パサート級のBEVサルーン 追ってワゴンも
フォルクスワーゲンは、欧州市場でバッテリーEV(BEV)のラインナップを短期間に整えた。ハッチバックのID.3から、クロスオーバーのID.4やID.5、ミニバンのID.バズまで、幅広いボディスタイルを用意している。
【画像】準備着々のパサート級EV フォルクスワーゲンID.7 プロト ID.4とバズ 競合サルーンも 全120枚
2022年の下四半期では、世界全体での販売の10%近くをBEVが占めたという。日本でも、ID.4から導入が始まっていることはご存知かと思う。
そして更なる充実を図るべく、2023年末にニューフェイスが加わる。リフトバック・スタイルの4ドアサルーン、ID.7が英国のショールームへ並ぶことになる。2024年には、ステーションワゴンも追加されるという。
このID.7がライバルとするのは、テスラ・モデル3やヒョンデ・アイオニック6。既存のフォルクスワーゲン・モデルでいうと、パサート・クラスに属する。
肝心のお値段はまだ発表されていないが、英国では5万ポンド(約805万円)前後になるだろうと予想される。モデル3やアイオニック6のロングレンジ版と、価格帯でも接近した設定のようだ。
ID.7のオリジナルといえるのは、2018年のスイス・ジュネーブ・モーターショーで発表されたコンセプトカー、ID.ビジョン。滑らかにカーブを描くフォルムを受け継ぎ、2022年のアメリカ・ロサンゼルス・モーターショーで、ID.7としてデビューを果たした。
短いボンネットに長く低いキャビン
今回試乗に招かれたのは、初夏の陽気だったスペイン。カモフラージュとしてQRコードのような模様がボディ全面に施されていたが、ID.4などに採用されるスタイリングの要素が展開されていることがわかる。
横から見ると、短いボンネットに長く低いキャビンが続く、2ボックススタイル。フォルクスワーゲンは、空力特性や走行時のノイズ低減のため、平滑な面処理に注力したと主張する。確かにドアハンドルはボディ面とツライチで、ドアパネルの隙間も小さい。
プラットフォームは、フォルクスワーゲンが開発したBEV専用のMEB。コンパクトにまとめられたパワートレインのおかげで、Aピラーをパサートより遥かに前方に位置させている。
大きく倒されたフロントガラスと、緩やかなルーフラインが貢献してか、空気抵抗を示すCd値は0.23。最近のID.シリーズより良好で、過去に少数が生産されたプラグイン・ハイブリッドのXL1へ接近している。あちらは、0.19と桁が違うが。
ボディサイズは全長が4961mm、全幅が1862mm、全高が1538mmで、現行のパサートより186mm長く、30mm広く、55mm高い。ホイールベースは2966mmあり、180mmも長い。高い実用性を得ていると考えていいだろう。
サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット式で、リアがマルチリンク式。フォルクスワーゲンがダイナミック・シャーシー・コントロール(DCC)・プラスと呼ぶシャシー・オプションを追加すれば、アダプティブダンパーが組まれる。
新モーターで286ps 航続距離は最長700km
パワートレインはID.4などと同様に、リアへ1基搭載されるシングルモーター版と、前後に2基が積まれるツインモーター版が用意される予定。ただし、ID.7には新開発ユニットが採用される。
この新しいAC同期モーターは、現在のID.4の後輪駆動版が搭載するものより遥かにパワフルで、最高出力286psと最大トルク55.4kg-mを実現している。ローターやコイル、水冷ユニットの改良などで達成したそうだ。
英国仕様として最初に導入されるのは、シングルモーターの後輪駆動版。プロとプロSという、2つのグレードが設定される。ちなみに、追って他のID.シリーズでも新ユニットへ置換される計画だという。
ID.7では、シングルスピードのオートマティックや、駆動用バッテリーの直流を駆動用モーターの交流へ変換する、インバーターのソフトウエアなども改良された。より高いエネルギー効率を求めて。
駆動用バッテリーの実容量は、プロで77kWh、プロSで85kWh。基本的には、ID.バズが搭載するニッケル・コバルト・マンガン (NMC) を用いた三元系リチウムイオンと同一。12個のモジュールが、大きなフロアに薄く敷き詰められている。
正式な航続距離は公表されていないものの、同社は77kWhで最長614kmになると想定する。大きい85kWh版では、700kmに届くという。
テスラ・モデル3の航続距離は、53kWh版で490km、78kWh版で601kmがうたわれる。ヒョンデ・アイオニック6は、53kWh版で429km、77kWh版で614kmとなっている。ID.7の実力は高そうだ。
この続きは後編にて。
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