目指すはグランドツアラー
このモノコックは四輪駆動ドライブトレインとともに、ポルシェが株主となっているクロアチアの新興メーカー、リマック社から供給されるが、彼らのコンセプト・ツーは、よりサーキット向きのセッティングが採用されていることを除けば、その中味はバティスタと非常に強い技術的な繋がりを持っている。
それでも、最新の情報によれば、よりソフトなサスペンションスプリングと、初期設定では35対65というリア優勢のトルク配分を採用するバティスタは、可能な限り滑らかな乗り心地を実現したグランドツアラーを志向しているようだ。
そのミッドエンジンのボディシェイプと、驚くほどの速さにもかかわらず、バティスタにはなにか優雅な雰囲気が感じられるのであり、ニュルブルクリンクのレコードラップ争いに関してウォルマンは「パフォーマンスと冷却の問題から、バティスタが参戦することはない」と話している。
「われわれの目的はタイムアタック用マシンを創り出すことではありません。これは明らかです」と、ニック・ハイドフェルドもウォルマンに同意する。この元F1パイロットはバティスタの動力性能に関するアドバイスを行っており、カラファト・サーキットでは興味深い話を聞かせてくれた。
興味深い見解 答えは来年
「これまで運転したなかで最高のステアリングを備えていたのはマクラーレン570Sでした」と彼は言う。570Sほどの豊かなフィールを目指すのと実現することは別だということはハイドフェルドも理解しているが、それでもこれはそれだけの価値のある目標だ。
フロントに搭載されたモーターを休止して、リア輪だけを駆動するモードを選べば、新たなドライビング体験を体験することになるが、この状態でもバティスタは1217psものパワーを発揮している。
まさにこれがハイドフェルドがどうしても実現したいと考えているバティスタのキャラクターだが、ウォルマンはその理由が理解出来ないと話す。もし、ステアリングがフルロックの状態になく、タイヤにはまだグリップが残っているのだとすれば、それ以上パワーがあってもさらなる加速や機敏さを得ることは出来ないというのだ。
まさに興味深い見解であり、さらに、トルクベクタリングや回生ブレーキシステム、そしてロードカーとしては空前絶後のパフォーマンスを破綻することなくまとめなければならないという複雑さが、バティスタ開発の過程ではさまざまな苦難をもたらすことになるだろう。
それでも、このクルマがまったく新たなEVのドライバーズカーなのか、単なるスペック上の怪物に過ぎないのか、来年にはその答えが明らかとなる。
番外編1:フォーミュラEが練習台?
例えそれがSF90ストラダーレだったとしても、フェラーリがこのクルマを予約した未来のオーナーに、実際のF1マシンを運転させることなどないだろうが、マヒンドラの子会社となったことで、ピニンファリーナでは実際にそうした機会の提供が可能になっている。
確かに、ホットハッチ程度までパワーを落とした第1世代のフォーミュラEと聞けば、913psを誇るハイブリッドパワートレインを積んだF1マシンよりは、担当者の心労も多少は軽減されるかも知れないが、それでもFIAのシングルシーターとしては頂点に君臨するマシンのステアリングを握るなど、間違いなく貴重な機会でしかない。
では、実際にはどんな感じだろう? 簡単に言えば、驚くほど純粋な体験だ。
パワーステアリングやトラクションコントロール、さらにはアンチロックブレーキなど持たず、極端にロック・トゥ・ロックの少ないステアリングと公道仕様のタイヤによってトルクがドライバーを圧倒し、簡単にスピンしてしまう。
さらに、エンジンサウンドが聞こえないことで、こうしたキャラクターがさらに顕著なものとなっている。
内燃機関を積んだクルマであれば、リアタイヤがグリップを失えば、タイヤの空転に伴いエンジン回転が一気に上昇するサウンドが聞こえてくる。
ドライバーはこうしたエンジン音の変化によってマシンの状況を感知することができるのだが、2018年仕様のマヒンドラM4エレクトロや、その他すべてのフォーミュラEマシンでこうしたサウンドを聞くことは出来ないのだ。
われわれのカラファト・サーキットでの短時間の走行もそうだったが、すべてのフォーミュラEレースでは習慣としてピットでタイヤウォーマーが使用されることはなく、マシンの取扱いには細心の注意が求められる。
マーケティング面を除けば、フォーミュラEとバティスタの関連はそれほどなく、バッテリーマネジメントシステムとエアロダイナミクスがその主な共通点だ。
結局のところ、バティスタのほうがより速く、複雑で、より優れた能力を備えたマシンだと言うことだろう。
番外編2:先駆者たち
メルセデスSLS AMGエレクトリックドライブ
いまでは0-100km/h加速3.9秒というタイムを聞いてもまったく驚かないが、2013年当時、このクルマは史上最速の量産EVだった。
各輪に設置されたモーターによって見事なダイナミクス性能を誇るとともに、瞬時のトルク配分の可能性を証明することにも成功していた。
リマック・コンセプト・ツー
クロアチアが誇るパイオニア、リマック社がバティスタのベースを提供しており、このクルマにはバッテリーパックを構造部材として一体化させた同じカーボンファーバー製モノコックが採用されている。
この巨大なモノコックはサスペンション用サブフレームが必要ないように設計されている。
ピニンファリーナ・セルジオ
ピニンファリーナ自身がスタイリングを担当したフェラーリ458イタリアをベースに、2013年、セルジオは現代の美しさを表現するために生み出された。
確かに4.5L自然吸気V8エンジンは失われたかも知れないが、新型バティスタにもセルジオと同じような巨大なグリルが設けられている。
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