■トヨタの新たなエース「RAV4」は欧州仕様と日本仕様でなにが違う?
トヨタ「RAV4」は、乗用車ベースのクロスオーバーSUVの先駆け的存在といえるモデルで、北米・欧州・アジアをはじめとする世界180か国・地域で展開される世界戦略車です。
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2018年は世界累計84万台を発売するなど、同社の看板モデルである「カローラ」や「カムリ」と並ぶ、トヨタのエースへと成長しています。
日本では、2016年に販売をいったん終了しましたが、現行モデルとなる5代目への進化に合わせて2019年に3年ぶりに再導入がおこなわれました。
一度廃止したブランドを復活させるには多くの労力やお金がかかりますが、RAV4ブランドの高さは空白期間もなんのその、直近の発売台数は月販目標台数の2倍から2.5倍と、好調なセールスを記録しています。
SUVらしさを強調した外装、シンプルながら質の高い内装、居住性/積載性の高さ、全面刷新されたパワートレイン/プラットフォームの基本素性の高さに加えて、「匠」と呼ばれるプロフェッショナルをフル活用して仕立てた走りなど、バランスの取れた総合性能が高く評価されています。
筆者(山本シンヤ)はすでにRAV4には試乗していますが、その実力にはまだ先があると感じていました。そこで欧州仕様の試乗をおこなってきました。
今回試乗したのは、2.5リッター自然吸気エンジン(ダイナミックフォースエンジン)+モーターを組み合わせたハイブリッドに、後輪用モーターを採用した電動4WD「E-Four」になります。
外観は日本仕様と基本的には同じですが、今回の試乗車のグレード「Style Plus」は、ホワイトのボディカラー+ブラックルーフ+ブラッククラッディング(タイヤハウス周辺の樹脂製パーツ)+ブラックアルミホイールという、日本仕様にはないクールなコーディネイトです。
一方、内装はステアリング位置の違い以外に、日本仕様にはない装備も用意されています。
たとえば、パドルシフトやオートワイパー、パノラミックビューモニター、純正ナビゲーション、9スピーカーのJBLサウンドプレミアムサウンドシステム(オプション)など、どれも「日本仕様にあったらいいよね」と思うものばかりです。
おそらく、日本仕様はリーズナブルな価格実現のために装備を割り切った所があると思いますが、市場の要望によっては改良で設定される可能性もあるでしょう。
■新型RAV4が欧州で見せた走りの実力とは!?
試乗で走行するルートは、ベルギーにあるトヨタの欧州拠点であるTME(トヨタモーターヨーロッパ)からニュルブルクリンクまでの道のりです。一般道やカントリーロード、高速道路(アウトバーン含む)もルートに含まれ、約600kmを走行しました。
実力の高いダイナミックフォースエンジンとモーターの組み合わせは、日本仕様と同じく「電動ターボ」のような力強さが感じられます。ハイブリッドが苦手といわれる日本の巡航速度を超えた高速域で走り続けても、パワーの落ち込みはほぼ感じません。
電気式CVTは、アクセルをベタ踏みしない限り自然なフィーリングを感じさせる点は日本仕様と同じですが、パドルシフトを活用するとワインディングではエンジン回転が落ちないので、よりメリハリのある走りが可能でした。これは早急に日本仕様にも設定すべきだと思います。
ちなみに最高速はメーター読みで190km/h(カタログ値は180km/h)を記録しました。
また、目線がブレないフラットな乗り心地と、ステアリングに軽く手を添えるだけでビシーッと走る直進安定性は、アウトバーンのハイスピード領域でも印象は変わりません。
静粛性は基本的には高いレベルですが、それゆえに高速巡航時に路面変化に対して敏感なロードノイズや、ドアミラー付近から聞こえる風切り音など、細かい部分が気になりました。
このあたりはイタチごっこですが、より高みを目指すためには改善を期待したい所です。
驚いたのはワンディングでの走りです。ニュルブルクリンク近郊の一般道は、白線のない対面通行で100km/h前後で流れています。
そんななか、RAV4は決してコンパクトとはいえないボディサイズ/重量ながら、ドライバーの細かい操作にも忠実に反応する応答性、速度を落とさすに路肩ギリギリまで使えるコントロール性、アウト・イン・アウトのラインを通らなくても安心して走れる正確性の高いハンドリングを持ち、「目線の高いスポーティハッチ」といってもいい過ぎではないと思います。
加えてハイブリッドにもガソリン車のような「キビキビ感」や「軽快さ」があったら、と欲が出てしまったほどです。
今回は全域で日本より速いペースでの走行でしたが、燃費はカタログ値(17.2km/L:WLTP複合サイクル)を超える18.2km/Lを記録しました。「速度域の高い欧州では、トヨタのハイブリッドシステム『THS-II』は燃費が良くない」は過去の話です。
ちなみに欧州仕様と日本仕様で若干の仕様の違いはあるようですが、走りの考え方は共通だそうです。
なかには「日本ではそんな速い速度で走らないし」という人もいるかもしれませんが、筆者は厳しい条件で安心して走ることができる=日常域での愉しさや気持ち良さ、そしてクルマの信頼に繋がると考えています。
今回、欧州でRAV4の潜在能力の高さを実感したことで、豊田章男社長が常日頃語っている「もっといいクルマづくり」の本気度がより明確になったような気がしています。
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