小田原厚木道路ではあいにくの小雨模様だった。筆者は箱根の強羅にあるラグジュアリー・ホテルへと愛車で向かっていた。ボルボの新型「V60クロスカントリー(CC)」の試乗会に参加するためだ。
たまたま通りがかった箱根登山鉄道の強羅駅前の桜は満開で、雨は雪に変わっていた。桜吹雪は「遠山の金さん」でもおなじみだけれど、桜に雪は寡聞にして知らなかった。聞いたことがなかった。なんと幻想的なことか……と同時に、これこそV60CCにピッタリの舞台ではないか、と思った。
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新型V60CCは、現行「V60」の最低地上高を65mm上げて、210mmとし、悪路走破性を高めたクロスオーバーである。最低地上高210mmというのは、ボルボのSUV「XC60」の215mmに迫る数値で、この種としては異例に高い。スバルの「レガシィ アウトバック」は200mmとっているけれど、BMW「X1」は185mm、アウディ「A4オールロード クワトロ」は170mm、フォルクスワーゲン「パサート オールトラック」は160mmと、ドイツ勢はおおむね低い。最低地上高は高いほどオフロードの踏破能力は確実に高くなる。ちょっとした段差でも、臆せず行ける。
駆動方式はもちろん4WDで、システムの中核をなすのは第5世代のハルデックスである。ボルボでは「AOC(Active On demand Coupling)」と、呼ぶこの電子制御の油圧多板クラッチが、ドライ路面では前輪駆動で走って燃費を稼ぎ、いざというときに最大50%のトルクを即座に後輪に伝達する。また静止時は、加速のときの最大トルクに備え、全輪駆動状態になっている。V60には電気モーターを使った4WDがあるけれど、AOCを持つのはV60CCだけ。ボルボとしては、V60CCを本格派のクロスオーバーと位置づけている。
日本市場向けV60CCのエンジンは、「T5」と呼ぶ254psの2.0リッター直列4気筒ターボのみ。トランスミッションはアイシンAWの8速オートマチックで、装備の違いにより、ふたつのグレードが選べる。「T5 AWD」の549万円と、「T5 AWD プロ」の649万円のふたつで、前者は18インチ、後者は19インチのタイヤを履いている。T5 AWDはV60でいうところの「モメンタム」、同プロは「インスクリプション」に相当するグレードで、V60と較べると65mmのリフトアップ料金は50万円プラスである。ちなみに、アウディA4オールロード クワトロは658万円だから、価格やサイズ的にライバルになるだろう。
試乗車は上級グレードのV60CC T5 AWD プロで、20万6000円のチルトアップ機構付き電動パノラマ・ガラス・サンルーフと、32万円のBower & Wilkinsプレミアムサウンド・オーディオシステムを装備する。これにメタリックペイントの8万3000円を足して、合計709万9000円である。
V60との違いといえば、エクステリアでは樹脂製のオーバー・フェンダーで足まわりを強調するのはいつもの手法だ。フロント・バンパー下部の造形がちょっぴりアグレッシブになり、窓枠がブラック仕上げになって精悍さを増している。
ドアを開けると、最近のボルボの広報車に多い真っ白けのインテリアがあらわれる。「ドリフト・ウッド」、つまり、海岸に打ち上げられた流木のイメージで加工を施してあるアッシュ(タモ)のパネルが例によってステキだ。ボルボの特徴とも言える大ぶりなシートはややソフトで、ゆったりと座れる。パーフォレーテッド・ファインナッパレザーという表皮が柔らかくて、気持ちがいい。
ちょっと違和感があるのは妙に高い視点だ。運転席まわりの景色はV60とおなじなのに、まるでSUVみたいである。どういうこと? もう忘れちゃっていた。これはV60ではなくてV60CCで、最低地上高が65mm高い。だから視点が高いのか……と、思っているうちにやがてすっかり慣れた。
