スズキジムニー5ドアのワールドプレミア公開で日本でも大きな注目を集めた「オートエキスポ2023」。インドの首都デリーで2年に1度開催されるモーターショーだ。インドではマルチ・スズキ・インディアが莫大なシェアを持ち、2位のヒョンデはともかく、多くのスズキブランド以外のクルマは街なかで“少数派”のように映って見える。だが2023年のショーではトヨタとレクサスがブースを出し、ヴェルファイアやランドクルーザー300、レクサス版アルファードのLMなどを出展。その狙いはどこにあるのだろうか?
文・写真/小林敦志
ジムニー5ドアに加えてレクサス版アルファードも!! デリーショーでわかったインドの王者マルチスズキに挑むトヨタ
■2022年開催が中止されたデリーオートエキスポが復活
2023年1月13日から18日まで、オートエキスポ2023(デリーオートエキスポ)が開催された。新型コロナウイルス感染拡大により2022年の開催が見送られ、奇数年での変則開催となった
例年偶数年に隔年開催されていた、インドの首都デリー近郊で開催されていた“オートエキスポ2023(以下デリーオートエキスポ)”が2023年1月13日~18日に開催された。新型コロナウイルス感染拡大により2022年に開催できなかったために奇数年に変則的に開催されることとなったようだ。
デリーオートエキスポの一般公開に先んじて、1月11日及び12日はメディア関係者向けのプレスデー(12日は関係者などへ向けた特別招待日も兼ねた)であった。
その開幕直前には、2022暦年締め年間新車販売台数で、それまで世界第3位であった日本を抜き、インドが世界第3位の市場になったとメディアが報じていた。
新たに世界第3位の新車販売市場となったインドは人口で間もなく中国を抜くともいわれており、その意味では世界一の自動車市場になるポテンシャルも秘めているといってもいいだろう。そんなインドで行われたモーターショーとはどういうものなのかをお伝えしていきたい。
ショー会場で最も存在感を見せるのはそのブース面積の広さもあり、インドにおけるスズキの現地子会社となる“マルチ・スズキ・インディア(以下マルチ・スズキ)”といえるだろう。
それもそのはず、インド自動車工業会による2021年度(2021年4月~2022年3月)締め年間販売台数におけるマルチ・スズキの一般乗用車の販売シェアは実に63.6%になっている。
筆者が見てきた世界のモーターショーにおけるプレスデーに開催される各メーカーのプレスカンファレンスは、メーカー(あるいはブランド)ごとに1回ずつ開催されるのが一般的。
しかし、デリーオートエキスポ2023におけるマルチ・スズキのプレスカンファレンスは2日間のプレスデー内で2回行われたが、これまでも多い時では3回行われたこともあった。
しかも、プレスデー初日の1回目(つまりトップ)にマルチ・スズキのプレスカンファレンスが行われるのが慣例といってもいいことになっている。
ちなみに日本で注目度の高かった“ジムニー5ドア”は、プレスデー2日目に行われた2回目のプレスカンファレンスでワールドデビューを飾っている。
筆者の経験では2018年開催までは欧州も含め多くのブランドが会場内に展示ブースを構えていたが、2020年開催でブースを構えた乗用車ブランドはマルチ・スズキとインド地元ブランドのタタとマヒンドラ・マヒンドラ。これに加えてヒョンデ、起亜(ヒョンデ傘下ブランド)、MG(上海汽車ブランド)ぐらい。
今回もマルチ・スズキ、トヨタ(レクサスもあり)、タタ、ヒョンデ、起亜、MG、BYDのみであった。
■権勢を誇るマルチスズキと別戦略で立ち向かうトヨタ
スズキ ジムニー5ドア
2020年開催時にはちょうどインド国内での環境規制強化の端境期となってしまい、出展しても販売促進効果が期待薄との判断で出展メーカーが大幅に減ったとの声が多かった。
それに加えてマルチ・スズキの圧倒的な国内販売シェアや、前述した2021年度締め年間販売台数統計でシェア2位となるヒョンデを合わせると、2社で実に80%近くを占めるということになっていた。
わかりやすくいえば、自社の販売シェアを考えると“コスパが悪い”と判断してデリー・オートエキスポへの出展を見送るブランドが目立ってきているとの話も聞く。
トヨタは2020年開催では出展していなかったが、2023年開催ではブースを構えている。
トヨタ イノーバ ハイクロス
2021暦年締め年間販売台数では、販売トップのマルチ・スズキの1割弱ほどの販売シェアとなっているので、前述したように“コスパが悪い”と出展を見送ってもいいのだが、トヨタはインドで独自のポジションを維持しているともいわれる。
かつてインドで聞いた話では「トヨタはひとつ上のユーザー層を狙っている」とのこと。
