この記事をまとめると
■タイでトヨタ・カローラ クロスが売れている
目標を下まわるまさかの「販売不振」にあえぐ現行国産SUV3台と「売れない」理由
■このヒットを後発のホンダHR-Vが猛追
■日系以外のライバル車はMG ZS
いまタイではホンダHR-Vに勢いがある
日本で2021年9月の正式発売以来大ヒットとなっているのが、トヨタ・カローラ クロス。世界的なサプライチェーンの混乱による生産遅延も手伝い、長期の納車待ちが一部の車種で続いている。しかし、タイではそれに輪をかける勢いでカローラ クロスが大ヒットしているのである。まさに「石を投げれば……」状態で街なかではカローラ クロスが走っており、いまも売れ続けている。現地在住の事情通は「発売した時には『間違いなくヒットする』と思いました。こちらでの手ごろなサイズで、広いラゲッジルーム、腰高により雨季などの道路冠水も気にしなくて済みます。こちらでヒットしないわけがないと思いました」と語る。
ところが、このカローラ クロスの大ヒットを猛追するモデルが出てきた。それがホンダHR-Vである。HR-Vは日本でいうところのヴェゼルとなる。日本では2021年4月に正式発売となり、カローラ クロスより先行して発売されているが、タイではカローラ クロスが2020年9月の発売に対し、新型HR-Vの発売は2021年11月となっている。いわば発売となって日が浅いのだが、バンコクの街角で定点観測するとかなりの比率で見かけることができた。つまり“勢い”があるのだ。
タイでも今後はHR-Vとカローラ クロスの販売バトルが展開されそうだ。しかし、このクラスは販売激戦クラスで日系以外でも多くのライバル車が存在する。そのなかで思わぬ伏兵とされているのが、MG ZSである。MGはクルマ好きならば英国の名門ブランドとの認識があるだろうが、いまは中国上海汽車のブランドのひとつとなっている。そして中国メーカーとしていち早くタイでの現地生産を始めている。そして、このZSもHR-Vばりに“勢い”があるのだ。
「このクラスのモデルは一定期間までは同じように値落ちしていきます。しかしZSはカローラ クロスやHR-Vより新車価格が安いので、同じ割合で値落ちすると中古車価格は他の2台より安くなるため、中古車としての人気も高いんです」(事情通)。
MG ZSはBEVもラインアップ
話を聞くと、所得に余裕のある人の間では、維持費も日本より断然かからないこともあり、“ちょっと気になる”くらいの感覚で新車を購入して複数保有するケースが珍しくなく、また1~2年という短期間で手放すことも珍しくないとのことである。「それじゃ、単に安かろう悪かろうでZSがよく売れているんでしょ」と思うのは日本人のまさに“錯覚”となっているようだ。
日本国内では中国メーカーの乗用車のステアリングを握る機会はまずない。しかし、すでにMGのほか、GWM(長城汽車)まで進出しているタイでは、居住する日本人も多いので実際にMGのステアリングを握ったことがある日本人が多い。複数のZSを運転した経験のある日本人に聞くと、長期間使った経験がある人は「故障などはまずなく、よくできている」とし、別の人も、「日本車より最新トレンドもスピーディに採り入れているし、よくできている」と、その評価は上々である。
しかも、カローラ クロスやHR-VにはないBEV(バッテリー電気自動車)仕様がラインアップされているのである。価格は廉価仕様で94万9000バーツ(約358万7220円)。ちなみに、カローラクロスのHEV(ハイブリッド車)の廉価版は101万9000バーツ(約385万1820円)となっている。街なかでも、内燃機関仕様のZSに交じりBEV仕様のZS EVも多数見かけることができた。複数保有するならば、「BEVにも乗っておくか」と、ZS EVが選ばれることも多いのかもしれない。
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