世界戦略SUV、日本最適設計で2024年秋に正式デビュー
スズキからフレッシュSUVが登場する。2023年4月のインドを皮切りに、これまで中南米や中近東、アフリカで販売してきたグローバルカ―、フロンクスを、日本でも今秋導入すると発表したのだ。日本仕様は日本最適設計を施し、インド工場から輸入する。
ホンダが同じインド生産のWR-Vを導入して間もないタイミングで、生い立ちの似たフロンクスが日本に上陸するのは興味深い。
スズキが「10年先を見据えた技術戦略」を発表。48Vハイブリッドを開発、車重はなんと100kg軽量化を目指す!
ボディサイズは3995×1765×1550mm、WR-V(同4325×1790×1650mm)と比較してひと回りコンパクトで、全高が一般的な立体駐車場に収まる点が特徴になる。造形は、スクエアで力強さを感じさせるWR-Vに対し、フロンクスは見てのとおりマッシブさと流麗さを際立たせたクーペスタイル。スズキにとって新しいタイプのクロスオーバーSUVとなる。
WR-Vが効率的な設定により全車250万円以下の戦略プライスを実現したのに対し、フロンクスはどちらかというと反対の印象。スズキ・ラインアップの中のプレミアムモデル、というイメージを受けた。日本仕様は先進安全装備や4WDを追加している点も対照的で興味深い。
スズキといえばインドで大規模なビジネスを展開しているメジャープレーヤー。インド生産車の導入も初めてではない。かつてバレーノというコンパクトカーを輸入していた。フロンクスはインド生産車の第2弾。日本仕様のプロトタイプをクローズドコースで初試乗した。
フロンクスは、南アフリカで2024 The Best Car of the Yearに輝くなど、すでに多くのアワードを受賞している実力車。内外装ともなかなか印象的だ。
パワートレーンは1.5リッターマイルドHV。意のままの走行フィールと高い静粛性が魅力
スタイリングはクーペスタイルSUV。デザイナーが「力強さ、上質さ、洗練を大切にし、街中でも埋没することのない個性を追求した」というだけあってインパクトがある。強い印象の顔つき、コントラストを効かせたボディパネル、しなやかな筋肉を表現したというフェンダー回りが目を引く。
インテリアは躍動感のある造形で、スポーティさを表現していた。ブラック×ボルドーの渋めのカラーコーディネートが特徴的だ。
走りにかなりこだわって開発されたことは、ドライブしてすぐに伝わってきた。パワートレーンはマイルドハイブリッド。1.5リッターエンジン(74kW/135Nm)は自然吸気の4気筒。トランスミッションはトルコン6速ATという、筆者にとっては好みの組み合わせだ。エンジンは必要十分なトルクを発生。走り味は素直で好感が持てる。何よりダイレクト感があるのが魅力だ。
エンジンはレッドゾーンの6300rpm付近までスムーズに吹き上がり、スポーツモードを選択すると、3000rpm以上を多用するようになる。パドルシフトを装備している。
フロンクスは静粛性もハイレベル。エンジン自体は、低く響く心地よい4気筒らしいサウンドを聞かせながらも、クルマ全体の静粛性はなかなか高い。このクラスではちょっと味わったことのないレベルの静かさである。
パワートレーンに起因する以外のタイヤ音や風切り音はよく抑えられている。後席に乗ってみると、サイズから想像するよりもずっと足元が広々としているし、静粛性が高く、多くのハッチバック車で気になる後方から入ってくる音がよく抑えられていることがわかった。これなら前後席間で会話を楽しみながらドライブできるに違いない。
シャシー性能もなかなかのレベルだ。低重心でロングホイールベース、ワイドトレッドという基本要素に加えて、日本専用チューニングがメリットを生んでいる。開発陣が掲げる「高い操縦安定性と直進安定性、快適な乗り心地の実現」というテーマを高次元で達成していると感じた。まずは微舵の領域から正確に応答し、戻す側もきれいについてくるステアリングも反応のよさに感心した。
フロンクスはイメージしたラインをそのとおりにトレースしていける。しかも適度にロールし、おだやかに収束するように味付けされているのがいい。クルマの姿勢がどうなっているのかを把握しやすい。しかもコーナー外輪だけでなく内輪も路面にしっかり接地している感覚があり、走っていて安心感がある。
乗り心地も快適だ。引き締まった中にもしなやかさを感じた。荒れた路面を走ったときのバタつきもさほど気にならない。前席と後席で乗り心地に差がないのも大きな魅力である。アスファルトの継ぎ目や段差を乗り越えても衝撃があまり伝わってこない。トーションビーム式のリアサスペンションでもここまでできることに驚いた。
2WDをドライブしてよい印象を持ったところで、4WDに乗り換える。そのまとまりぶりは、2WD以上によかった。適宜後輪が駆動されることや、前軸重が10kg、後軸重が50kgほど重くなり重量配分が改善されることも効いて、より素直な動きでバランスのよいコーナリングを実現していた。
全車4.8mという最小回転半径についても、確かに小回りがきくことを確認した。この取り回しのよさは日々の生活で大きな武器になるはずだ。また、先進安全装備については、かなり力を入れており、ライバルを上回るほど充実している。その完成度に期待が高まる。
コンパクトクラスにもさまざまなSUVが存在するようになったが、自分らしさを表現できるクルマを求めるユーザーにとって、フロンクスは魅力的な選択肢になりそうだ。
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みんなのコメント
逆にインドのユーザーが、日本仕様のフロンクスに乗ってみて、どれだけ違うのかも聞いてみたい。