5000万円の限定モデルもあった本格スーパーカー
紆余曲折を経てついに2代目が発売されたNSX。日本が誇るスーパーカーとして君臨し続けているのは異論のないところだろう。今回は1990年に登場して以来、15年にわたってその地位を維持し続けた初代モデルを振り返りたい。
1989年2月に開催されたシカゴショーで初めて公に公開されたNSX(当時はNS-Xとハイフンが入った)は「誰でも乗ることができる快適な高性能車」を目指して開発されていた。ピニンファリーナ・デザインによるコンセプトカーが制作されていたが、前述の理由により、実用的なトランクを設定するためにリアが延長されたのは多くに知られるところだろう。
そんなNSXの最大のトピックは、量産車としては初となったオールアルミによるボディだろう。骨格から外板パネルまで99%にも至る部分がアルミ製となっており、これだけで155kgもの軽量化を果たしたと言われている。なお、アルミボディを組み上げるためにホンダは栃木に専用工場を建設し、ほぼ手作業で生産が続けられていた。このため、1日の生産台数が限られ、ピーク時には納車まで2~3年待ちとも言われ、新車価格を大幅に超える中古車が出回る事態となっていた。
1990年にデビューしたNSXは、1992年1月に好みに応じて内装や専用外装色を選べる「カスタムオーダープラン」を創設。自分だけのNSXを創り上げることを可能とした。そして同年11月にはホンダのスポーツモデルの頂点を極めるグレード「タイプR」が追加される。すでにエンジンは当時の自主規制値である280馬力をマークしていたため、動力性能を向上させるためにさらなる軽量化を実施し、ベースモデルから120kgものダイエットを果たしている。また、のちのタイプRに受け継がれる、レカロシート、MOMOステアリング、チタンシフトノブなどもここから始まっている。
1993年には走行距離を重ねたNSXをメンテナンスし、新車時の状態に戻す「リフレッシュプラン」がスタート。これは現在も続くサービスであるが、メーカーがこういったサービスを行うのは稀有な例である。
1995年にはNSXにオープンエアモータリングの楽しさをプラスした「NSXタイプT」を追加。これは頭文字からもわかるようにタルガトップスタイルを採用しており、取り外したルーフパネルはエンジンフード上の専用スペースに収容するようになっているため、トランクスペースを一切犠牲にしていないのがポイントだ。
3.2リッターエンジンへと排気量アップしてリトラも廃止に
1997年のマイナーチェンジでは、MT車のエンジンを3.2リッターにスープアップ。トランスミッションも新たに6速化を果たした。また、一旦消滅していたタイプRに代わるスポーツグレード「タイプS」が追加。さらにサーキット走行をメインとするユーザー向けに快適装備をほぼ省いて軽量化を果たした「タイプSゼロ」も登場した。
その後しばらく大きな動きのなかったNSXだが、2001年12月に大幅なフェイスリフトを実施。それまでのリトラクタブルヘッドライトから固定式ライトへと変更がなされ、空力特性の向上とフロントオーバーハングの軽量化を果たした。また、その半年後に再びタイプR(正式名称はNSX-R)が登場。 2005年2月にはスーパーGT参戦のホモロゲーションモデルの「NSX-R GT」が5台限定で登場。5000万円という高額な価格に注目が集まったが、実際に販売されたのは1台と言われている。
そして初代NSXはこの限定車を最後に2005年7月に15年にも渡る歴史に幕を閉じた。
それから11年、ついに2代目となるNSXがデリバリーを開始したが、初代に匹敵する歴史をもつクルマになるだろうか。今後のNSXに期待したい。
(文:小鮒康一)
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