7月19日、三重県の鈴鹿サーキットにて2024 FIM世界耐久選手権(EWC)第3戦“コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース 第45回大会の予選1回目、2回目が行われた。2022年、2023年と2連覇を遂げているTeam HRC with Japan Post(高橋巧/ヨハン・ザルコ/名越哲平)は、YART – YAMAHA、DUCATI Team KAGAYAMAに次いで総合3番手で公式予選を終え、土曜日の午後に行われるトップ10トライアルに駒を進めた。
高橋、ザルコ、名越は3人とも予選1回目で新品タイヤを投入。ライダーブルーの高橋とライダーイエローのザルコは、セッション開始と同時にコースインしタイムアタックを図った。だが、どちらも赤旗によりアタックラップを阻まれ、再開後にそれぞれ2分06秒381、2分06秒084のベストタイムを記録している。
2024鈴鹿8耐:予選1・2回目が終了し、トップ10トライアル進出チームが決定。上位グリッドを賭けた決戦は7月20日に実施
ライダーレッドの名越は前のふたりの様子を見てセッション序盤には新品タイヤを使わず、ある程度コース上が落ち着いた中盤に新品タイヤでアタックをする作戦に出る。それが功を奏し、2分05秒980と予選でチーム唯一の2分05秒台をマークし、チームの平均タイム向上に貢献。総合3番手で計時予選を終えた。
予選後、囲み取材に応じたそんなTeam HRC with Japan Postのライダー3人。名越は、予選の作戦を振り返る。
「僕が順番的にいちばん最後だったのですが、ふたりの計時予選の流れを見て、結構赤旗が多くなりそうだと予想しました。ふたりともタイヤのいいところでアタック中に赤旗が出て、良いところを使えずに終わっていました。なので、チームとも相談して、残り10分まで待ち、ある程度コース上が落ち着いたところで、集中してアタックしようということになりました」
「2周に集中してアタックしました。2分05秒真ん中ぐらいまではいくのかなと思っていましたが、思ったほどタイムは伸びませんでした。この2周しかないというのと、HRCだというプレッシャーに勝てずにミスが目立ったと思います。冷静になればもうちょっと出たのかなと思いますが、まずはトップ10に残れることが目標でそれは達成できました」
「同じライダーレッドの上にハルク(SDG Team HARC-PRO. Hondaの國井勇輝)がいて。自分が(全日本ロードで)所属するチームが上にいるのはちょっと悔しいです。でも、耐久では予選はそんなに重要ではなくて、そこにフォーカスしすぎずに決勝を見据えて走れたのは良かったのかなと」
チームのエースである高橋は2分06秒381とチーム内3番手タイムに留まったが、計時予選のタイムはさほど気にしていないようだ。
「とりあえず2分06秒前半はすぐに出ました。その後想像以上にペースあげられなくて、どうすればいいかなと考えながら走っていました。予選は時間も20分しかないけれど、決勝では1スティントで大体1時間ぐらい走るじゃないですか。そのなかで、決勝でどういう風にしたらペースを落とさずに走れるかな、とか考えながらやっていた感じです」と、予選でも決勝のシミュレーションをしていた模様。
「一昨日2分06秒1まで出ていて今日も2分05秒台が出るかなと思っていたので、予想以上にタイムが伸びなかったという部分はあります。でもみんな似たようなタイムで計時予選はクリアできたので、決勝も同じように、みんなで似たようなタイムで走れればいいなと思います」
ザルコは全日本で同じベース車両を使用し参戦している高橋、名越と比べてマシンや鈴鹿サーキットでの経験がないが、金曜日の朝のフリー走行では2分06秒238で総合トップ、さらに予選1回目では2分06秒084と順調にタイムを更新した。
「コースにはどんどん慣れてきているし、楽しめるようになっている。速く良い感じに走れる箇所も増えてきたよ。これは決勝でコンスタントに走るために重要なことだね。タイムアタックでは攻めたけど、思ったよりはタイムが伸びなかった。それでもトップ10に残れたのはよかった」
「まだまだ完璧とは言えないけれど、タイヤの本数に制限があって、それをみんなでシェアしなきゃいけないし、仕方がない。ニュータイヤは1回だけ使えたけれど、まずそのソフトのフレッシュタイヤに慣れる必要があった。タイヤに慣れた頃にはタイヤのおいしいところをすでに逃してしまっていたんだ」
「今日はちょっとアンラッキーで、巧と僕はちょうどタイムアタックの時に赤旗が出てしまって、タイムアタックが途中で終わってしまった。その時最後まで走れていればもうコンマ何秒か詰められたんじゃないかと思う。再開後そのラップを再現しようとしたけれど、タイヤも新品では無くなっていたので厳しかったね」と予選を振り返った。
土曜日の午後に行われるトップ10トライアルには、3人中ふたりのライダーのみが出走可能だ。「チャンスをもらえるならもちろん走りたい」と意気込むザルコと名越に対し、高橋は一歩引いた目で見ている。
「所詮は予選なので、どちらでもいいです。(トップ10トライアルで)タイムを出せって言われたら、もうちょっと出せるとは思いますけど。ただ、ザルコ選手だったり(名越)哲平だったりと、そこに出たい人がいるんで……」
「今日の計時予選のタイムでいったら(ザルコ選手と名越選手の)ふたりじゃないですか。まだどうするのか言われていませんが。ふたりで行くなら、とりあえずもうちょっとトップに迫ったタイムは狙ってほしいなとは思います。あまり相手に余裕を持たせたくないし、気持ち的にも『HRCこんなもんか』と思われたくないのもあるから」
「昨年、一昨年はテツ(長島哲太)がそれを見せてくれてた。今年はテツがいないし、俺も別に一発タイムは得意じゃない。ザルコはやろうと思えばやってくれるし、哲平は柔らかいタイヤは元々好きだと思うので、一発タイムは出しやすいと思う」
Team HRC with Japan Postには3連覇、そしてHonda30勝目への期待がかかる。ライダー3人全員、見据えているものは日曜日19時30分のトップチェッカーただ一つのようで、計時予選も決勝のためのワンステップと冷静な目で見ているようだ。
そうは言っても、トップ10トライアルはやはりライダーにとってもチームにとっても、観客にとっても大事なイベントだろう。昨年は長島哲太が2分05秒329を叩き出し、決勝のポールポジションを獲得した。Team HRC with Japan Postの出走ライダーは未定だが、魂を込めた1周の走りで観客を沸かせることを期待したい。
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