2019年1月に行われた東京オートサロンでひと際注目を集めていたのがジムニーシエラ・ピックアップ。ひと目で欲しくなってしまった人も多いはずだ。
かつて日本では、ハイラックスダブルキャブ、ダットサントラック、三菱トライトンが販売されていたが、現在日本で買えるピックアップトラックは2017年9月、13年ぶりに国内販売に復活したハイラックスだけだ。
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しかし、世界に目を向けると、カッコいいピックアップトラックの宝庫。最近ではVWやメルセデスベンツもピックアップトラックをリリースしてきている。
こうしたピックアップトラックをなぜ、日本で売らないのか、ほんとに不思議だ。
そこで、日本でぜひ売ってほしいと切望するピックアップトラックを、モータージャーナリストの岩尾信哉氏がリストアップし、その魅力を解説する。
文/岩尾信哉
写真/ベストカーWEB編集部
■ジムニーシエラ・ピックアップの販売を期待!
今年の東京オートサロンのスズキのブースはジムニーの参考出品車2台がステージ上に据え置かれていた。このうちのひとつが、ジムニーシエラの「ピックアップトラック・スタイル」。
残念ながら、このジムニーシエラのピックアップトラック、現時点では発売の予定はないと聞いている。限定でもいいので販売してほしい!
トヨタのピックアップトラックといえば、トヨタハイラックス。2004年の日本市場での販売終了を経て、2017年9月にタイから逆輸入されることになった。
ハイラックスは1968年の誕生から累計販売台数は2017年末で約1730万台を数え、約180ヵ国に販売されている。タイ/インドネシア/マレーシアで生産される、トヨタのIMV(Innovative International Multi-purpose Vehicle)と呼ばれる商用車シリーズの車種としての役割が大きく、タイでは「Revo」のサブネームが付く。
生産はアルゼンチン、南アフリカでも行われており、エンジンは海外では2.8L直4ディーゼルエンジンや2.7L、直4と4L、V6のガソリン仕様も設定されている。
■ピックアップの需要が高いアジア市場では日本メーカーが鎬を削っている
さて、ピックアップトラックは、世界の100~180ヵ国で販売されている日常の足であり、メーカーにとってはドル箱な存在だ。
今回は、広く世界で、特にアジア地域で作られ売られている、1トン積載クラスの庶民の味方である日本車のピックアップを中心に紹介していこう。
つい先日、VWとフォードが提携することが報じられたが、将来のADASや電動化技術での協力も重要だが、まずコメントされたのはピックアップトラックの共同開発だったことは、それだけ大きなビジネスチャンスが存在するということだ。
世界の主要メーカーのうち、ホンダとBMWはフレーム式プラットフォームを持たないので、ピックアップに手を染めていないが、“モノコックでなんとか”とはいかないのは、使用用途が走行条件を含めて多岐にわたるために簡単には都合がつかない事情があるから。
優れた耐久性や走破性を備えるというコンセプトの元に、シングル/エクステンディッド/ダブルの3種類のキャビン形状を設定する基本パターンは、トラック本来の用途はもとより、乗用車として使われる領域まで幅広いユーザーのニーズに応えている。
今、世界中で販売されているピックアップトラックのサスペンション形式はだいたいがフロントがダブルウィッシュボーン、リアはリーフスプリングのリジッドで、オフロード走行を念頭に置いた仕様となる。
エンジンは2~2.5Lクラスのディーゼルが主流となり、あくまで仕事グルマとしてMTのみの車種もあれば、日本車勢は各グレードでATも用意する場合が多い。
駆動方式は2/4WDもグレードによって変化するが、パートタイム4WDが基本と捉えるべきだろう。街乗りで燃費を重視するならば後輪駆動が選択されることになるはずだ。
我々が想像する以上にアジアではピックアップの需要は高く、だからこそ日本メーカーが鎬を削る市場となっている。世界的に見れば、米国市場での販売台数が圧倒的だが、タイを中心としたアジア地域に出向いてみれば、ピックアップの存在価値が実感できるはず。
ハイラックスの国内再販売の時の初期受注のユーザー層は購入者の中心が20代~30代の若者が多かったそうだ。これから紹介するピックアップトラックもなかなかスタイリッシュなので、日本でも売れそうな気がするのだが、いかがだろうか?
