本国よりも1年半遅れて日本にようやく上陸したVWの新型ゴルフ。その新型評価は全体的に好評のようだが、もともとVWゴルフというクルマに対しての期待値がやけに高いようなところがあるような……。
なぜVWゴルフに対する評価がそんなにも高いのか。そして、ゴルフってどこがいいのか? モータージャーナリストの岡本幸一郎氏が解説する。
新型VWアルテオン シューティングブレークに速攻試乗!! 適度にスタイリッシュでアクティブでちょうどいい感じなのだ!!
文/岡本幸一郎
写真/フォルクスワーゲン、ベストカー編集部
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■遅れてやってきたコンパクトカークラスの「ベンチマーク」
コロナ禍の影響もあって、本国よりも1年半も遅れてようやく日本上陸をはたしたゴルフ8だが、その評価は上々だ。待った甲斐あったと思っている人も少なくないことだろう。
ますます激戦区の様相を呈するこのカテゴリーにおいて、いつしか呼ばれるようになった「ベンチマーク」としての面目躍如である。
8代目ゴルフ。日本導入のグレードはすべて、1.0L 3気筒ターボor気筒休止機能付き1.5L 4気筒ターボ、これに48Vマイルドハイブリッドの組み合わせで武装する。ボディ全幅は1790mmと、1.8m以内に納めてきた
デジタル化が進んだコックピット。ADAS(先進運転支援システム)も新しい「Travel Assist」が搭載され、レベル2相当の運転支援を0~210km/h範囲で行う。また、このADASは欧州車初の通信技術であるWiFi型のVtoXに対応可能なシステムでもある
「ベンチマーク」という言葉は、もともと測量における水準点という意味で使われていた。そこから派生して、投資や経営などの分野では多少意味合いが変わり、指標や指数として使われるようになった。ビジネスの場では、他社の優れた部分を学び、自社に活かすという意味で使われる。
自動車業界でもまさしくそうで、開発関係者から頻繁に飛び出すベンチマークという言葉は、「目標」とほぼ置き換えられる。すなわちゴルフは、そういうクルマとして認識されており、そう呼ばれるに相応しいクルマでありつづけている。
普通に考えると時間の経過とともに、ほかの優れたクルマが出れば変わってもおかしくないところ、常にその位置にいるわけだ。
■むしろ目標にされすぎてアワードが少なめ?
ゴルフがいつからベンチマークと称されるようになったのかはよく知らないが、ゴルフ2あたりが現役の頃すでにと呼ばれていたような気がする。
ゴルフ2に乗っていた知人が何人かいたので比較的頻繁に乗る機会があったのだが、騒々しくてATのできがよくなかったりステアリングがやけに重かったりと、まず不快な部分が気になったものだが、当時まだ経験の浅かった筆者でも足まわりのよさはよくわかった。
1984年に発売された2代目ゴルフは、特別に装備や質感が高かったわけではないが、走行安定性に優れていて長距離運転でも疲れにくいクルマだった
ドッシリと安定していて、適度にしまっていてクルマ酔いしやすい人も、ゴルフなら酔わない。その感覚は当時の日本車とは一線を画していた。
それを当時の自動車メディアも高く評価していたように記憶している。メディアの影響力がいまよりも強かった時代でもあり、その評価が浸透していったのがいまでも少なからず効いていることには違いない。
日本だけでなく海外でも、ゴルフはベンチマークとして認識されている。世のハッチバックを手がけるメーカーはみなゴルフに追いつけ追い越せを旗印に努力を重ねてきた。
意外なことに、欧州COTYのようなアワードでは、ゴルフひいてはVWの受賞歴は少ないのだが、むしろベンチマークすぎて面白味がないからか、ゴルフを超えていたかどうかはさておき、ラテン系の何か特徴的なものを持ったクルマのほうが多くの票を獲得してきた傾向がある。
■ゴルフの装備=コンパクトカークラスの必須装備になってきた
