くも手懐けているように見える。

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■アンダーステア対策が奏功しロングラン性能が向上
 昨年はBRZ、GT-R、RC Fという3台にタイヤを供給していたダンロップは、今季GRスープラ、GT-Rがそれぞれ1台増え、計5台となった。これはGT300クラスにおけるブリヂストンの供給台数と同じ。そして第2戦予選では、これら10台のうち9台がトップ10入りを果たすなど、富士戦は決勝前から「ダンロップvsブリヂストン」の様相を呈していた。

 ダンロップでGT300のタイヤ開発を担う藤田将之エンジニア(FIA GT3車両=GT-R、RC F担当)は決勝前の取材に対し、今季は新構造のタイヤを投入していると語った。

「昨年は進めていたアンダーステア対策がうまくいきました。ただ、それでもアンダーがまだ残っている状態だったので、今季に向けてはそのさらなる改善がテーマとなりました。結果、アンダーはほぼ消えるとこまで行っています。それがタイムアップにつながっているというのが一点です」

「もうひとつ、これも昨年からの課題ですが、耐久面でタイヤが壊れないようにする方向にも取り組んでいて、それがどんどん良くなってきていることで、セットアップの自由度が増えていると思います」

 GT300車両(昨年までのJAF-GT車両。BRZ、GRスープラ)を担当する久次米智之エンジニアも「基本の流れはGT3と同じで、新構造を投入しています。BRZとGRスープラはほぼ同じようなスペックですが、ドライバーさんの好みなどによって、若干モディファイしているところもあります」と説明する。

 開幕戦の岡山ではGAINER TANAX GT-Rがポールポジション(PP)を獲得したが、「冬場に関してはどうしてもアブレーションの懸念があるので、岡山には通常より少し硬めのタイヤを持ち込みました。安全のためにグリップよりは耐摩耗に寄ったもの(コンパウンド)でしたが、構造面でグッとレベルが上がったこともあり、PPを獲得することができました」と藤田氏。

 岡山の決勝では硬めのゴムと新構造、その相乗効果により安定したラップタイムを刻むことができ、開発成果を感じられたという。アンダーステアが減り、スライドが抑えられていることがロングランに対して良い効果を生んでいるようだ。新規供給となったGRスープラについても、「想定よりも全然タレなかった」と久次米氏は語る。

 11号車GAINER TANAX GT-Rをドライブする安田裕信は、「去年だったらタレていたような状況でも、今年は耐えられるようになったかな。たぶん構造のおかげでグリップしてくれているから、(スライドが抑えられ)温度の上がり方が緩やかになっていると思う」と言う。

 安田は「ウォームアップ(性能)は去年よりちょっと落ちてるかも」と決勝前に語っていたが、第2戦では決勝1周目にSYNTIUM LMcorsa GR Supra GTの河野がARTA NSX GT3の佐藤蓮を攻略したように、他メーカーとの相対的なウォームアップ性能はそこまで落とさずに、ロングランの部分を向上できているようだ。

■『右フロント&左リヤ』の変則2輪交換も想定
 なお、ワン・ツーを達成したGRスープラ、BRZともに決勝では4輪交換×2回というタイヤ戦略を採ったが、2輪交換もプランに無かったわけではないという。SYNTIUM LMcorsa GR Supra GTの場合、1回目のピットでは安全策として4輪を交換し、その後状況次第では2回目に2輪交換の可能性を探る計画だったと、小藤純一エンジニアは明かす。

「当初は左2輪交換かなと思っていたのですが、第1スティントを終えたら意外と右側も減っていた。なので、やるとしたら『右フロントと左リヤ』の2輪交換でした」

 結局、2度目のピットでもセーフティに4輪交換を決断した。このあたりの想定と実際の“ズレ”に関しては、今後はレースを重ねるごとに予測精度が上がっていくはずだ。

■ゲイナーの2台に同じトラブルが発生
 今季、ゲイナー内では10号車GAINER TANAX with IMPUL GT-Rもヨコハマからダンロップへとタイヤを変更。開幕戦までは11号車とややギャップも見られたが、第2戦では予選で11号車に続く7番手、決勝ではピットイン時にFCYが導入されたこともあって上位に進出した。

 ゲイナーの2台は90周目にフルコースイエロー(FCY)が導入された時点で、10号車が6番手、11号車が8番手を走行していた。

 FCY解除後、11号車はJLOC ランボルギーニ GT3をパスするが、101周目に突如スローダウン。左リヤタイヤのバーストによるもので、「完全には分かりませんが、FCYで内圧がかなり下がって、そこからプッシュした結果なのかもしれません。ただ、完全摩耗っぽくもあるので……」(福田洋介エンジニア)と決勝直後の段階では原因究明には至っていない様子だった。

 深刻なのはまったく同じ症状が2周後、ファイナルラップ走行中の10号車にも出てしまったことだ。こちらもFCY後に順位を上げ、フィニッシュを目指していたところだった。チェッカー直前に103周目へと突入していた石川京侍は、左リヤタイヤのバースト後に長い時間をかけてマシンをホームストレートまで運んだものの、リザルト上では102周完了時までが計時されている。

「やはり(昨年までの規則区分で言うBRZ、GRスープラの)JAF勢に比べると車重が重いので、どうしてもタイヤへの負担が違ってきてしまいます。今回ワン・ツーの2台は、次の鈴鹿では(サクセスウエイトを)積みますけど、それでもうちより軽いので……」と福田エンジニアは苦境を語るが、一方でまだサクセスウエイトは嵩んでいないため、鈴鹿以降にも勝てるチャンスは残されている。今後に向けては、トラブルの原因究明と対策が必須となってくるが、パフォーマンスを犠牲にすることなくそれを達成できるかがカギとなる。

■ブリヂストンの底力と王者ヨコハマの苦境
 第2戦では最初のピットでタイヤ無交換作戦を敢行し、安定したペースで終盤までレースをリードした埼玉トヨペットGB GR Supra GTが突然の駆動系トラブルによって戦列を去ったことにより、ダンロップ勢のワン・ツーは達成された。

 ブリヂストンのGT300向けタイヤは昨年までと基本的には同じ仕様であり、とくにこのオフに開発を進めてきたわけではないという。それでも第2戦ではGRスープラが“実質優勝”に近い勢いを見せ、ARTA NSX GT3は表彰台の一角に立ち、45kgのサクセスウエイトを積んだLEON PYRAMID AMGも4位に食い込むなど、タイヤとそのパフォーマンスを熟知したチームの底力は計り知れない。

 一方、昨年覇者のヨコハマ勢では、JLOC ランボルギーニ GT3やリアライズ日産自動車大学校 GT-RがFCY直前のピットインにも助けられシングルフィニッシュを果たしているが、僅差の激戦となった予選Q1・A組で脱落を喫したリアライズの藤波清斗が「セッティングが悪いわけでもなく、フィーリングも良く、(Q1は)通ったかなと思ったら、周りがもっと速かった」と語ったように、開幕戦優勝のサクセスウエイトも効いてか、富士では全体的なスピードがライバル勢に対し不足していた印象だ。

 鈴鹿以降もダンロップ対ブリヂストンの図式が続くのか、あるいはヨコハマ勢も上位に食い込んでくる状況となるのか。さまざまなタイプのマシンが入り乱れるGT300では、タイヤとマシンのマッチングが繊細な部分もある。気温の上昇とともに、タイヤメーカー間の勢力争いも熾烈になってきそうだ。

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