■広いクルマなら避難所の人よりもエコノミークラス症候群の発症率が半数以下
2018年、まだ9月ですが、すでにいくつもの自然災害に見舞われている日本。台風による土砂災害、浸水被害、地震。東日本大震災以来、災害時における役立つクルマが色々とクローズアップされてきました。電力を持つクルマ、水害などにも強いクルマ、車中泊しやすいクルマなど、どんなクルマを持っているといざというときに役立つのでしょうか。
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都市部では、東日本大震災以降、災害時のことを考慮してクルマを購入する人も少なくなく、小型キャンピングカーの需要が増えるといったムーヴメントも起こりました。
今回の北海道地震でも、直後に多くの人が車中泊している様子が報道されましたが、やはり車内をいざという時の避難場所に使うという方が多いようです。新潟大学の研究結果では、ミニバンやワンボックスなど広い車内で避難生活をおくった人は、避難所で暮らしていた人よりもエコノミークラス症候群の発症率が半数以下という驚きのデータも出ています。
ただ、クルマはいざという時のことばかり考えて購入することはできません、やはり日常の使い勝手が大切です。例えば、後部が完全フラットになるハイエースやNV350キャラバンのバンは、セカンドシートの座り心地が悪く、長距離ドライブに向いているとは言えません。一方で、長距離でも快適に移動できるミニバンですが、実はフルフラットにした場合、シートの凹凸が多く快適に寝られるとは言えません。
日常の使い勝手も長期間の生活の快適性もということであれば、ここ数年ブームとなっている簡易キャンパー、いわゆる「車中泊仕様車」がおすすめです。ワンボックスやミニバンをベースに、完全フルフラットになるベッドキットを採用したクルマです。豪華なものになれば、テーブル、冷蔵庫、電子レンジなどを備えています。
このタイプの車ならプライバシーも守られ、長期間の避難生活となってしまっても普通の乗用車に比べ、かなり快適ではないでしょうか。軽ワンボックスを改造したモデルも販売されているので、それなら200万円以下で購入することもできます。
こうした車中泊仕様車は、車内で電化製品が使えるよう、サブバッテリーという車内生活専用のものを積んでいます。ただバッテリーも電池ですので、いずれは充電しなければなりません。キャンピングカーは多くが、外部の電源からサブバッテリーを充電できるようになっているのですが、災害時にはインフラが使えません。
そこで考えたいのが、ソーラー充電システムの装着です。ソーラー充電システムもいろいろな性能のものがありますが、曇りでも半日あればフル充電するというシステムでないと、実際に車中泊に使うのは厳しいようですので、選ぶ時は価格よりも性能重視です。
■家庭用電源も使え、悪路も走れるSUV
キャンピングカーでなくても、災害時に強いとされるEV系車種も現在は多くなりました。中でも注目なのが、三菱自動車の「アウトランダーPHEV」です。
アウトランダーPHEVは家庭や急速充電ステーションでシステム用のバッテリーを充電し、電気で走るというクルマ。高速では2.4リッターエンジンに直結して走ることもできるハイブリッドシステムを採用しています。注目なのは2018年8月のマイナーチェンジにより、100Vコンセントが2口も標準装備となったこと。2口コンセントがあれば、いろいろな電器製品の使用や充電できるはずです。
三菱自動車広報部に話を聞くと、「アウトランダーPHEVのコンセントから供給される電流は、家庭用の正弦波を模した電流にしており、歪み率が低くなっています。そのため、医療機器や工作機械などの精密機器を除けば、ほぼすべての電化製品が使っていただけます」と言います。
ちなみにアウトランダーPHEVは走行用バッテリーがフル充電であれば、1日で約100台分の携帯ガジェットの充電が可能とのこと。今回の北海道地震でも、停電が各地で起きており、携帯(スマホ)が充電できないという報道が多くみられました。ガソリン満タン状態なら約10日間の電力供給が可能ということなので、避難生活では実に心強い味方になってくれます。
このクルマ以外にもトヨタ、日産などからハイブリッド車やEVが出ていますが、アウトランダーPHEVには他車にはないアドバンテージがあります。それは悪路走破性です。
今年の自然災害では道が冠水したり、崩壊したりと、クルマの走行自体が難しくなるシチュエーションが多々ありました。JAFが行った「車両は冠水路を走破できるか」というテストでは、セダンは30cmの水深でまったく走行できないことが分かりました。それに対して、SUVは水深が30?なら30km/hまでの走行が可能で、水深60?でも10km/hなら走れるという結果が出たのです。
SUVやオフロード4WD車は、最低地上高が高いゆえにエンジンが高い位置にあり、水の影響を受けにくいのです。三菱自動車広報部によれば「詳細数値は公表していませんが、このデータ以上の渡渉能力をアウトランダーPHEVは持っており、PHEVシステムの防水性能も十分に持ち合わせています」ということでした。
アウトランダーPHEVはツインモーター4WDシステムを採用していますが、ロックモードを選べば、パートタイム式4WDと同等の悪路走破性を持っているのです。これは災害現場からの脱出ということを考えれば、非常に重要な性能になってきます。
■ランクルやジムニーも災害に強い
トヨタ「ランドクルーザー」や、スズキ「ジムニー」といったモデルも、災害に強い車と言えます。災害時には様々な障害物が道路に散乱し、場合によってはそういった物にぶつかる恐れがあります。そんな時、ラダーフレームやリジッド式サスペンションといった激しい悪路を走るための構造を持つオフロード4WD車であれば、こういった事態において潜在能力を遺憾なく発揮してくれるはずです。
ちなみにジムニーは、豪雪などの災害時に優れた走破性を発揮することが動画サイトなどでもお馴染みですが、車重が軽いため水深30?以上の冠水路の走行は危険性を伴います。道が冠水するような事態では、やはり重量級の車の方がいいようです。
またディーゼル車はエンジン内に水が入ると「ウォーターハンマー現象」を起こして破裂する恐れがありますので、SUVといえども走行する場合はホイールの中心くらいまでの水深が無難でしょう。
暴風に対して、正直なところ強い車というのは、なかなかありません。先日の台風21号の時でも、大型のトラックがいともたやすく倒れてしまいました。車庫の中でも安心できないことも実証されました。暴風の予報が出た時は、被害が少なさそうな地域に避難するのが無難そうです。ただ、強風時においても重量級の4WD車が比較的安定して走れることも知っておきたいポイントです。
災害時には食料や水など、日頃の備えが大切と言いますが、避難生活を考慮して愛車のことを考えておくのも重要な時代になりました。昨今では、様々な車種に車中泊用マットなどが発売されているので、予備電力や予備ガソリンなどと共に、準備を考えておいた方がいいのではないでしょうか。
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