■先代ヴィッツから見事にバトンを引き継いだヤリス
トヨタのコンパクトカーとして2020年2月に登場した「ヤリス」は、先代モデル「ヴィッツ」から車名を変更したモデルです。
実際のオーナーは、どこが気に入り、どこがイマイチと思っているのでしょうか。
日本自動車販売協会連合会(自販連)が発表した普通車の新車販売台数ランキングによると、2020年4月以降は6月こそ同じトヨタの「ライズ」に1位を譲るものの、それ以外の月では販売台数1位を記録しています。
また、市場全体で新車販売台数が大きく落ち込んだコロナ禍において、普通車で月間販売台数1万台以上をキープし続けている唯一のモデルです。
ヤリスは、ヴィッツの特徴であった居住空間の広さや、使い勝手の良さなど、万人受けするような路線から変更され、現代のトヨタらしい細部までこだわり抜かれたデザインや走りを追求したモデルになります。
路線変更により人気が下がるリスクもありましたが、幅広いユーザーのニーズに応えるために豊富なバリエーションを用意した効果もあり、さらに多くのユーザーを獲得する結果となりました。
搭載されるパワートレインは、1リッター/1.5リッターのガソリン車、1.5リッター+モーターのハイブリッド車という3種類を設定。駆動方式はグレードによって2WD/4WDが用意され、ハイブリッド車にはE-Four(電気式4WD)が採用されています。
トランスミッションもグレードにより異なり、ガソリン車はCVTを中心に6速MTも設定。ハイブリッド車には電気式無段変速機が搭載されました。
また、ヤリスの燃費性能は、ガソリン車が19.2km/Lから21.6km/L、ハイブリッド車が30.2km/Lから36.0km/Lとなり、この36.0km/Lは、WLTCモードにおいて世界トップクラスとなるなど、ヤリス最大のアピールポイントともいえます。
さらに、トヨタ初の機能として駐車をスムーズにする高度駐車支援システム「アドバンストパーク」を採用。これは、カメラとソナーによりステアリング・アクセル・ブレーキ操作を制御し、駐車完了までアシストします。
グレードは、エントリーモデル「X」、中間モデル「G」、上位モデル「Z」と3種類が設定されているため、ユーザーの指向に沿った選択がしやすくなっています。
新車価格は、ガソリン車が139万5000円から212万4000円、ハイブリッド車が199万8000円から249万3000円です。
また、2020年8月にはヤリスと同じプラットフォームを用いるコンパクトSUV「ヤリスクロス」も登場し、さらにユーザー層が広がりつつあります。
加えて、トヨタは2020年5月より全店舗で全車種の併売を開始しており、販売店同士でも競合が発生しているようです。
そのため、同じヤリスでも店舗ごとに異なる値引き交渉も可能とのことで、人気車種でありながら、お得に購入しやすいモデルとも考えられます。
■ 実際ヤリスに乗っている人はどこが良くてどこがダメ?
では、ヤリスに乗っているオーナーは、どのような評価をしているのでしょうか。最初にエクステリアの評価が大きく目立ちます。
「ヴィッツからさらに洗練されてきた」「乗り降りする度にかっこいいと思うようになってきた」との声が多く、スポーティなデザインの評判は良いようです。
一方、落ち着いた見た目を好むオーナーからは「ここまでしなくてもとは思う」「押し出し感が強いので好みは分かれるかも」との意見もあります。
インテリアに関しては、「外観のカッコ良さが災いして後席の空間は圧迫感が強い」「後の視界が悪いのでコンパクトカーにしては気を使う」など、ヴィッツと比べて後席が狭くなったことを指摘する声が目立ちます。
ただし、ヤリスオーナーの多くは後部座席に人を乗せる機会は少ないようで、大きな問題とはなっていない様子です。
どうしても室内空間に妥協したくないのであれば、ヤリスクロスを選択するのもありではないでしょうか。
また、「ドリンクホルダーが使いづらい」「ドアノブ形状が奥まっていて開けるのに時間がかかる」など細かな指摘もありますが、あくまで許容範囲内であるようです。
足回りは、柔らかめの印象が多く「ふわふわしている」との声もありますが、その分エンジンの加速性能で走行性をカバーしているのがわかります。
とくに、1.5リッターエンジンは上り坂でのパワー不足感もなく加速もスムーズとの声が多く聞こえます。
なお、「高回転域のエンジン音が気になる」という人もいますが、もともとほかのコンパクトカーよりもスポーツ志向が強いヤリスのため、ある程度は「しょうがない」と許容しているオーナーも多い様子です。
オーナーの反応をみると、ヤリスはヴィッツの持ち味であった快適性をある程度犠牲にする代わりに、デザインや走行性能にシフトされたモデルですので、使い勝手が悪い部分があることも否定できないようです。
しかし、後部座席や収納をあまり使用しないのであれば、さほどデメリットを感じることはないといえます。
むしろ、ヤリスに進化したことで走行性能が大きく向上し、クルマが本来持っている「走る楽しさ」を味わえるようになったのは、販売台数を大きく伸ばす要因のひとつとして考えられるでしょう。
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