スタイリッシュで質感を高めたアストラ
ステランティス・グループの一員となったオペルと、英国オペルのヴォグゾールは、ブランドの活性化に余念がない。モデルレンジを大胆に見直し、選択肢の合理化を進めつつ、新しいモデルを順調にリリースしている。
【画像】ヴォグゾール(オペル)・アストラ ステーションワゴンとハッチバック 競合とも比較 全110枚
欧州ではCセグメントの定番に当たるアストラも、8代目が2021年に発売され、クラス上位の売れ行きを示している。そして新たにディーラーへは、ステーションワゴンのスポーツツアラーも並ぶことになった。
従来までのアストラにつきものだった、退屈なクルマというイメージは塗り替えられた。ボディはスタイリッシュだし、インテリアもずっとオシャレで質感を高めている。
近年は、SUVやクロスオーバーの人気上昇と反比例するように、ステーションワゴンの販売は低調気味。それでも実用的なクルマとして、一定のニーズは保たれている。
広い荷室にシャープなルックス、軽快な操縦性などを備え、支持するユーザーは英国にも少なくない。同クラスのSUVと比較すれば空力的にも優れており、車重は軽く燃費でも有利。アストラのスポーツツアラーも、支持を集めるだろう。
ハッチバックのアストラの場合、実用性は平均点といったところだが、オペルはスポーツツアラーの重点項目として積載能力を定めた。ホイールベースを57mm伸ばすことで、後部座席の空間や荷室容量がしっかり増やされている。
真っ直ぐに伸ばされたルーフラインも、車内の広さに貢献している。全長はハッチバックより268mmも長い。
拡大した荷室と操作性の良いダッシュボード
電動テールゲートを開くと、597Lという大きな荷室が広がる。家庭用の洗濯機なら、倒して搭載できるだろう。荷室フロアは低い開口部とフラットに繋がり、積み下ろしもしやすい。
リアシートの背もたれは40:20:40の分割式に折り畳める。そうすれば荷室容量は1634Lへ拡大できる。トノカバーが装備され、フロアの下にも収納スペースが用意されている。
前席側は基本的にハッチバックと不変だが、ダッシュボード上部に10.0インチのツインモニターが据えられ、見た目はモダン。インフォテインメント・システムは、ワイヤレスでアップル・カープレイとアンドロイド・オートに対応している。
エアコンなどには、実際に押せるハードボタンも残されており、操作性が犠牲になっていない点も良い。今回試乗したGSラインというグレードの場合、ヒーターとマッサージ機能が内臓されるスポーツシートが付いてくる。ナッパレザーの肌触りが心地良い。
引っかき傷のつきやすそうな、プラスティック製部品もなくはない。だが、インテリア全体の仕立ては好印象だ。
エンジンは、ハッチバックの選択肢と同等。英国には、110psか130psが選べる1.2L 3気筒ターボガソリンと、130psの1.5L 4気筒ターボディーゼル、180psのプラグイン・ハイブリッド(PHEV)の4種類が導入される。
落ち着きがあり快適な乗り心地のPHEV
PHEVは、1.6L 4気筒ガソリンエンジンに110psの駆動用モーターが組み合されたシステム。駆動用バッテリーの容量は、12.4kWhとなっている。充電は、一般的な家庭用充電器で2時間程度で済むという。
最長67kmまで駆動用モーターのみで走行可能で、スピードは135km/hまで対応。目立って速いわけではないが、滑らかな走りを享受できる。CO2の排出量は25g/kmと低く、英国では税金面でも有利だ。
一方、駆動用バッテリーが載ることで荷室容量は81L小さくなる。トリムグレードは、最もスポーティなGSラインしか選べず、価格も高い。現代的なPHEVとして効果を発揮するには、こまめな充電が必要になる。
とはいえ、PHEVはアストラ・スポーツツアラーでは最も速い。車重は一番重いものの、乗り心地には落ち着きがあり快適。走行時の上質さでは、フォルクスワーゲン・ゴルフ・ヴァリアントなど、Cセグメントのベンチマークに並ぶ。
人気は下火傾向ながら、長距離クルージングのメリットで有利なのがディーゼルエンジン。低回転域から太いトルクを発生し、丁度いい速度域で、効率に優れる回転数を保てる。8速ATとの相性も良いようだ。
カラカラというディーゼル特有のノイズは、車内へは殆ど届かない。高速道路を穏やかに流せば、22.0km/L近い好燃費も得られる。最大で1500kgまで可能な、牽引能力もうれしい。
一番人気は130psの3気筒ガソリンターボ
ヴォグゾールが最も英国で売れると予想するエンジンが、130psの3気筒ガソリンターボ。今回の試乗ではドイツのアウトバーンから、のどかな郊外まで様々なルートを走らせてみたが、能力に不足を感じることはなかった。
エンジンは高負荷時にノイズを高めるが、3気筒らしい個性的な音で、不快なほどではない。多くの人が想像するより、うるさくないといっていい。8速ATの仕事ぶりも、その静かさに貢献している。
6速MTも選択できるが、シフトフィールが気持ち良いと感じるほどではない。軽快さより落ち着き側に振られたシャシー特性と相まって、クルマとの一体感を高めてくれるともいえない。
アストラ・スポーツツアラーのシャープなスタイリングから想像するほど、身軽なコーナリングは楽しめないかもしれない。しかし、ファミリーワゴンとして考えれば、特に不満は出ないと仕上がりだと思う。
ヴォグゾール(オペル)・アストラ・スポーツツアラー 1.2ターボ GSライン(英国仕様)のスペック
英国価格:2万5870ポンド(約432万円)
全長:4642mm
全幅:1860mm
全高:1480mm
最高速度:199km/h
0-100km/h加速:10.0秒
燃費:17.5-17.9km/L
CO2排出量:126-129g/km
車両重量:1320kg
パワートレイン:直列3気筒1199ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:130ps/5500rpm
最大トルク:23.3kg-m/1750rpm
ギアボックス:6速マニュアル
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