■「シビックタイプR(FD2型 平成19年式)」は400万円でも180万円提示となったのか
2022年9月26日、栃木県大田原市の信号機がある交差点にてホンダ「シビックタイプR(FD2型)」が赤信号無視のクルマと衝突する事故が発生しました。
ディーラーがユーザーへの納車直前だったというこのシビックタイプRですが、ディーラー側は事故後の保険会社の対応に納得できないといいます。どういった状況だったのでしょうか。
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このシビックタイプRは事故現場の近くにある「ホンダカーズ野崎」のスタッフが、ユーザーに納車する直前のチェック走行をしていた際に事故に遭遇しました。
車両価格は397万7000円、新品ナビ・ドラレコ41万8000円(工賃込)、それに諸費用を含んだ乗出し価格452万8000円の物件で、事故の翌日には納車される予定でした。
しかし、前述の通りチェック走行中に信号機がある交差点で、右方から来た信号無視のクルマと衝突して大破。
事故当初に相手は「青信号で直進した」と主張するも、シビックタイプRに装着されていたドライブレコーダーの映像には相手が赤信号を無視していた様子が映されていました。
その後、相手の保険会社から全損扱いで約180万円を支払うと提案があったといいます。
事故で大破したシビックタイプRは平成19年式の中古車ですが、現在は価格が高騰しており車体価格だけで約400万円しますが、なぜ保険会社は180万円という提示をしたのでしょうか。
基本的に保険会社における支払い金額の基準は、「データライン」や「レッドブック(赤本)」といった日本における中古車市場(オークション市場)の相場の蓄積データを参考に算出しています。
そのため、全損の場合でも年式と経過年数によって、新車価格から減額した金額が支払われるのが保険会社の一般的な対応方法です。
しかしこれは、実際の市場価格を考慮したものではありません。
今回のシビックタイプRに関して、ホンダカーズ野崎・店長の松本氏は次のように話しています。
「本来、『時価額=再取得価格(市場価格)』であり、今、一般人なら買える価格です。
しかし納車直前だったシビックタイプRは400万円前後の価格で取引されており、保険会社の提示額(時価額)は市場価格と大きく乖離しています。
このシビックタイプRは名義変更こそ終わっていたものの代金が支払われる前で、ホンダカーズ野崎の商品という位置づけでした。
そのため商品を失った現在、ホンダカーズ野崎とお客さんとの間で締結した契約は不履行となるので、180万円を補償するという提案は受け入れることはできません。
利益が確定していた納車前の商品ですから、全額の補償が当然だと考えています。
その後、相手からの謝罪はありましたが、保険会社からの連絡を待っている状況です」
今回の事故に関する保険会社の対応について、別の保険会社担当者は次のように話しています。
「基本的に保険会社は、赤本を参考にクルマの価値を算出していますが、これは昨今の事情とは乖離しているのが現状です。
一部のユーザーのみの間で価格が高騰しているのであれば赤本通りの対応になる可能性も有り得ますが、昨今では中古車価格が新車価格を上回ることや、希少価値があるクルマの価格高騰は珍しくありません。
そのため、今回は『希少なクルマは日本全国で価格高騰している』という世の中の相場と、販売店が損害を受けたという『損害賠償の請求』が争点になるのではないでしょうか。
裁判所の判断次第ではありますが、予想としては(市場価格の)満額、もしくはやや減額で落ち着くのではないかと思います。
いずれにせよ、今回の判例が今後の自動車保険のターニングポイントになるかもしれません」
※ ※ ※
2018年には富山県が管理する道路において、約3500万円で購入したトヨタ「2000GT」が倒木により全損という事故が発生しています。
これは結果的に富山県が車両購入費の半額となる1750万円を支払い、和解が成立していましたが、完全修復に約2億円かかることから修理を断念したといいます。
このように新車当時よりも価値が高くなっているクルマは年々増えていますが、何かしらの事故やトラブルに遭遇したとしても保険での対応に限界があるのも事実です。
一方で、仮に自動車保険の補償が市場価格に見合ったものとなった場合、保険料の上昇も考えられます。そうなるとユーザーの負担が増えることは避けられないことから、諸手を挙げて歓迎すべきではないという意見も出そうです。
今回のシビックタイプRの事例によって新たな対応方法が出てくるのか、注目されます。
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みんなのコメント
稀に保険会社社員に謝罪だとか誠意なんて言う被害者がいるがそれは加害者に求めるものであって保険会社じゃない。彼らは仕事として淡々とこなしているだけ。