走り出すと、記憶のなかのV60よりも乗り心地がいい。ちょっと柔らかくて、ストローク感がある。19インチの235/35という扁平タイヤだけど、それでも快適で、コツコツこない。電子制御の可変ダンピングの設定はない。なんでこんなに乗り心地がいいのか? 先に車両概要をボルボ・ジャパンから聞いてなかったら、不可思議に思ったに違いない。
ボルボは、90シリーズはソフィスティケイテッド、60はダイナミック、40はユースフル(若々しい)というキャラクター分けをしている。ダイナミックなV60は本来、硬いのである。ところが、V60CCは前後サスペンションの主要部品をV90クロスカントリー(CC)と共通にしてコストダウンを図っている。それが幸いして、ダイナミックな60にソフィスティケイテッドな乗り心地を与えているのだ。V60CCなのにV90CCの味わいが楽しめるなんて、なんてお得なことでしょう! それでいてV90CCよりキビキビしている。
ただ、最高出力254ps/5500rpm、最大トルク350Nm/1500~4800rpmを発揮する2.0リッター直列4気筒ターボエンジンは、山道が舞台であると、もうちょっとトルクが欲しい気もした。350Nmもあるのだから十分そうだけれど、V60より車重が40kg増加している。サンルーフ付きだとさらに20kg増えて、1830kgに達する。
う~む、1830kgだったら重すぎるとも言えない。車重が増加したからエンジンが物足りなく感じるのだ、と思ったけれど、そうではなくて、車高が高い割にコーナリング能力が高い。きわめて安定していて、山道も安心してアクセルを開けられる。路面が濡れていても、大丈夫。アクセルが開けられるから、もっとパワーが欲しくなる。V60CCは飛ばせるクロスオーバーなのだ。
書き忘れたけれど、この種のモデルの美点は、日本の大都市に多いタワー式駐車場に入ることである。全長4785×全幅1895×1505mmで、立体駐車場も高さの点ではコワくない。ほぼ万能のステーションワゴンである。日本でもきっと、ヒットするはずだ。
ボルボはいま、世界中で爆発的に売れている。2018年の世界販売台数は、1927年の創業以来、初めて60万台を超えた。50万台を超えたのは2015年のことである。目指すは80万台。2010年に中国のジーリー・ホールディング・グループ傘下に入ってから、ボルボの躍進は続いている。日本市場では昨年1万7805台を販売、前年比110.5%を記録した。受注は2万台に達した。けれど、生産が追いつかない。だから納車できない。かかる事態を打破するために消費者ができることは少ない。いますぐ、ボルボのディーラーへ。思い立ったら吉日。それしかない。
またボルボは、2020年までにボルボ車に搭乗中での交通事故による死亡ゼロを目標に掲げている。いわゆるヴィジョン2020がそれだ。来年は2020年。そこに向かって努力を続けてきた。けれど、ゼロにできない要因が3つあることがわかった。
ひとつはスピードの出し過ぎで、重傷死亡事故の3割はこれが原因であるとアメリカでは言われている。そこでボルボは、2020年の夏前に生産開始する2021年モデルから180km/hのスピード・リミッターを導入する。速度無制限区間のあるアウトバーンを持つドイツは、ボルボにとって5番目のマーケットだけれど、それでもやる。一石を投じるのがボルボの狙いだ。
残りのふたつは、飲酒運転と注意散漫だけれど、人間が運転する乗り物である以上、このふたつは起こりうる。そこで2020年代の前半に、ボルボはドライバーのモニタリング・カメラを標準装備し、おかしいと思うドライバーには警告し、そのあと、自動的に減速、最後には車両を停止するシステムを構築する。
ボルボ自身も悩んでいる。ドライバーの自由な行為に対して自動車会社がどこまで介入するか、ボルボにも答がないからだ。だからこそ議論の機運を高めたい、と考えているのだという。このように高い理想を掲げる自動車メーカーが世の中の支持を受けないはずはない。ボルボが日本でヒットするのも納得である。
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