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軽自動車の「64馬力規制」なぜ残る? 廃止25年経つ「280馬力規制」の普通車と違う理由

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軽自動車の「64馬力規制」なぜ残る? 廃止25年経つ「280馬力規制」の普通車と違う理由

■中途半端な数値になぜなった? 軽自動車の「64馬力規制」

 クルマ業界には、「馬力規制」というものがあります。これは、国産自動車メーカーが国内市場で正規に販売するクルマに対して、エンジンの出力(馬力)を一定数以上出さないと自主的に定めた規制のことです。

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 ひと昔前までは、普通車の「280馬力規制」と軽自動車の「64馬力規制」というふたつが存在していました。現在では、普通車の「280馬力規制」は廃止されていますが、軽自動車の「64馬力規制」はいまだに残っています。

 なぜ、時代背景が変わっても軽自動車の自主規制は残っているのでしょうか。

 馬力に対する自主規制は、1980年代に自動車メーカー各社が、自社モデルのスペック(馬力)数値をいかに高くするかで競っていたことがきっかけになります。当時は、スペック数値が高いほど『良いクルマ』というイメージをユーザーに印象付けるPR戦略があったからです。

 その熾烈な馬力競争に歯止めをかけた要因には、交通事故による死傷者数増加という問題がありました。そこで、政府は「交通事故非常事態宣言」を発令し、日本自動車工業会(以下:自工会)などの関係各所に対応策を出すように通達。

 それに輪をかけるように運輸省(現:国土交通省)は、自工会に「馬力規制」を迫り、増加傾向にある交通事故を理由に自動車メーカー各社や関連団体は自主規制を受け入れます。

 その後、普通車ではしばらく「280馬力規制」の時代が続きます。しかし、世界のクルマ業界では、技術革新とともに馬力も上がっていく方向にシフトしていくのです。

 その結果、国産自動車メーカーも海外での商品力強化や国内産業のガラパゴス化を防ぐなどさまざま理由で、普通車の馬力規制を2004年に撤廃しました。

 一方で、2019年現在でも規制が残っているのが軽自動車の「64馬力規制」です。軽自動車は、日本独自の規格をもとに開発・販売され、「全長3400mm以下/全幅1480mm以下/全高2000mm以下/排気量660cc以下」という条件に当てはまるものが対象です。

 普通車の「馬力規制時代」と同タイミングで軽自動車の「64馬力規制」も始まりました。1980年代の軽自動車規格では、排気量550ccで、最高出力はせいぜい50馬力ほどです。

 そんななかで、1987年に発売されたスズキ「アルトワークス」は、最高出力64馬力という当時としては高スペックなモデルとして登場しましたが、運輸省(現:国土交通省)の通達により、このアルトワークスの馬力が自主規制数値となりました。

 その後、ダイハツ「ミラTR-XX」や三菱「ダンガンZZ」、スバル「ヴィヴィオRX-R」などでも、さまざまな改良が施され64馬力を達成します。

 軽自動車の「64馬力規制」について、大手自動車メーカーのスタッフは次のように話します。

「現在も自主規制が残る理由はいくつかが考えられます。まず、普通車の撤廃理由には、競合する海外メーカーに対抗し、商品価値や開発力を高める狙いがありました。しかし、軽自動車は日本独自規格のためその理由は当てはまりません。

 さらに、軽自動車の安全面を考えた場合、『64馬力規制』が無くなり馬力が上がっていくと、ボディ剛性や各安全装備などが普通車と同レベルになる必要があります。

 そうなると普通車とのサイズ感や価格での差別化がなくなり、『軽自動車』そのものが必要なくなる可能性もあります。このようなことから、未だに自主規制は残っているのだと予想できます」

※ ※ ※

 現在の軽自動車は、馬力などのスペック値を求める方向ではなく、近所の買い物など使い勝手の良さが支持されています。そのため、走行性能よりも燃費性能を高めるほか、限られたサイズの範囲でいかに快適な居住性を実現するかが重要です。

 また、軽スポーツカーは小排気量でキビキビと走る運動性が魅力なため、軽自動車独自規格や「64馬力規制」の決まった枠組みでどれだけ『良いクルマ』を作れるかという自動車メーカーの個性や魅力が垣間見られるジャンルといえます。

■「280馬力規制」撤廃の普通車、今ではGT-Rなど多くのクルマがハイパワー化

 1994年に廃止された普通車の「280馬力規制」。なぜ、280という中途半端な数値になったのでしょうか。

 規制導入の際に、「280馬力」となった理由は、当時市販されていたクルマのなかで最高出力を誇っていた日産「フェアレディZ(Z32型)」が280馬力だったからです。市販車よりも低い規制値となると開発段階中のクルマなどにも影響が大きいという配慮もありました。

 その後、発売された日産「スカイライン GT-R(R32型)」やトヨタ「スープラ(A70型)」、ホンダ「NSX(NA型)」、三菱「GTO」など国産スポーツカーの代名詞といわれるクルマ達は軒並み280馬力を上限とした馬力数値です。

 その当時の日本市場では、今なお続く「ミニバン」や「RV(後のSUV)」などのジャンルに人気が出始めていたこともあり、規制があっても大きな問題にはなりませんでした。

 しかし、前述したように世界的な開発競争などによって、日本車の商品力を高めるために「280馬力規制」は廃止されることになります。

 その後、国内メーカーの販売するモデルは徐々に馬力を上げてきます。日産「GT-R(R35型)」は570馬力、ホンダ「NSX(NC型)」507馬力、トヨタ「センチュリー(UWG60型)」381馬力、日産「フーガ(Y51型)」333馬力などスポーツカーはもちろん、セダンタイプでも軒並み高出力化へと進化させています。

 過去、規制に至った背景には交通事故などの増加といった問題がありましたが、最近では先進安全技術も進化していることで、馬力が高くなってもそれを制御できるようになりました。

 また、最近では直列6気筒エンジンのような大きな馬力を発生させるエンジンも技術革新による燃費改善で、メルセデス・ベンツやBMWなど欧州メーカーから見直されています。

 このように、日本市場と海外市場とではニーズが大きく異なることから、日本独自規格の軽自動車における「64馬力規制」はこれからも残り続けるのだといえます。 【了】

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