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【ヒットの法則334】シトロエンC4ピカソはフランス車らしいソフトで粘りのある走りが持ち味だった

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【ヒットの法則334】シトロエンC4ピカソはフランス車らしいソフトで粘りのある走りが持ち味だった

2007年5月、シトロエンC4ピカソが登場した。C4をベースとした3列7人乗りマルチミニバンは、広大な視界、リアのエアサスペンションなど、内容はきわめて斬新。日本仕様は2L直4エンジンに4速ATと6速セミATが組み合わされて、同価格で登場したことも話題となった。上陸後さっそく行われた国内試乗会から、その詳細を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年7月号より)

何やら楽しい場所が見えてくる、心が幸せになるミニバン
Cセグメントベースの3列シート7人乗りミニバンといえば、日本車に敵うものなどなさそうである。機能、燃費、信頼性、そしてコストパフォーマンス。確かに生活必需品道具として割り切るのであれば、日本のミニバンは、こと日本で乗るのであれば、間違いなく最高であろう。

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しかし、だ。今回、日本の路上で改めてC4ピカソに乗ってみて、私はこんなことを感じた。「走っているだけで、その先に何やら楽しい場所が見えてくるような、そんな期待で心が幸せになるミニバンって、日本車にあっただろうか……」。

仔細に眺めれば眺めるほど、いろんなデザインが見えてきて興味のつきないスタイリングは、好みの問題だから、この際、脇に置こう。天気のいい日に実際に乗り込み、特徴的なパノラミック・フロントウインドウを「全開」にして走り出すと、他のミニバンでは決して味わえない世界が見えてくる。何せ、通常の倍、上方に向かって70度もの視界が広がっているのだ。

まるでリゾートに向かう大型観光バスのような視界である。緑の中の一本道を走っていると、空に向かって続く道が見え、あの峠を、山を超えれば自分の好きな海のリゾートが見えてきそうな、そんな気分になる。

もちろん、陽射しがまぶしければ、遮ることだって可能だ。工夫されたサンバイザーを利用すれば、普通のミニバン同様の、上方35度の視界に早変わりする。

心をわくわくさせるのは、何も視界が良好という理由だけではない。ごく低速域こそ若干ばたつく印象があるものの、速度がある程度乗って一定速になってからのクルーズでは、ミニバンらしからぬソフトで粘りのある乗り味を見せる。この気持ちよさと安心感が、想像をかき立てるのかも知れない。

4速ATと6速セミATを設定、車両価格はともに345万円
同価格でコンベンショナルな4速ATと6速ロボタイズドミッションの2種類を用意したのは多様な日本のユーザーを考えてのことだろう。仕様やメカニズムはまったく同じだ。

4速AT仕様はいたって普通の使い勝手である。出足も十分に鋭い。変速時にパワーのロスを感じてしまうが、ミニバンなのだからアクセルペダルを踏み込むことがそもそもいけない。もう1速あれば言うことなしだが。

6速セミATもよくできている。まず、微低速時に気になる、ぎこちなさがうまく解消されている。さらに、パーシャルスロットルで一定加速をする限りロボタイズドミッションにありがちな不快感はない。フル加速などでは前のめりになりがちだが、そういう走り方をするときは、MT仕様だと思って(実際中身はそうだが)、アクセルペダルをタイミングよくゆるめるとうまくいく。そして、パドルシフトを有効に使うのがおすすめだ。パドルシフトの柔らかいタッチもこのクルマにとても似合っている。問題は駐車時など微低速時にクリープがないこと。ATに慣れてしまった人は違和感を覚えるかもしれない。

しかし、4速ATよりもきびきびとした加速が楽しめるし、パワーロスは少なく、高速クルージングは6速で余裕しゃくしゃく。燃費もいいはずだ。走りの印象を総合すると、高速での安定感では、フランスのライバル、ルノーグランセニックに一歩譲る。それでも、街中から郊外路では、C4ピカソの乗り心地に軍配が上がるだろう。

気持ちが弾む理由がもうひとつあった。それはインテリアのデザインと作り込みの良さだ。ステアリングホイール周りに必要な操作系を集中させているのはハッチバックのC4と同じ考え方。最初はコラム上に、にょっきり生えたシフトレバーや電制パーキングブレーキなどの使い勝手に戸惑うだろうが、慣れると実に使いやすい。

インテリアのあり方については、隅々までデザイナーの目が行き届いているというべきだろう。ダッシュボード全体の、シンプルで統制のとれたモダンなデザインには心が奪われてしまう。マテリアル、質感の出し方、カラー、すべてがひとつの意思で貫かれているから、見るものを気持ちよくさせるのだ。いくらインテリアデザインにこだわっていても、ひとつでも妥協してしまうと、途端にチグハグに見えてガッカリさせられるもの。このクルマのインテリアにはそれがまったくない。レザーシートを奢った仕様は、もうクラスを超えたラグジュアリーささえ覚える(日本仕様は遅れて設定予定)。

そう思って、もう一度エクステリアデザインを眺めると、いっそう味わい深く見えてくるから面白い。ライト類やウインドウグラフィックスといったディテールに個性を注入するのは最近のシトロエンの特徴で、それでいてひとつひとつの個性が喧嘩せず、全体的には破綻なくまとめられている。ミニバンゆえ、全体のフォルムは他と同類になってしまうが、細部のこだわりとそのまとめ方は、ユニークきわまりないものだ。

ミニバンはファミリーカーである。だから生活に密着した道具である必要がある。それはそうだろう。けれども、それじゃあまりに画一的すぎやしないか。1.8mを超える車幅は確かに辛いが、そんな物理的制限を気にしなくていいオシャレなパパにはぜひC4ピカソにチャレンジして欲しい。我が家が大家族なら間違いなくこれだ。

2列目、3列目シートの乗り心地もしっかりと考えられている。特に3列目は見た目より座れてしまうから驚く。デザインだけではないのだ。(文:西川淳/Motor Magazine 2007年7月号より)



シトロエン C4ピカソ 2.0エクスクルーシブ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4590×1830×1685mm
●ホイールベース:2490mm
●車両重量:1630kg (6速AMT 1610kg)
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1997cc
●最高出力:143ps/6000rpm
●最大トルク:200Nm/4000rpm
●トランスミッション:4速AT(6速AMT)
●駆動方式:FF
●車両価格:345万円(6速AMT仕様も同価格:2007年)

[ アルバム : シトロエン C4ピカソ はオリジナルサイトでご覧ください ]

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