■まさに新型「クラウンターボ」だよ!これは!
16代目で大きな変革をおこなったトヨタ新型「クラウン」。
今回、注目となる2.4リッターターボと組み合わせた新ハイブリッド「デュアルブーストハイブリッド」はどのような特徴を持っているのでしょうか。
【画像】高級×速さ=新型クラウンターボ!? 迫力あるその実車を見る!(54枚)
このシステムはトヨタのハイブリッドの新たな選択肢として投入されたシステムになります。
実は5年前の「電動車普及に向けたチャレンジ」の発表の際に、寺師茂樹副社長(当時)がこのようなことを語っていました。
「今後もハイブリッド技術は磨き上げていく必要があります。
現在のTHSIIだけにこだわらず、トーイング性能が求められるCV用、アフォーダブルな価格が求められる新興国向け。
さらにはスポーツモデル用など、用途に合わせたシステムも開発していきます」
筆者はスポーツモデル用のひとつの答えが、デュアルブーストシステムだと予測しています。
トヨタで主流となるTHSIIは走行状態に応じてエンジンとモーターと適切に使い分ける「シリーズパラレル方式」と呼ばれるシステムで、2つのモーターと動力分割機構の組み合わせによる電気式無断変速で構成されています。
対するデュアルブーストハイブリッドはエンジンが主役でモーターがそのサポートをおこなう「パラレル方式」です。
効率という意味ではTHSIIは非常に高いレベルですが、ダイレクト感やエンジン回転数と車速がリンクしないフィーリングなどに課題がありました。
長年の進化・熟成により改善してきたものの、完全に消し去ることはできず。そこで生み出されたのが、このシステムというわけです。
開発の狙いは大きく3つ、「レスポンスの良さ」、「ダイレクトかつトルクフルな加速フィール」、「中高速域からの加速の伸び感」です。これらからも“走り”に振ったハイブリッドであることが解るでしょう。
そのシステムはフロントに272ps/460Nmを発揮する2.4リッターターボに82.9ps/292Nmを発揮する駆動用モーターと6速AT、2つのクラッチ(発進用/エンジン切り離し用)、インバーターなどを搭載。
ネーミングの通り「ターボとモーターで過給」をおこなうイメージです。
ちなみに6速ATはダイレクト感のためにトルクコンバーターではなく湿式多板クラッチが採用され、システムのサイズは8速ATよりちょっと大きい程度に抑えられています。
リアは独立したモーターを搭載する電動AWD(E-FOUR)なのは2.5リッター+THSIIモデルと同じですが、より高出力(80.2ps/169Nm)なeAxleを採用した「E-FOURアドバンス」を搭載しています。
前後のトルク配分は100:0~20:80まで可変でき、通常のE-FOURよりも後輪への駆動力の大きさも特徴の1つです。
バッテリーは全車バイポーラ型ニッケル水素電池が搭載されていますが、デュアルブーストハイブリッドはより高出力が求められるため、セル数を2.5リッター+THSIIの168から192に変更。
ちなみに2.5リッター+THSIIモデルとの見た目の違いは、専用デザインの21インチアルミホイールと漆黒メッキの車名エンブレムのみ。
個人的にはデュアルブーストハイブリッドを主張するカッコいいエンブレムくらいは装着しても良かったのかなと感じました。
■期待値高めだが…実際に乗ったらどうだったのか?
走り始めはTHSIIよりも電動車感が強めです。
バッテリー残量が多い時はEV走行も積極的におこなううえに、アクセルを更に踏んでいってもエンジンはなかなか始動しない粘り強さも持っています。
この辺りはセル数を増やしたバッテリーが効いているのでしょう。
エンジン始動時も非常に滑らかで気が付きにくいだけでなく、始動時のエンジン回転上昇もTHSIIよりも抑えられているので、静→動のギャップにガッカリすることもありません。
ちなみにトルコンレスのATは発進時や微速域でギクシャクすることが多いですが、新型クラウンのそれは実によく制御されており、今回の試乗で気になることはほぼなかったです。
そのままアクセルをグーっと踏み込んでいくと、これまでのTHSIIにはなかったアクセルとエンジンの直結感とターボの過給遅れのない応答性の高さ、そして高回転までストレスなく回るスッキリとしたフィーリング。
加えて、トルコンレス6ATのキレの良さと小気味良さも相まって、ハイブリッドというよりも、「非常に良くできた内燃機関」と呼びたくなるくらいの気持ち良さを感じます。
なかには「ATの多段化がトレンドなのに、今時6速ATなんて……」と思う人もいるでしょうが、デュアルブースト化で各ギア段のカバーレンジが広くなっているため全く問題なく、むしろビジーシフトしないのでドライバビリティも高いと思います。
ただ、1つ残念なのは2.5リッター-THSIIよりかなり抑えられてはいるものの“濁音”の多いエンジン音です。
恐らく、ほかの部分の静粛性が高さから相対的に目立ってしまっているのでしょう。
恐らく、高効率エンジン特有の高周波の共鳴が原因だと思うので、何らかの減衰機構で吸収、もしくはASCなどを活用した音質改善などを期待したいところです。