そんなゴルフは、Cセグのベーシックなハッチバックとしての機能や性能の高さを追求してきたのはもちろん、これまでいくつもの新機軸を打ち出してきた。
それがやがて同じ土俵にいる競争相手にとってもスタンダードと化してきたことから、時代を先取りしていたとしてベンチマークとしての価値をより高めてきた。
いち早く実施したサイズの拡大と高級化路線をはじめ、ダウンサイジングコンセプトやDSG、リアマルチリンクサスペンション、MQBの採用などがまさしくそれだ。最新のゴルフ8で見せた電動化やデジタル化、運転支援技術の強化も、ゆくゆくは常識となっていくことだろう。
新型もリアサスペンションはグレードで異なり、1.0L 3気筒エンジンのグレードにはトーションビーム、1.5L 4気筒エンジンのグレードには4リンク(マルチリンク)を採用する
こうした一連の流れにより、ゴルフといえばもはや何も説明しなくても「優れたクルマ」だと誰しもに認識されるほどにすでに定着したイメージを持っているという強みがある。それは一朝一夕でできるものではない。
これまでなにをやってきたか、いまなにをやっているかの積み重ねで、時間をかけてできあがるものだ。それは黙っていても透けて見える。そんなゴルフをありがたがる人が日本にも大勢いるのは、不思議なことではない。
ベンチマーク=目標というのは、憧れにつながる。同格の日本車に比べると多少は割高でも、少し背伸びすれば手に入る。そこにプラスアルファを払うことにあまり抵抗はない人が大半だろう。
■ゴルフというクルマに付随するニュアンス
一方で、よくゴルフは「クラスレス(=特定の社会階級属さない ※Weblioより引用)」とも評される。たとえばメルセデスのSクラスやEクラスあたりからAクラスに乗り換えると、ダウンサイジングという大義名分があっても少なからずちょっと悲壮感が漂うのは否めず。
ところが、それがゴルフだと恥ずかしくない。このニュアンスもご理解いただけることと思う。
ユーザーもまさしくそうで、ゴルフは老若男女どんな人が乗っても絵になる。輸入車のビギナーから国内外のクルマを知り尽くした経験豊富な人まで、どちらにも薦められるクルマでもある。
WLTC燃費については、1.0L 3気筒モデルが18.6km /Lで、1.5L 4気筒モデルが17.3km/L。そのなかでも高速モードであるWLTC-Hの燃費が一番良く、1.0L版が20.8km/Lで1.5Lは19.8km/Lだ
輸入車信仰の根強い日本では、下世話な話だが、日本車を所有するのとは周囲に与える印象も違えば、とりわけゴルフの場合は前述のイメージのよさもあって、なおのこと所有する充足感も高まるのはいうまでもない。
■日本人も親近感を持つゴルフ
さらには、日本車にはない価値を感じさせながらも、日本車と同じようなとっつきやすい雰囲気を持っているのもゴルフの特徴だ。これがメルセデスやBMWやアウディだと、実際以上に敷居が高いと感じる人は少なくないところ、ゴルフには親近感がある。
それゆえ遠い世界の話ではなく、現実味を持って接せるクルマゆえなおのこと、誰しもにとってよりありがたみが増して感じられるのではないかと思う。それが日本車とそれほどかけ離れていない出費で手に入れられるのなら、「どうせならゴルフを」という思考になる人が少なくないのは当然だろう。
個人的にも驚いたのは、ディーゼルゲート問題とその後のことだ。まさかVWがあんなことをするとは思ってもいなかったのはもちろん、あれほどの大問題を引き起こしてはそれなりに尾を引くと思っていたのに、一時的に販売は低迷したものの、予想外の早さで立ち直ったからだ。
さらにはいまや電動化を推し進める急先鋒になっている。これもまた先でも述べた確立されたブランドイメージという強みもあってのことと思う。そして、そのVWの象徴的存在こそ、ほかでもないゴルフである。
VW電動化の象徴にもなっているID.シリーズ。ゴルフのような象徴的モデルがEVからも誕生するのか注目だ
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