もくじ
どんなクルマ?
ー フル刷新のレクサスLS 500h/500に試乗
どんな感じ?
ー 「思ったよりも大きい」が「60年代的情緒」も
ー 走り「スムーズ」というより「ウルトラスムーズ」
ー 筆者はAWDの走り評価 安全装備も高レベル
「買い」か?
ー 各グレードの価格 ライバルとの比較
スペック
ー レクサスLS500/500hのスペック
どんなクルマ?
フル刷新のレクサスLS 500h/500に試乗
レクサスLSがフルモデルチェンジを受けたのが2017年10月19日。第45回東京モーターショーにも出展され話題を呼んだのは記憶に新しい。さる12月初旬にはジャーナリスト向けの試乗会が開催された。
新型LSのラインナップは、3.5ℓV型6気筒ツインターボエンジン搭載の「LS500」と、3.5ℓV6に電気モーターを組み合わせた「LS500h」からなる。
それぞれに後輪駆動とAWDと呼ばれる総輪駆動を設定。さらに仕様はベースグレードをはじめ、スポ-ティな「Fスポーツ」やぜいたくな「エグゼクティブ」など5つずつ、LS500とLS500hに用意されている。
新型LSの詳細があきらかになったとき、従来の5ℓV8から3.5ℓV6へと大胆ともいえるコンパクトが話題になった。
レクサスではそれに対して「高い出力と優れた環境性能の両立」を理由にあげた。たしかにドイツのライバルを見ても、メルセデス-AMGのS63など5.5ℓから4ℓへの換装である。時代の流れは効率重視なのだ。
プラットフォームはまったくの新設計。LSの新しい出発だ。GA-Lとよばれる新世代のプラットフォームを使い、操舵応答性や操縦安定性の向上をはかったという。
今回の試乗は公道とクローズドのふたつの場所で行われた。さきにデリバリーが始まったハイブリッド版のLS500hに東京から伊豆まで試乗。そのあと伊豆サイクルスポーツセンターで未登録のLS500に乗るというのがプログラムである。
どんな感じ?
「思ったよりも大きい」が「60年代的情緒」も
ぼくが乗ったのはLS500hエグゼクティブだった。ハイブリッドモデルの新しさは、有段ギアを組み合わせたこと、実用域でのパワーが上がっていること、リチウムイオン電池の採用による軽量化とハイパワー化など多い。
EXECUTIVEは最高級グレードだ。たとえばバージョンLと比較すると基本的な装備は同等ながら、後席専用エアコンやリアエンターテイメントシステムの装備がおごられている。
変速機はほんらい無段変速なのだが「マルチステージハイブリッドトランスミッション」と名づけた10段の有段タイプとしている。トルクバンドなど最も力が出る部分を積極的に使う設定だ。
実車を太陽の下でみると、思ったよりも大きい。これが第一印象だ。全長は5235mmあって実寸もさることながら、ダイヤモンド格子のはまったスピンドルグリルなど迫力も十分だ。
すこし離れると、クーペシルエットとレクサスが呼ぶ流麗なスタイルが印象的だ。かつて「アローヘッド」と呼ばれた鋭角を使ったリアクォーターウインドウも目をひく。
加えてクロームメッキのモールをもったウインドウグラフィクス。さらにブラックアウトされたウインドウのピラーの採用など、新しいデザイン手法が多いことに気づくのだ。
ドアを開けるとインテリアデザインのぜいたくな雰囲気に圧倒される。レザーとウッドパネルとクロームパーツが盛りだくさんに使われている。
興味ぶかいのは、ドライバーズシートは「運転に集中できるコクピット」というデザインテーマで作りあげられるいっぽう、他の席は「くつろぎ」というキーワードが採用されていることだ。
運転席に身を落ち着けてみると、目の前には小ぶりのTFT液晶メーターのみがステアリングホイールのリムの下から見える。
マルチインフォメーションディスプレイなので、速度計と回転計に加えナビゲーション、運転支援機能情報、燃費などのドライブインフォメーションといったものが表示される。
なにはともあれ小さめのモニターのみドライバーの前に置いたのは、情報をあるていど制限して運転に集中させる点からすれば機能主義的だし、同時に、60年代のスポーツカーのような情緒的価値も感じさせるとぼくは感じた。
走り「スムーズ」というより「ウルトラスムーズ」
始動は音もない。スタートボタンを押すとシステムに灯が入り、ハイブリッドシステムが目覚めたことはモニターで確認できる。
革で巻かれた大ぶりのギアセレクターをDレンジに短いストロークで入れると、LS500hはじつにスムーズに発進した。
スムーズと書いたが、このクルマを表現するのに最もいい言葉ではない。よりふさわしいのはウルトラスムーズだろう。アクセルペダルの踏み込み量はごくわずかでも加速性はよく、市街地では交通の流れをリードできる。
