’21新型スズキGSX-S1000徹底解剖:開発者インタビュー【攻撃的なネイキッドの美しさ】
’14年のインターモトで初登場、翌’15年に発売されたスズキのストリートファイターが「GSX-S1000」だ。’17年のマイナーチェンジを経て、この’21モデルで初のフルチェンジを実施した。電子制御スロットルやクイックシフターの新採用など、電脳化を促進したことで価格は24%上昇。その真価をチェック!
●まとめ:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真: 真弓悟史 ●外部リンク:スズキ
’21 スズキ GSX-S1000
―― 【’21 SUZUKI GSX-S1000】■全長2115 全幅810 全高1080 軸距1460 シート高810(各mm)車重214kg ■水冷4スト4気筒DOHC4バルブ 998cc 150ps/11000rpm 10.7kg-m/9250rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量19L ■ブレーキF=Wディスク R=ディスク ■タイヤF=120/70ZR17 R=190/50ZR17 ●色:青 灰 黒 ●価格:143万円
―― 【戦闘機の造形美も採り入れた新スタイリングへ】専用設計のツインチューブフレーム/’17年型GSX-R1000譲りのアルミスイングアーム/KYB製φ43mm倒立式フロントフォーク/ブレンボのラジアルマウント式フロントキャリパーなど、基本骨格は変更なし。標準装着タイヤはダンロップのD214から、内部を専用設計としたロードスポーツ2へと進化。
―― 【ライディングポジション】リッター直列4気筒エンジンゆえに下半身に適度なボリューム感あり。全体的にコンパクトで操縦しやすく、足着きも良好な部類に入る。[身長175cm/体重66kg]
[◯] あのドン突きが解消。クイックシフターも優秀だ
GSX-S1000は、タイトな峠道でリッターバイクとは思えないほど軽快に振り回せること、そして第2世代GSX-R1000由来のパワフルなエンジンが特徴だ。’15年発売当時の価格は111万5640円(消費税は8%)と非常に戦略的で、日本のみならず世界中で支持されたのだ。
これをベースに生まれたカタナを含め、個人的にどうしても肌に合わなかったのがスロットル開け始めの”ドン突き”だ。それを指摘する声が世界中から集まったのだろう。新たに電子制御スロットルを採用した新型は、その症状がほぼ完璧に解消されている。走行モードはA/B/Cの3段階で、最高出力150psはいずれも共通であり、レスポンスのみが変化する。Aモードはかなり刺激的で、Bはオールマイティ、Cは街乗り向けといった印象で、明確に差別化されている。また、従来から採用されているトラクションコントロールは、3段階+オフから5段階+オフと介入レベルが2段階増えた。ウェット路面で何度か介入を確認したが、失速感がほとんどないなど極めて自然だった。
新型の電脳化で最も好印象だったのがクイックシフターだ。低回転域でもシフトアップ/ダウン時のショックはあまり発生せず、走り出してしまえばクラッチ操作はほぼ不要といっていい。なお、アシストクラッチが採用されているので、レバー自体の操作力が軽いのもうれしい。
ハンドリングは従来型から大きく変わっていないが、エンジンのドン突きが解消されたこと、また標準装着タイヤの銘柄が変更されたこともあって、さらに積極的に操れるようになった印象だ。アルミツインチューブフレームは剛性が高そうに見えるのだが、実は適度なしなやかさがあり、旋回時にギャップを拾っても神経質な挙動は見せない。サスペンションはフロントがフルアジャスタブル、リヤがプリロードと伸び側減衰力が調整可能なので、好みに合わせてアジャストできるというのもうれしい。ブレーキはフロントのマスターがラジアルからホリゾンタルになってしまったが、微速域からコントローラブルなのは変わらない。
―― ’05~’08年のGSX-R1000に搭載されていた998cc水冷直列4気筒がベース。’17年のマイナーチェンジ時に145→148psとなり、新型は150psへ。
―― 【灯火類はテールランプ以外もすべてLEDとなった】六角形のLEDヘッドライトを上下2段とし、その上に同じくLEDのポジションランプをレイアウトした個性的なフロントマスク。前後のウインカーはクリアレンズ+フィラメント球からバー形状のLEDに。なお、テールランプは’15年リリースの初代からLEDだ。 [写真タップで拡大]
―― 【国産ネイキッド初ウイングレットだ】モトGPマシンではお馴染みのウイングレット。ネイキッドではMVアグスタ ブルターレやドゥカティ ストリートファイターなどがすでに採用しているが、国内メーカーとしてはこの新型GSX-S1000が初となる。専用タイヤと合わせ、コーナリング性能と直進安定性が良好なバランスになったと、開発に携わったテストライダーが述べている。
―― アルミのテーパーハンドルバーはレンサル製ではなくなったが、クランプがラバーマウントになったことで手に伝わる微振動が減少した。フル液晶ディスプレイは画面が大型化され、バックライトはブルーになっている。 [写真タップで拡大]
―― SIRS(スズキインテリジェントライドシステム)導入の一環としてスロットルを電子制御式に。SDMS(ドライブモードセレクター)はA/B/Cの3段階だ。
―― WMTCモードでの燃費は下がってしまったが、燃料タンク容量を17→19Lに増やすことで航続可能距離を従来と同等レベルに。シートは後部のサポート性を上げ、グリップ力の高い表皮に。キーロックで脱着可能なタンデムシートの裏面には荷かけループあり。 [写真タップで拡大]
[△] パーシャル時の挙動が少しだけ気になるかも
高速巡航でスロットル開度を一定に保っている際、ほんのわずかにエンジン回転数が波打つような症状が出る。とはいえ、従来型は少しの開け閉めで過敏に反応して落ち着きがなかったので、それと比べればかなり巡航しやすくなったと言える。
[こんな人におすすめ] これをベースに誕生するGTはかなり楽しみだ
例のドン突きが解消され、個人的評価が急上昇。価格も上昇したが、電脳化の内容を加味すると納得の範疇だろう。間もなく国内登場するであろうGSX-S1000GTがこれをベースに作られるわけで、かなり包容力のあるマシンになりそうだ。
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