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WRCの栄光を市販車に スバル・インプレッサ P1とフォード・エスコート RSコスワース 前編

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WRCの栄光を市販車に スバル・インプレッサ P1とフォード・エスコート RSコスワース 前編

身近にあったWRCとのつながり

1990年代の世界ラリー選手権(WRC)で華々しい成功を収めた、スバルとフォード。その栄光は、市販車としてわれわれの身近な場所にあった。強力なターボを搭載し、ワイルドなボディで身を固めて。

【画像】エスコート RSコスワースとインプレッサ P1 WRCに今最も近い日本車 GRヤリスも 全56枚

1970年代から1980年代初頭、フォードはラリー界で暴れまくった。四輪駆動のアウディ・クワトロが戦いを一変させるまで、後輪駆動のエスコートには敵を寄せ付けない勢いがあった。

ラリー自体の人気も高く、フォードはメキシコにRS2000、RS1800といった特別仕様を量産車に展開。強い走りをビジネスに結びつけた。ラリードライバー、ビョルン・ワルデガルド氏を気取った若者が、英国の道路を賑わせたものだ。

1980年代に入るとFRの時代は終わり、エスコートのプラットフォームもFFへ転身。フォードのワークスチームは、シエラRS コスワースと、ミドシップのRS 200を主力マシンへ切り替えた。

しかし1990年代に入り、5代目エスコートが登場。基本性能に優れたコンパクトモデルとして、再びWRCへエスコートで挑んでいる。

同じ頃、デビッド・リチャーズ氏が率いるレーシングカー・コンストラクター、プロドライブ社は事実上のスバル・ワークスチームとして活動をスタート。最初のベース車は、スバル・レガシーだった。

プロドライブ社は着実な成功を収め、数年後にはコンパクトで身軽なインプレッサへスイッチ。1995年以降、3度に渡ってドライバーズ・タイトルと、マニュファクチャラーズ・タイトルの両方を掴み取っている。

高性能モデルへの需要が高かった英国市場

さて今回、英国南東部のブランズハッチ・サーキットへ、2台のネオヒストリックにお越しいただいた。ブラックのクルマはフォード・エスコート RSコスワース、ブルーの方はスバル・インプレッサ P1だ。

どちらも、ワークスチームの経験が落とし込まれたロードカーだ。インプレッサなら数年前は日本でもしばしば目にしたが、近年は見かける回数も少なくなった。英国でも、ノーマル状態のエスコートは貴重だ。

2台とも四輪駆動で、2.0Lの4気筒ターボエンジンがフロントに載っている。トランスミッションは、5速マニュアル。共通する部分も少なくないが、実際はかなり異なる。誕生プロセスも。

「1990年代後半、STiやWRXを冠した高性能なインプレッサが、並行輸入で日本から英国へ持ち込まれていました」。と、プロドライブ社のリチャーズ会長がインタビューで振り返る。

「当時、スバルUKの輸入を請け負っていたインターナショナル・モータースと協力し、われわれはインプレッサ・ターボのアップグレードを手掛けていました。そのなかで、英国市場の高性能モデルへの需要の高さを、強く実感したんです」

「そこで2000年に独自開発したのが、インプレッサ P1。欧州全土での型式認証を取得することで、スバルの欧州ディーラーを通じて、購入することを可能にしました」

「インプレッサ P1最大の強みは、英国の道路へ特化していたという点。並行輸入のクルマとは、基本的に異なります」

ワークスによるホモロゲーション・マシン

「シャシーエンジニアは、英国郊外の一般道を前提とした専用サスペンションを開発。MTのギア比も高められました。その結果、高速道路での長距離ドライブをリラックスして楽しめる、性格付けになっています」

「排出ガスや騒音規制にも準拠させながら、0-97km/h加速は4.6秒を実現。2000年前後では、スーパーカー級の加速力でしたね」

一方のエスコート RSコスワースは、比較すれば正攻法。フォードのワークスチームによって、レース参戦規定のホモロゲーション取得を前提に生み出されている。

WRCのグループAで優勝するという目標を達成するには、2500台以上の公道用モデルの販売が求められた。そこで、1989年に設計へ取り掛かったのが、スペシャル・ビークル・エンジニアリング(SVE)部門のロッド・マンスフィールド氏だ。

1990年に5代目フォード・エスコートが発売されるが、通常モデルとホモロゲーション・モデルで共通していたのはボディライン程度。その内側には、加工されたシエラ・コスワース用のプラットフォームが隠れていた。

当時のSVE部門でプロダクト・マネージャーを努めていたジェフ・フォックス氏の話では、ホイールベースを50mm短縮。シエラより短いものの、標準のエスコートより長かったという。

エスコート RSコスワースは、ボディパネルもほとんどが専用品。同じ部分は、3ドア用のドアとルーフだけだった。製造を請け負ったのは、ドイツのカルマン社だ。

シエラ・コスワースと同じパワートレイン

1992年後半に2500台限定でリリースされたエスコート RSコスワースの英国価格は、2万524ポンド。 多少角が丸められてはいたが、約350馬力のラリーマシンと同じギャレットT34ターボを搭載。最高出力227psを発揮した。

大径ターボのおかげで、インプレッサ P1もエスコート RSコスワースも、ターボラグが大きい。英国ではオール・オア・ナッシングと表現された、スイッチが入ったように切り替わる加速が個性でもあった。高効率化を図れる、水噴射システムも備わっていた。

ホモロゲーション取得以降のRSコスワースでは、最高300馬力ほどを引き出せる小径のギャレットT25ターボへ変更。よりリニアな加速を実現し、乗りやすい性格へ改められている。

生産されたすべてのエスコート RSコスワースには、ビスカスカップリング式の四輪駆動システムと、前後で34:66に駆動力を分配するセンターデフが装備されていた。基本的には、シエラ・コスワースと同じパワートレインだ。

「フィンランドの凍結した湖上で試験を重ね、デフのチューニングを詰めました。結果には満足していましたね」。と、SVE部門で技術者を務めていたレン・アーウィン氏が後に振り返っている。

「インプレッサと比較して、リア側へのトルク割合が大きい。スキルのあるドライバーにとって、オーバーステアでの扱いやすさと、予想のしやすい挙動をRSコスワースは得ていました」

この続きは後編にて。

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