衰退する国産ワゴンで孤軍奮闘!! スバルの旗艦「新型レヴォーグ」年内発売で高まる期待と一抹の不安とは?
最近の日本車では、ステーションワゴンが大幅に減った。カローラツーリングは新型になったが、それ以外はコンパクトなホンダ シャトル、ミドルサイズのレヴォーグ、Lサイズのマツダ6程度だ。
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かつてブームだった国産ワゴンも、居住性の優れるミニバンやSUVの登場で、カテゴリーは大幅に縮小。そうしたなかで根強い支持を得ているのがスバルのレヴォーグだ。
すでにスバルが2020年内の国内発売をアナウンスしている新型に懸かる期待と不安とは?
文:渡辺陽一郎
写真:SUBARU、ベストカー編集部
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レガシィの受け皿に!! レヴォーグは国内専用車として誕生
現行型レヴォーグはモデル末期ながら2019年も1万2717台を販売するなど根強い人気を誇る
1996年以降は、車内が大幅に広いミニバンの新型車が続々と発売され、ステーションワゴンは需要を奪われた。
しかし、ステーションワゴンのメリットは健在だ。本来はセダンのルーフを後方に伸ばして、荷室容量を広げたボディタイプだから、SUVやミニバンに比べると低重心で走行安定性と乗り心地を高めやすい。
日常的に高速移動の機会が多い欧州では、今でもステーションワゴンが多く用意され、ビジネスにも使われている。
そして、ワゴンの走りの良さを最も強く意識させる日本車がスバル レヴォーグだ。
レガシィのボディが拡大され、ツーリングワゴンが廃止されるのを受けて、2014年に発売。今では海外でも販売するが、発売時点で扱ったのは日本のみだ。つまり、保有台数の多いレガシィツーリングワゴンから乗り替える、日本のユーザーをターゲットに開発された。
4代目レガシィ(左)に回帰したともいえるレヴォーグ(右)は、レガシィが5代目以降で大型化・ツーリングワゴンを廃止したことを背景に生まれた
そのために全長は4690mm、全幅も1780mmで、従来のレガシィツーリングワゴンとほぼ同じ大きさだ。エンジンは、水平対向4気筒1.6Lターボと2Lターボで、駆動方式は4WDのみになる。
さらに両方に「STIスポーツ」も用意した。ビルシュタイン製ショックアブソーバーなどを装着して、内外装の質感も高めている。販売比率も多く、高性能な2Lターボエンジン搭載車は大半がSTIスポーツで占められる。
かつてのレガシィツーリングワゴンも、2000年代に販売された4代目では、ターボを搭載する高性能なGT系が販売総数の30%前後を占めた。
レヴォーグは車名を変えたものの、レガシィツーリングワゴンの後継車として、ファンの期待に応えている。サーキットも安心して走れる安定性は、高重心のSUVやミニバンでは得難く、レヴォーグはまさにスポーティワゴンの代表だ。
新型レヴォーグは新エンジンと新アイサイトの二本柱に「期待」
新型レヴォーグプロトタイプ。キープコンセプトながらエンジンは新開発の1.8Lターボに一本化される
このレヴォーグが2020年後半にフルモデルチェンジを受ける。新型のプロトタイプは、『東京モーターショー2019』で披露された。
ボディサイズは現行型と同等だが、外観の印象は異なり、フロントマスクは鋭角的な形状に変わってワイド感が強調される。
プラットフォームは、2019年7月に北米生産を開始した新型レガシィと共通で、フルインナーフレーム構造となる。
エンジンは新開発される水平対向4気筒1.8L直噴ターボとされ、従来の1.6Lターボと2Lターボは設定されない。希薄燃焼技術が採用され、優れた環境&燃費性能も達成する。
新型レヴォーグは新世代のアイサイトもスバル車として初搭載される予定
装備は新世代アイサイトに注目したい。
センサーは従来と同様のステレオカメラに加えて、ボディの前後に4つのレーダーも備える。周囲の交通状況を360度検知して、見通しの悪い交差点、自車が右左折する時の事故も防止したり被害を軽減する。
運転支援機能は、マップ精度を高め、GPS通信衛生と準天頂衛生「みちびき」も利用して自車位置を正確に測定する。カーブの手前で自動減速したり、渋滞時にはクルーズコントロールのハンズオフ(手離し)走行も可能だ。