マルチ・スズキのクルマは確かに街なかに溢れているが、その多くは全長を4メートル以内(かなり短い)に抑えたセダン(税制優遇を受けられる)のデザイア(スイフトセダン)やワゴンR(日本のワゴンRとは異なる)などがメインとなり、あとは上級コンパクトハッチバックのバレーノをとくに多く見かけることができる。
一方で街を走るトヨタ車はおもに社用として使われているようだが、多人数乗車可能なMPV(多目的車)となるイノーバ・クリスタや、こちらも多人数乗車が可能なSUVスタイルを採用するフォーチュナーなど利幅の高いモデルがよく売れており、販売シェアが低くともかなり台当たりで“利益率の高いセールス”を行っているというのである。
前述したスズキ・デザイアクラスにもかつて“エティオス”というコンパクトセダンをラインナップしていたが、これもあえて全長を4メートル以上とし、デザイアより“ひとつ上”くらいの所得のユーザー層の獲得を狙ったともいわれていた。
ちなみに、インドでも東南アジア各国同様に、かなり高額となるヴェルファイア(インドはアルファードのラインナップはない)も街なかで見かけることができる。
今回のオートエキスポでは、イノーバ・クリスタの後継モデルとして発売されたばかりの“イノーバ・ハイクロス”や、カムリ、ヴェルファイアそして納車が始まったばかりとされるランドクルーザー300(インドではLC300とされている)など、いわゆる大型で高額な車両が目立っていた。
マルチ・スズキとは明らかに販売戦略の違いというものを強く感じた。
■プレミアムブランドとして唯一ブースを構えたレクサス
レクサス LM
2017年より市場参入しているのがレクサスブランドだ。メルセデスベンツやBMWなどが出展しないなか、唯一プレミアムブランドとしてブースを構えていた。
利幅の大きい高収益車種で、おもに社用車として富裕層にトヨタブランドを定着させ、“プライベートカーはレクサスで”といったノリも強く感じる。街なかではESをよく見かけたが、今回新型RXをリリースし、さらにブースにはLXやUXのBEV(バッテリー電気自動車)なども展示されていた。
そして、“レクサス版アルファード”ともいえ、インドでは今年後半に市販予定との報道もあるレクサスLMなどSUVや高級ミニバンが目立っており、とくにインドでも人気の高いSUVに今後は主軸を置くように見えた。
ここまで述べてくると、確かに日系ブランドの存在も大きいのだが、日系以外、つまり韓国や中国、そしてインドメーカーブースでは見えてくる景色が異なってくる。
各メーカーブースには、BEV(バッテリー電気自動車)をメインとしたZEV(ゼロエミッション車)ばかりが展示されているのである。
地元インドのトラック&バスメーカーでさえ、展示されているのはBEVをはじめFCEV(燃料電池車)や水素エンジン車ばかりで一般的なICE(内燃エンジン)搭載車はほとんど見かけなかった。
インド政府は深刻な大気汚染対策や原油輸入量増大の抑え込みなどを主眼として、ZEVの普及を推し進めている。今年はインドがG20(主要20か国・地域)議長国となり、インド国内で各種会議が開催されることも大きいようだ。このことが会場全体に影響を与えているのは間違いないだろう。
マルチ・スズキやトヨタ、レクサスブースにまったくZEVが展示されていなかったわけではなく、得意のHEV(ハイブリッド車)で環境性能の高さをアピールしていたが、市販車レベルで見ればこの分野(ZEV)ではインドでも出遅れ感は否めない状況に見えた。
今回インドメーカーのマヒンドラ・マヒンドラが出展しなかったのも、このあたり(ZEV)の展示が薄くなってしまうことを嫌ったのではないかといった話も聞かれた。
ただ地元タタは政府の動きに過敏に対応してしまったのか、目の前のラインナップがやや手薄になっているようにも見え、以前よりも存在感を失っているようにも見えるので、そのあたりの“さじ加減”の難しさというものも強く感じる。
会場でZEVが目立つとはいえ、実際街なかで見かけるZEVはBEV路線バスや、ライドシェア(インドではタクシー代わり)でBEVが使われているケースが圧倒的であり、一般市民の感心はまだまだICE(内燃エンジン)搭載車となっているのも確かな話といえる。
一般公開日の様子をみると、マルチ・スズキやトヨタ、レクサスブースのほうがより多くの来場者がいたように感じた。しかし、インド政府のクルマに対する環境規制は加速し、計画は前倒し傾向にある。
日本政府のように“とりあえず言ってみただけ”ではなく、インドは政策に強い実行力が伴う国といえる。現状ではマルチ・スズキをはじめ、トヨタやホンダといった日本車が街に溢れている。
しかしこの光景が中長期的には様変わりしてしまうのではないか、タイやインドネシアで感じた不安をインドでもショー会場で感じてしまった。
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トヨタの未来。
それはスズキが握っているという事実。