電気モーターだけで30.6kg-mもトルクがあるから市街地のEVモードでも十分速いのだ。今回のシステムはエンジン最高出力を使用できる車速領域が従来の時速120キロから(ガソリン車と同等の)時速160kmに引き下げられている。実用上カバーする範囲が拡大しているのも特徴だろう。
レクサスによると「従来の5ℓV8ハイブリッドを上回る駆動力を生み出し」ているそうだ。体感的に納得できる加速力である。
車内はほとんど無音。足回りはエアサスペンションで、細かい凹凸はよく吸収してくれる。乗り心地としてはその意味では悪くないし、シートクッションがぶ厚く、ショックはていねいに吸収してくれる。しかし足裏への振動とともに、やや対角線上に車体が揺れるのが気になった。
自分でステアリングホイールを握っているときは、車体の反応も全長5.2mあるクルマとは思えないほどダイレクトで、楽しい。ひょっとしたらレクサスはつねに心が熱いドライバーズカーなのかもしれない。
サイクルスポーツセンターで、422psの最高出力と61.2kg-mのV6ガソリンエンジンのLS500を操縦したときも、運転が楽しいクルマだというのが終始一貫した印象である。
このときは先に触れたようにまだ登録されていない(デリバリーが始まっていない)ということで場内だけの試乗に限られたものの、後輪駆動とAWD(総輪駆動)をともに試すことが出来た。
専用の6ポッドアルミモノブロックキャリパーを使うブレーキシステムをもったLS500 Fスポーツはここで堪能できた。
筆者はAWDの走り評価 安全装備も高レベル
LSの後輪駆動車には後輪操舵システムが備わる。かつガソリンエンジン車のFスポーツの後輪駆動仕様には、これに加えてロール制御を行うアクティブスタビライザーも備わる。
ただし実際の動きなどは、LS500を公道で乗れるようになってから、あらためて評価したいと思った。
V6エンジン車はハイブリッド車とはまた違うキャラクターがあって楽しめる。燃焼効率を高めた「マルチホール直噴インジェクター」とツインターボチャージャーなどの採用でパワフルさも謳われている新開発のユニットだ。
最大トルクが1600rpmから発生する設定なので、踏み始めからパワフルで、ひとつのギアで引っ張るというより10段変速機の連繋ぶりを味わうドライビングがいいだろう。
ぼくはAWDの安定した走りっぷりが気に入った。どんな速度域からでもアクセルペダルの微妙な踏み込みにすばやく反応して加速してくれ、姿勢も安定。ステアリングホイールの入力にもニュートラルに応じてくれ、まさに信頼にたるパートナーであった。
ワンペダル(アクセルペダルの踏み込み量で加減速が行える)的な運転も可能だったように記憶しているが、これも公道で冷静になって再度確認してみたい。
どの車両にもドライブモードセレクトといって操舵力、アクセルレスポンス、ギアポジションなどを「スポーツS」や「コンフォート」など選んだモードで切り替えるシステムも備わっている。
「スポーツS」や「スポーツS+」といったドライブモードはごくわずかなアクセルペダルの踏み込み量にもするどく反応して加速するが、通常は「コンフォート」で十分に加速のよさを楽しめるとおもう。
ナビゲーションなどインフォテインメントシステムは、ダッシュボード中央あたりにはめこまれた12.3インチのTFT液晶を使う。
新しい快適技術としては、EXECUTIVEに採用された温感マッサージなる機能が試乗会場で技術者にさかんに喧伝された。空気袋による圧力を使うのが新しい点で、たしかに手のひらで押されているような気持ちのよさがある。
レクサスがずっと採用してきたマークレビンソンの最新システム「マークレビンソンリファレンス3Dサラウンドサウンドシステム」の音も音楽のジャンルを問わず再現性が高く、耳に心地よい。
方向指示レバーを点滅させると最適なタイミングで車両が車線変更をしてくれる「レーンチェンジアシスト」のスムーズさにも驚いた。
周囲の交通状況を車両が見ているので、そのうち自力で車線変更するのが怖くなってしまうドライバーが出てくるかもしれないと思わせるものである。
「買い」か?
各グレードの価格 ライバルとの比較
このようにLSは快適性に富んだ車両なのだ。おそらくその真価は、日常的にステアリングホイールを握っている過程で、より深く、より広く、わかってくるのではないだろうか。
価格は980万円からで、トップモデルのLS500hエグゼクティブは1680万円となる。メルセデス・ベンツと比較すると、3ℓV6搭載のS400(1128万円)より高く、上位モデルはS560 4MATICロング(1681万円)と肩を並べる。
レクサスLS500/500hのスペック
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