新型の「不安」もエンジン? 迫る燃費規制で高出力難しく
現行型では1.6Lと2Lターボエンジンを搭載していたレヴォーグ。新型は1.8Lターボとなるだけに、どれだけの燃費とパワーを出せるかにも注目が集まる
このように次期レヴォーグは、走行安定性、乗り心地、安全装備、運転支援機能まで幅広く向上させるが、現時点で気になるのはエンジン性能だろう。
希薄燃焼を使う1.8L直噴ターボの性能は明らかにされていないが、現行型の2Lターボに比べて動力性能は下がらないのか。次期型は1.8L直噴ターボエンジンのみだから、2Lターボのユーザーとしては動力性能の変化が気になるだろう。
今後の発売スケジュールも含めて、スバルの販売店に尋ねた。
「次期レヴォーグの発売時期は、正確には分かりません。年末になる可能性もあります。エンジンは1.8Lターボのみです。そのために現行レヴォーグの2Lターボを使うお客様からは、性能に関する問い合わせを多く受けます。
この詳細も不明ですが、現行2Lターボに比べると、最高出力や最大トルクは下がるでしょう。そこでハイパワーを求めるお客様は、現行レヴォーグ2.0 STIスポーツアイサイトの最終型に乗り替えています。
納期は現時点(2月下旬)の注文で、決算月の3月に登録できます。値引きを従来に比べて増やし、弊社ではSTIのパーツを割安に装着するサービスも実施しています」
という。
東京オートサロン2020で初公開された新型レヴォーグプロトタイプ「STIスポーツ」コンセプト
次期レヴォーグの詳細は不明だが、排気量が1.8Lのターボエンジンで希薄燃焼も使うとなれば、動力性能が現行2Lターボを下まわることは間違いないだろう。
1.8Lターボを搭載する背景には、今後世界的に厳しくなる燃費規制への対応がある。
日本の場合、国土交通省は2030年度にWLTCモード燃費で平均25.4km/Lの燃費基準推定値を発表している。2016年度実績値(19.2km/L)に比べると、32%の燃費改善が必要だ。
カテゴリー別の具体例としては、コンパクトカー(車両重量:1000kg)が27.3km/L、セダン(車両重量:1400km)は24.6km/L、ミニバン(車両重量:1800kg)は21.1km/Lだから、現行型の車両重量が1500~1600kgのレヴォーグは23km/L前後になる。
現行レヴォーグのJC08モード燃費は、1.6Lターボが16.0km/L、2Lターボは13.2km/Lだから、WLTCモードとなれば数値はさらに下がる。
レガシィから続く「高性能ワゴン」岐路に
写真は4代目レガシィツーリングワゴン。高性能ワゴンとして唯一無二のキャラクターを持つレヴォーグは新型でどう進化するのか? スバルの今後を左右するといっても過言ではない
10年後の話とはいえ厳しい内容で、目標年度内に基準を達成できない製造事業者等は、勧告・公表・命令の対象になり、罰金が科せられることもあるという。この将来に向けた対応も視野に入れて、次期レヴォーグのエンジンは希薄燃焼を使う1.8Lターボになる。
現実的には2.5Lハイブリッドを搭載するレクサスIS300hの2WDで、JC08モード燃費は23.2km/Lだ。レヴォーグが今後WLTCモード燃費で23km/L前後を達成するには、ハイブリッドシステムの活用も求められる。
また次期型は、前述のようにリーンバーン機能を備えた直噴ターボを搭載して、アイサイトには2個のカメラに加えてレーダーセンサーも備わる。通信機能も採用する。全グレードではないとしても、ドライブモードセレクトも用意する。
そうなると価格も必然的に高まり、現行レヴォーグで最も安価な1.6GTアイサイトが291万5000円だから、次期型は前述の新型エンジンと新機能の搭載で310万円以上になる。
今後は低燃費への対応でモーターの併用を余儀なくされ、高性能なエンジンは必然的に廃止されていく。
レガシィの時代から、スバルの高性能ワゴンに乗ってきた皆さんは、従来型レヴォーグの2Lターボを好条件で買うことも考えて良いだろう。
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エンブレムがスバルなだけ。