システム出力は349psで1920キログラムの車両重量ながら「速い」と思えるパフォーマンスに加えて、システムの強みである応答性/ダイレクト感の高さなどから、体感的には先代のフラッグシップであるV6-3.5リッター+マルチステージハイブリッドを超えていると感じました。
気になる燃費ですが、開発陣が「走り重視です」と語っているように、WLTCモードは2.5リッター+THSIIの22.4km/Lに対して15.7km/Lとそれほど良くないです。
ただ、実際に走らせてみたところ、ワインディングはともかくバイパスのような道での定常走行は20km/L前後だったので、実燃費は想像しているよりは良いと予測しています。
では、フットワークはどうでしょうか。
2.5リッター+THSIIとの違いは、サスペンションセッティング(新摺動構造採用のAVS)とアルミホイール(剛性だけでなくしなやかさを持たせた構造)、更にはリアモーターの使い方でしょう。
THSIIはスリップしたらリアを駆動させるオンデマンド方式ですが、デュアルブーストハイブリッドは「常時AWD」になります。
つまり、e-Axleは連続使用されるため、熱対策のために水冷の冷却系が採用されています。
ステア系は初期応用の良さ、雑味要素が少ない滑らかな操舵感、路面からの情報の豊かさ(=直結感が高い)は2.5リッター+THSIIと同様ですが、操舵力は若干重めになっています。
ハンドリングは2.5リッター-THSIIモデル以上に駆動方式の概念が変わる走りです。コーナー進入時は4WDの安定感を持ちながらも抵抗感の少ない操舵感は、レクサス以上にスッキリ。
コーナリングの最中は横置きFFレイアウト特有のフロントを中心に旋回するのではなく、まるで重量配分が整った縦置きFRのように旋回軸がドライバーの近くにある感覚は2.5リッター+THSII以上に強いです。
とくにリアに荷重をシッカリと乗せながら曲がっていく旋回姿勢はFRよりもFRっぽいと感じるレベルで、ワイディングなどではパワートレインのレスポンスの良さも相まってステアリングだけでなくアクセルコントロールで曲げることも可能。
そして、コーナー脱出時にアクセルをグッと踏み込んだときは4WDの安定感を損なわずにFRのようなリアタイヤの蹴り出しが実感できるトラクションを持っています。
このように走行シーンに応じて駆動方式がシームレスかつアクティブに変化するのが大きな特徴です。これらはリアに大きな駆動力を伝えられるeAxleに加えて、四輪操舵(DRS)やACA(アクティブコーナリングアシスト)の相乗効果によるものです。
しかし、これらのデバイスは主張することなくあくまでも裏方として働いています。
その結果、意のままの走りが可能で、初・中級ドライバーは「私、運転が上手くなった?」、上級ドライバーは「コントロールがしやすいね」と感じてもらえるはずです。
■「電気モーター」を上手く活かした走りの新型「クラウン ターボ」とは
つまり、トヨタ車共通の味である「Confident(安心)& Natural(自然)」はデュアルブーストハイブリッドでも全くブレていないことが解ってもらえるでしょう。
乗り心地は2.5リッター+THSIIよりも若干引き締められていますが、入力の優しさや乗員へのショックの伝わり方の少なさなどから、体感的にはむしろ快適で動的質感も高いと感じました。
一番の要因は新摺動構造採用のAVSとしなやかさを持たせたアルミホイールですが、筆者はこれらにより21インチタイヤのたわみをより活用できたセットが実現しやすかったのだろうと分析しています。
ブレーキは電動油圧ブレーキがアキュムレーター式からオンデマンド式に変更された回生協調ブレーキで、それを微塵も感じさせないフィーリングながらも、2.5リッター+THSIIと比べると、若干タッチが硬め、ストロークが短めに感じました。
これは仕様なのか、それとも個体差なのか、少々気になるところです。
この走りを体感して、2021年12月におこなわれた「トヨタBEVに関する説明会」の質疑応答で、筆者の質問に対する豊田章男社長の回答の一節を思いだしました。
「電気モーターを活かして四駆のプラットフォームを1つ作れば、制御如何でFFにもFRにもできます。
そんな制御を持ってすれば、モリゾウでもどんなサーキット、どんなラリーコースでも安全に速く走ることができます」
このときはBEV(電気自動車)の話でしたが、これをハイブリッドに置き換えたのが、このデュアルブーストハイブリッドというわけです。
筆者はこれまで先代(15代目)の基本素性の良さを活かした精度感の高いハンドリングを高く評価していましたが、16代目は「電気モーター」と「制御」を上手に活用したことで、それに負けない走りが実現できています。
※ ※ ※
16代目クラウンとしての方向性は全モデル共通ですが、デュアルブーストハイブリッドはパワートレイン/フットワーク共に新時代のスポーテセダンにふさわしい「爽快」なモデルに仕上がっています。
ゆったり・のんびり走るなら「癒し系」の2.5リッター+THSIIの19インチタイヤ仕様もお勧めですが、個人的には16代目の本命はやはりコイツだと思っています。
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みんなのコメント
その前に情報操作系の忖度記事をどーにかしろよw
まじ金儲け優先企業同士が組むとタチが悪い
まるで国会議員だな