憧れのドライバーに身近に会えるワンメイクレース
トヨタ「GR86」とスバル「BRZ」による「GR86/BRZ Cup」は今もっとも盛り上がっているワンメイクレースのひとつですが、BRZは少数派。そんな中、BRZを駆り2023年のプロクラス王者となった井口卓人選手率いるチームタクティが、熊本のスバルディーラーでファンイベントを開催しました。ドライバー、メカニック、ディーラー、そしてファンをつないでいきたいという、新たな試みとは。
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ガチな戦いでありつつも和気あいあいとフレンドリーな雰囲気
トヨタGAZOOレーシングが開催している「GR86/BRZ Cup」というレースをご存じでしょうか。その名の通り、トヨタ「GR86」とスバルBRZのレース専用車両を使ったワンメイクレースです。現在は「プロフェッショナルクラス」と「クラブマンクラス」に分かれて、全国のサーキットを転戦しながらシリーズチャンピオンを目指して多くのドライバーが戦っています。
プロフェッショナルクラスは、スーパーGTなどで活躍するトップドライバーが多く参戦しているのも注目のポイントです。スーパーGTやスーパー耐久のように複数のドライバーで戦うのとは違い、GR86/BRZ Cupはひとりでレースを行うため、自分が望むセッティングを追い求めることで、同じようなマシンでもタイム差が生まれ、ドライバーの総合的な能力が如実に現れてしまう、とてもシビアな戦いが行われています。
とはいえ、そこまでピリピリした雰囲気はありません。なぜかと言えば使っている車両はGR86とBRZで共通。使っているパーツも見れば分かるため一目瞭然です。車高調のセッティングやタイヤの空気圧はそれぞれの戦略があるので秘密の部分もあると思われますが、他チームのドライバー同士でも情報を共有しあって、隠し事もほとんどなくオープンな戦いが行われているからです。
そんな、ガチな戦いでありつつもドライバーたちが仲良く楽しげに会話をしている風景を間近に見られるのが、このGR86/BRZ Cupの魅力なのです。
スバルのワークスドライバーが代表を務めるチームタクティ
GR86を使っているチームが多いなか、BRZを使うチームは多くありません。プロフェッショナルクラスでシリーズを通して参戦しているのは、スバルのワークスドライバーである井口卓人(敬称略・以下同)が代表の「チームタクティ」の2台と、スポーツシートで有名なレカロが走らせる「レカロレーシング」の2台だけです。チームタクティは井口が東京スバルのバックアップを受け、相方に千葉スバルのバックアップを受ける久保凜太郎。もう一方のレカロレーシングは群馬県出身の小暮卓史と、過去にチャンピオン経験のある近藤 翼が乗っています。
チームタクティは2023年にチームを立ち上げてレース活動を開始したばかり。優勝や表彰台を複数回獲得したことで井口はシリーズチャンピオンに輝きました。チーム立ち上げ1年目でシリーズチャンピオンを獲得したチームやドライバーは、なかなかいないのではないでしょうか。
全国のスバル車ディーラーとメカニックにも日の当たる活動を行いたい
2年目の2024年。開幕戦のスポーツランドSUGOで井口は最終ラップの最終コーナーでトップに並び、0.053秒差で優勝するという奇跡的な勝利を掴みました。そして6月16日に大分県オートポリスで開催された第2戦に挑むことに。九州出身の井口にとっては凱旋レースということもあり、九州のレースを盛り上げたいとして、ファンイベントを行うことにしました。
井口はチームタクティを立ち上げた時から、
「東京スバル、千葉スバルはもちろんのこと、全国のスバル車を販売するディーラー、そこに勤めるメカニックにも日の目が当たるような活動を行いたい。そしてファンとの交流をもっと深めていき、スバルBRZで参戦しているチームやドライバーを応援してもらいワンチームとして戦って行きたい」
という思いを描いていたそうです。
チームタクティのメンテナンスは基本的に東京・千葉両スバルのメカニックが行いますが、スバルが全国のディーラーメカニックをレース現場に派遣する活動にも賛同していることから、毎戦、開催地域の販売会社からもメカニックが駆けつけています。井口はこう語ります。
「普段レースに関わらないメカニックさんにも、レースに来ていろいろ経験してほしい。各ディーラーでレースを行うための見本になれるようなことをしていきたい」
GR86/BRZ Cup第2戦にあわせてトークショーとピットツアーを開催
そんな思いをもとに、GR86/BRZ Cup第2戦の前日である6月15日(土)、熊本スバルの南高江店において、チームタクティとして初めてのトークショーを、約30名の抽選で選ばれたファンの前で行いました。
ワンメイクレースの魅力やメカニックの役割などを語り、じゃんけん大会と記念撮影でイベントは終了。あっという間の1時間でしたが、ファンはドライバーに間近で接することができて喜んでいました。
さらに、レース当日は井口の両親の会社である「タクティプロジェクト」が主催となり、チームを応援するイベントとしてピットツアーを行いました。こちらはなんと50名もの参加があり、井口・久保両ドライバーが車両の解説からタイヤの使い方にいたるまで、こと細かにワンメイクレースの魅力を伝えていました。
BRZのファンたちとの距離を縮めていきたい
じつはGR86を使うチームの中にはファンイベントを行っているところもあり、ピットやパドックにファンが集まっている風景が見られます。BRZを使うチームでは今までこのようなイベントはなかったため、多くのファンが待ち望んでいたようです。井口も次のように語っていました。
「みんなこういうのを望んでいたんですよね。今回は地元ということもありタクティプロジェクトが窓口となってくれました。なかなか大変だと思いますが、他の場所でも開催できるようにしていきたいです。またトークショーも各地のディーラーとの連携や調整が大変ですが、スーパーGTで今までやっていた、レース直前のトークショーがコロナで無くなってしまい、ファンとの距離が開いてしまっているので、このワンメイクレースの魅力を語りつつ、距離を縮めていければ良いなと改めて思いました」
* * *
スーパーGTやスーパー耐久とも違い、わずか10周というスプリントレースの中で熱い戦いが見られるのと、テントでゆったりくつろぐドライバーと交流できるGR86/BRZ Cup。一度見に行ってみるとその面白さが体験できるはずです。
次戦は7月13日~14日に富士スピードウェイで開催され、オーナーたちが集まるイベント「GR86/BRZ STYLE」も併催されます。GR86/BRZのオーナーはもちろん、多くの方が楽しめるコンテンツがたくさんありますので、ぜひワンメイクレースも観戦してみてはいかがでしょうか。
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