なお、紹介するスペックについては現地価格については為替変動もあるのであくまで目安としていただき、ボディサイズは煩雑にならぬようダブルキャブに統一させていただいた。
■いすゞ D-MAX
タイとインド工場で生産されるD-MAX。いすゞとマツダは2016年にピックアップのOEM供給での提携を発表し、マツダでは「BT-50」の後継車種として販売されている。
同年にいすゞはインドにピックアップ工場を設立して生産体制を強化するなど、販売拡大の意欲がみてとれる。
D-MAXが登場したのは2002年5月、車名の由来は、Dが“Diesel Design Durability”の頭文字から引用。MAXは“最大、最極化”を表現する。
主な販売地域はタイを中心に約100ヵ国とされているが、タイでは数多いライバル車種のなかで、ハイラックスとピックアップの販売台数のトップを争う存在であるから、ハイラックスに続く日本市場への導入の声が上がっても不思議ではない。
■ニッサン・ナバラ/フロンティア
2015年からダットサントラックの後継車種としてナバラが登場した。タイでは「NP300ナバラ」と呼ばれるが、ブランドや販売地域によって名称が変わり、北米市場では「フロンティア」の名を与えられている。
ルノーアラスカンやメルセデスベンツXクラスのベース車両であることはアライアンスの成果といえ、アラスカンはルノー製2.3L、直4ディーゼル、Xクラスは3L、V6ディーゼルを搭載するように欧州市場における棲み分けが成された。
生産は北米とともにタイ/中国/メキシコ/スペイン/アルゼンティン/南アフリカ(旧型を生産)の各工場で実施され、三菱のタイ工場でも生産されている。
2014年に発表されたD23型と呼ばれる現行型には、YD25DDTi型2.5L、直4ディーゼルのほか、QR25DE型2.5L、直4ガソリンエンジンも設定されている。
■三菱トライトン
トライトンは三菱のピックアップトラックとして「アウトランダー」に次ぐ販売台数となる三菱の世界戦略車であり、日本市場では2005年8月に現行型がタイで発売され、2006年9月より日本導入開始、2011年8月に日本販売を終了した、という経緯をもつ。
2018年11月、フェイスリフトを受けた新型トライトンが販売されている。新型トライトンはタイで生産され、ASEAN、オセアニア、中東、欧州、アフリカ、中南米など約150ヵ国で販売され、OE供給先としてはマツダとフィアットが挙げられる。
トライトンの車名の由来は、スリーダイヤにちなんだ「3つの」を意味する「トライ(tri)」と、1トンピックアップにちなんだ「トン(ton)」を合わせた造語とされる。
ちなみにL200は欧州市場での車名となる。 電子制御6段ATと四輪駆動システムには、最上位モデルの「パジェロ」にも採用されていた「スーパーセレクト4WD」を搭載、後輪駆動からフルタイム4WD、センターデフロック4WD状態での走行までカバーする。
■長城汽車・風駿7
中国の民族系自動車メーカーで、SUV販売ナンバー1メーカーの長城汽車が手がけるピックアップはアジア地域のみならず、欧州でも全世代の風駿5が販売されている。
同社はウクライナに主力工場をもち、2019年にはロシアに工場を建設するという。アジア地域では価格設定によっては日本車に対抗できるかもしれない。
■マヒンドラ・インペリオ
ピニンファリーナを買収したことでも知られるインドの大手自動車メーカーであるマヒンドラ&マヒンドラ(M&M)は、2016年にピックアップトラック「インペリオ」を発表した。
スタイリングではキャビンと荷台部分の連続性に欠けるなど荒っぽさが目立つが、価格の安さはインドの社会状況もあってモデルレンジが、小型車の延長上にあることが想像できる。なんともインド産らしいカオスなピックアップトラックである。
■VWアマロック(欧州)
アジア地域ではないが、番外編として、ぜひ日本に輸入してほしいと思ったのがVWアマロックだ。1980年代後半に販売されたVWのタロ以来、実に30年ぶりに発売されたVWの新型ピックアップトラックがアマロックで、販売は欧州中心。アマロック(AMAROK)の意味は、イヌイット語で“狼”。
VWのドイツ・ハノーファー工場で生産され、ダブルキャブ仕様のみを設定。欧州での販売戦略として高級感を持たせたピックアップといえる。
さて、いかがだっただろうか? なかなかスタイリッシュで日本で売れそうな気がしませんか? ぜひ日本での発売を望みます!
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