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あえての不完璧ボディ アストン マーティンDB5 普段使いのこだわりレストア 前編

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あえての不完璧ボディ アストン マーティンDB5 普段使いのこだわりレストア 前編

あえて完璧ではない状態を探した

自分の所有物へ、資産的な価値が不意に生まれる場合がある。骨董品や美術品などとは違って、クルマは現実的に使えるかどうかでも価値が左右される。とはいえ、羨望を集めるようなクラシックカーには高値がつくことが多いが。

【画像】あえての不完璧ボディ アストン マーティンDB5 DB4にDB11 最新DBXとヴァルキリーも 全151枚

混雑した市街地を、希少なアストン マーティンDB5で走りたいと考えるドライバーは多くないはず。狭い駐車場や入り組んだ路地を想像すれば、怖くて気が進まない。郊外でも、不意に現れる砂利道が不安だ。

ローマン・パープルの塗装が少しヤレた、ロドニー・マクマホン氏がオーナーのDB5は、本来の能力を発揮させることを前提にレストアされている。コンクール・デレガンスでの栄えある受賞ではなく、彼は走ることへ価値を見出している。

「アストン マーティンは、もちろん好きですよ。いくらかね」。と、ロドニーは英国人らしく、あえて控えめに自身の気持ちを表現する。

DB4とDB6、DB7、V8ヴォランテ、ラピードという、そうそうたるアストン マーティン・コレクションを所有している。このDB5は、最近その1台に加わったそうだ。

DB4とDB6は美しいショー・コンディションを保っており、気軽に乗ることは難しかった。そこで英国の名門ブランドを得意とするガレージ、RSウィリアムズ社へDB5の購入を相談した時、完璧ではない状態のものを探してほしいと頼んだという。

41年も倉庫に止まっていたパープルのDB5

「レストアされた姿は美しいのですが、小さなダメージすら与えられないことが問題になります。駐車場で隣のクルマのことを心配する必要がなかったり、小石で塗装が剥げても、味の1つになるようなクルマが良かったんです」。ロドニーが笑みを浮かべる。

そこでRSウィリアムズ社が発見したのが、41年間も倉庫のなかに止まっていた、パープルのDB5だった。珍しい色でボディが塗装され、驚くほどのオリジナル状態が保たれていたが、久しく公道を走っていなかった。

「ある兄弟が所有していたクルマでした。放置して腐らせるようなことはなく、保存状態は悪くありませんでした。少しメンテナンスをして、1年弱はそのまま運転できたほどです」。ロドニーが振り返る。

倉庫にしまわれていた理由は定かではない。だが、この年代のアストン マーティンとしては走行距離が長く、積極的に乗られてきたものの故障に見舞われ、修理されないまま時間が過ぎたのかもしれない。

ローマン・パープルの塗装は、走行距離を重ねる過程で傷んでいた。艶は全体的に失われ、変色している所もあった。飛び石で下地がむき出しになっている部分も見られた。それでもボディにはほぼ腐食がなく、パネルはピンとしていた。

今でもそんな見た目を保っているが、実は多くの手間がかけられている。「ボディパネルの内側にサビがありました。1・2年の作業で、車検を通過できる状態には仕上がりませんでした」

ボアアップで4.7Lへ排気量は拡大

レストアで課題になったのが、オリジナルの塗装をいかに残すか。理想的に仕上げるには、ボディパネルを完全にバラす必要があった。だが、日常的に乗れるアストン マーティンとするため、細かなダメージはそのままにしたかったという。

腐食したアルミニウム製のサイドシルは交換され、オリジナル状態へ似せた色で塗装されている。フロントフェンダーの凹みは、外したパネルの内側から職人が2週間かけて優しく叩き出した。熱が加わると、変質する恐れがあったためだ。

メカニズムでは、気軽に乗れるための多くの変更が加えられている。直列6気筒エンジンは、RSウィリアムズ社によるリビルドを経て、4.0Lから4.7Lへ排気量が拡大された。彼のDB4にも、同様のチューニングを受けたユニットが載っているそうだ。

ボアアップで700ccを稼ぎ出し、最大トルクは39.7kg-mから45.5kg-mへ上昇している。この変化は、路上を走り出すとすぐに気が付く。過去の記憶をもとに、初めは登り坂の入り口でシフトダウンしていたが、そんな必要はまったくなかった。

グレートブリテン島の南部、バークシャー丘陵をトップギアで駆け上っていく。スピードを落とすことなく。それでいて、低回転域のトルクだけが優先されたユニットではない。

細身で長いシフトレバーは軽く動かせ、やや重めのクラッチペダルは直感的につながる。5速のまま郊外の道をまかなえる粘り強さは、グランドツアラーとして望ましい。シートは快適で荷室容量も大きい。ストレスは皆無だ。

金管楽器のような甲高いサウンド

もちろん、興奮も味わえる。DB5は運転するより眺めていた方が充足感を得られる、という話も耳にするが、ロドニーの例では違う。もっともそれは、高価なアストン マーティンを買うことが難しい、多くの人を慰めるための評価でもあったのだが。

DB5へ相応しい郊外のルートでは、その楽しさにハマってしまう。緩やかなカーブや起伏を、流れるようにこなしていく。

ノーマルより車庫はわずかに低く、コーナーでのボディロールは控えめ。ステアリングホイールへは不足ない情報が伝わり、シャシーとコミュニケーションが取りやすい。

ストレートが見えたら、アクセルペダルを思い切り蹴飛ばせる。リアタイヤのグリップ力へ、不安はみじんもない。

コーナーの手前で早めにブレーキをかけ、パワーを加えながら旋回していくという喜びも味わえる。直列6気筒エンジンからは、金管楽器のような甲高いサウンドが放たれる。変速するたびに音色が変化し、聴覚的にも楽しい。

ドライビングポジションは、外から想像する以上に低い。ダッシュボードの位置も高くない。長いボンネットを先端まで見渡せ、サイズ感覚が掴みやすい。

操作方法に特別なことがあるわけでもなく、運転しやすいと表現していい。前方視界は良好で、全幅は1676mmとスリム。車線の中央を維持しやすく、親しみやすい。

この続きは後編にて。

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