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低けりゃエライで当然「違法改造」だらけ! 「ノーサス」まで誕生した「シャコタン黎明期」の衝撃

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低けりゃエライで当然「違法改造」だらけ! 「ノーサス」まで誕生した「シャコタン黎明期」の衝撃

クルマ好きの若者たちが熱狂した’70~’80年代のシャコタン文化

 街道レーサーと呼ばれた改造車が大量に発生した1970年代から1980年代。熱き昭和を代表する「シャコタン」は競い合うように過激さを増し、最終的にはノーサスと呼ばれる究極の姿へと行き着いたのである。ここでは「シャコタン」の伝説とともに、狂乱の昭和を振り返ってみたい。

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性能を追求したローダウンとは違う破天荒なシャコタンカスタムとは!?

 カスタムの王道でありスタイリングを精悍に引き締める「ローダウン」は走行性能を向上させ、よりシャープな走りが楽しめる手法。だが、昔の「シャコタン(車高短)」と現在の「ローダウン」では何が違うのだろうか……、という疑問を持つ人も多いはずだ。基本的にローダウンは、専用設計のスポーツサスペンションを使用し、シャコタンは自己流の荒技で行われているのが大きな違いである。

 最近はローダウンキットと呼ばれるサスペンションへと変更し、メーカーが定めた標準的な乗り心地からよりスポーティな性能を手に入れることが目的だが、一部で「違法改造」が当たり前のように行われていた1970年代中頃から1980年代は狂気的な時代でもあった。

 当時はレーシングカーのように改造することがカッコイイとされ、ハコスカ(KPGC10)やS30フェアレディZ、ブルバード510などから始まり、1980年代には富士グランチャンピオンレース(通称:グラチャン)のサポートレースとして始まった、スーパーシルエットシリーズで活躍したシルビアやスカイラインRSターボなどの派手なスタイルを真似るのがトレンドになっていた。とくにスーパーシルエットレースにエントリーしていたモデルは、大きなフロントスポイラーやリヤウイングが特徴で、千葉県、茨城県を中心にレースカーを模した「チバラギ仕様」として大きなムーブメントを起こしたのである。

強度なんて関係なし「加工ホイール」でリム幅を延長

 シャコタンの始まりは、レーシングカーを模したことでもあるのだが、そこにはアルミホールのインチ不足も大きな要因であったことは間違いない。現在のように「インチアップ」という概念はなく、純正ホイールと同サイズの13インチや14インチに変更するのが常識。15インチが最大だった時代にレーシングカーを真似た扁平率の低いタイヤを履くとなると、タイヤの外径が小さくなるのは当たり前のこと。

 さらにワークスと呼ばれる巨大なオーバーフェンダーを取り付ける場合には、10Jや11J、12Jなどのリム幅がワイドなホイールが必要となり、苦肉の策として純正のスチール製ホイールを輪切りに切断。中央部分に曲げた鉄板を溶接することでワイド化を図る、強度を無視した「加工ホイール」も登場した。現在のようにワイドなアルミホイールが存在しなかった時代の産物である。

タイヤとフェンダーの隙間を埋めるべくノーサス仕様が横行

 そして純正サイズのホイールに扁平タイヤを装着すると、フェンダーとのクリアランスが大きくなり「カッコ悪いから車高を下げよう」と考えるのは当然のこと。そうなると社外のローダウンキットが市販されていない時代では、ノーマルのスプリングを切断して車高を下げることになるのだが、そこには「性能」や「乗り心地」などが入り込む余地はなく、「スタイル重視」の違法改造が主流になっていく。

 その改造方法も無茶苦茶なもので、サンダーや金ノコでスプリングに切れ目を入れて凸凹の激しい踏切を全開で走り抜け、衝撃でスプリングを折る「特攻型」、仲間や先輩が働いている鉄工所や板金工場で酸素溶接のバーナーでスプリングを炙ってぶった切る(切断する)「炙り型」などの行為が日常茶飯事で行われていた。整備の知識がない輩はストラットを分解するときにスプリングコンプレッサーを使うことを知らず、ボルトを緩めた瞬間に縮まっていたスプリングが跳ね上がって前歯を折った、あごの骨が砕けたなどの都市伝説も多数生まれたのである。

ヤマンバと同じ志向で若者たちはみな違法改造に勤しむ

 シャコタン全盛期には改造車を掲載する、不良が愛読した2大自動車雑誌に愛車の写真を投稿し、掲載されることが大きなステイタスとなり、そのために自制が効かなくなった改造は「ノーサス」へと辿り着く。ノーサスと呼ばれてはいるが、決してサスペンションを外してしまったものではなく、ノーマルのスプリングを2巻き、2巻き半、3巻きカットして車高の低さを競い合った結果、コイルスプリングを外して極限まで車高を下げたのが「ノーサス」。これにより当時の改造車はまともに走れない状態になってしまった。

 これも、読者モデルとして雑誌に載りたいがために「小麦色」→「ガングロ」→「ヤマンバへ」と進化を遂げたギャルと同じ心理なのかもしれない。競い合う気持ちがエスカレートし、最終的にはクルマとしての機能を果たさない「ピリオドの向こう側」まで行き着いてしまったのである。

 あまりにも過激なスタイルとなった違法改造車は警察の取り締まりにおいて「故障」と印刷された赤い紙が貼られ、車両の没収や強制廃車などの法令措置が取れることもあった。逆に「故障」のスッテカーが闇で市販され、フロントウインドウに故障のステッカーを張っていることが「改造車」のステイタスになった狂気の時代だ。

シャコタン文化があったからこそ高度なローダウンが繁栄した

 シャコタンと呼ばれたクルマの乗り心地は最悪で、路面からの衝撃を吸収できないクルマは凹凸を乗り越える度に「シャコタン切り」と呼ばれる蛇行運転が強いられ、踏切やキャッツアイで「亀」と呼ばれるボトムを擦った状態で動けなくなることも多かった。これもスプリングをカット、または外してしまったためにスプリングが伸びず、少しの段差でも動けなくなってしまう「シャコタンあるある」なのだ。

 当時、横浜銀蝿の「羯徒毘璐薫’狼琉(かっとびロックンロール)」の歌詞で「跳ねるライトがバリバリ」と表現されたように、路面の凹凸を収拾できないボディがバウンドしてしまい、つねにボヨヨン、ボヨヨンとした縦揺れをし続け、夜中に仲間とラーメンを爆食した帰り道に胃袋が悲鳴を上げてしまい路肩に仲良く並んで逆噴射したという実話もある。また当時のシャコタンに乗っていた若者には「胃下垂が多かった」というのも都市伝説のひとつである。

 現在では考えられないような違法改造がまかり通っていた狂乱の昭和。今のようにSNSやYouTubeなどがなかった時代、自動車雑誌やマンガ、クチコミで日本中へと伝播しながらシャコタンの姿はより過激さを増していった。冷静になって当時を振り返ればスプリングカットやノーサスのクルマがわがもの顔で公道を走り回っていたとことは恐怖でしかないが、その黒歴史が日本を代表する自動車産業の礎、高度なチューニング技術の発展に貢献したことも事実ではないだろうか。

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