フィアットが2022年2月10日に、ベストセラー商用車である「DUCATO(デュカト)」をキャンピングカーのベース車両として正式導入することを決定した。
日本では以前からキャンプ人気の影響でキャンピングカーが人気だが、コロナ禍の影響もあり、その人気がさらに上昇している。フィアットは、そこに目を付けた格好だ。
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しかし、日本にはハイエースなど人気のベース車などもあり、欧州でシェア7割を誇るデュカトとはいえ、日本でも販売台数を伸ばす見込みがあるのだろうか? フィアットの狙いと、日本でどのくらい受入れらそうか? などについて考察していきたい。
文/桃田健史、写真/FCAジャパン
■日本導入が発表されたデュカトとはどんなクルマなのか?
キャンピングカーのベース車両として導入されることが決定したフィアット デュカト。ヨーロッパで需要が多いベストセラー商用車だ
FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)が、また日本で面白いことを始めた。今度のターゲットは、最近流行のキャンピングカーだ。
とはいっても、キャンピングカーそのものを輸入し販売するのではない、というところがミソなのだ。
では、詳しく見ていこう。
FCAジャパンは、ジャパンキャンピングカーショー2022(2022年2月10日~13日、於:千葉県幕張メッセ)にブースを出展し、ジープ「グラディエータ―」と並んで、フィアット「デュカト」を公開した。
デュカトは、欧州で需要が多い中型の商用車だ。直近の2020年と2021年ではベストセラーとなり、欧州ではこのセグメントでシェア7割を誇る。グローバルでも人気が高く、コロナ禍で各国の経済が冷え込んだ2020年でも販売総数は前年対比8%増の約15万台を記録しているほどだ。
2022年モデルとして日本に導入されるのは、全長とホイールベースに違いのあるL2H2、L3H2、L3H3の3種類。
最も小さいL2H2のボディ寸法は、全長5413×全幅2050×全高2524mm、ホイールベースが3450mmで、L2H3はハイルーフ仕様となる。
エンジンは排気量2287ccの直列4気筒 MultiJet3ディーゼルターボで、最高出力176.8psで最大トルクが45.9kgm。駆動は前輪駆動のみで、トランスミッションはトルクコンバーター式の9速AT搭載のほか、先進ドライバー支援システム(ADAS)も標準装備する。
筆者はジャパンキャンピングカーショー2022を現地取材して、デュカトの実車を見たが、イタリアンなデザインテイストが魅力的だと感じた。
キャビンスペースにも足を踏み入れてみたが、ハイル―フのL3H3の場合、全長3120mm×全幅1870mm×1932mmで、かなり広々とした個室といった雰囲気だ。とはいっても、商用車感が強すぎて、このままの状態では荷物の配送車に過ぎない印象だ。
■種車(たね車)による新しいビジネスモデル
FCAジャパンが販売するのは未架装状態の車両。デュカト専用の販売ネットワーク参加者がユーザーの要望に応じたオリジナルキャンピングカーを販売する
FCAジャパンにとって、今回のショー出展の最大の目的は、エンドユーザーに対するアピールよりも、業者向けの新事業の提案を優先していた。そのため、展示スペースにはほかの出展関係者の多くがデュカトの実車確認に来ていた。
発表によると、デュカト専用の販売ネットワークを国内で構築するというのだ。この販売ネットワークとは、オリジナルキャンピングカーを製造販売する車両架装を専業企業と、既存のFCAとグループPSAジャパンの正規ディーラーなどだ。
現在、FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)と、グループPSAが融合しステランティスという企業体になっており、デュカトはステランティスの経営資源をフル活用することになる。
FCAジャパンが販売するのは、未架装の状態のデュカトであり、それをベースにデュカト販売ネットワーク参加者がユーザーの要望に応じたオリジナルキャンピングカーを販売できるという仕組みである。
こうしたベース車は、日本語では「種車(たねしゃ)」と呼ばれるビジネス領域だ。実は、日本にすでに輸入されている欧州系キャンピングカーのなかには、デュカトを種車としてカスタマイズされた完成車が存在する。
FCAジャパンとしては、日本での生活環境によりマッチしたさまざまなカスタマイズを、種車の車両補償をしっかり保った上で行うことになる。
現在の国内メーカーでは架装を前提とした販売は行っていない。デュカトの架装前提の販売ネットワークは斬新なアイデアといえる
日本メーカーの種車では、トヨタ「ダイナ」の「カムロード」、また「ハイエース」が一般的だが、トヨタ本社が直接キャンピングカー事業に関与しているわけではない。
あくまでも、トヨタ正規販売店における新車補償の範囲で行う販社架装、またはアフターマーケット事業者が自社で独自補償するかたちの架装のために種車を使うという事業形態だ。
また最近では、軽自動車ベースの軽キャンの需要も高まっているが、ホンダ「N-VAN」やダイハツ「アトレー」などで、キャンピングカ―へも対応できるようなオプションパーツの設定はあるが、メーカーとしてキャンピンカー架装事業は手掛けていない。
このような業界実状から、FCAジャパンによる架装を前提としたデュカト専門販売ネットワークは、とても斬新なアイデアだといえるだろう。
デュカトのメーカー希望小売価格は469万円からで、2022年下半期からのデリバリーを予定している。
■ライフスタイルの変化によって、さらなる需要拡大の可能性
コロナ禍が続く中で、人との接触を回避できる『ひとりキャンプ』が注目される中、キャンピングカーにも熱い視線が注がれている
実は、筆者自身も現在、ハイエースベースのキャンピングカー仕様車を日常的に使用しており、昨今のキャンピングカー市場の動きを定常的に観察している。
キャンピングカーブームと言われて久しいが、キャンピングカービルダーやディーラーが加盟する日本RV協会によると、過去10年間で日本国内でのキャンピングカー保有台数は右肩上がりが続いている。
2012年は8万500台、2016年には10万台を超え、直近の2021年は13万6000台まで成長している。2021年の新車と中古車の販売総額は前年対比109%の635億4000万円となった。
自動車産業全体でみれば、市場規模はまだまだ小さいが、客単価が高く、またカスタマイズによる周辺分野ビジネスへの広がりが大きい分野だ。
いわゆるチューニングカー市場が冷え込んでいるのとは対照的に、キャンピングカーは事業者がしっかり儲けることができるアフターマーケット事業だともいえるだろう。
業界関係の各方面に話を聞くと、「コロナ禍となって、ブームはさらに加速したが、最近は市場の動きが成長基盤の上で安定してきた」という指摘が多い。
確かに、三蜜を避ける、リモートワーク、新しいライフスタイルといったキーワードのもと、コロナ禍でキャンピンカーに対するメディアの露出が急激に増えた。
テレビ番組やYouTubeでは、さまざまなタレントがキャンピンカーを活用する様子が流れた。こうして、コロナ禍前までの”特殊なクルマ””庶民には手が届かない高価なクルマ”といった、乗用車ユーザーのキャンピングカーに対する見方がかなり変わった印象がある。
既存のデュカトをベースとしたキャンピンカーは1000万円超の高級車だが、富裕層を中心に着実に販売が伸びている状況だ。
FCAジャパンの試みが弾みとなり、この領域がさらに需要が増える可能性は充分にあると感じる。
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みんなのコメント
サイズはさておき、そもそも既存のフィアットディーラーでは販売も整備・修理もしないと言っている。
買ったが最後、そのあとどうやって維持するのか。