多くのクルマ好きに刺さりまくっている映画といえば『ワイルド・スピード』シリーズをおいてほかにないはずだ。多くの日本車が登場し、またスタッフや俳優が日本を訪れるたびに話題となっている。5月には最新作『ワイルド・スピードX』(仮)の公開も予定されている。
今回は人気俳優ポール・ウォーカーが最後に出演した『ワイルド・スピード SKY MISSION』をご紹介しよう!
最新作公開前にもう一度ブライアンに会いたい!! ポール・ウォーカー最後の出演作「ワイルド・スピード SKY MISSION」
文/渡辺麻紀、写真/NBCユニバーサル・エンターテイメント
(C) 2015 Universal Studios. All Rights Reserved.
■ワイスピ二枚看板のひとり、ポール・ウォーカーの遺作
ブライアン・オコナー役で3作目を除く全作に登場していたポール・ウォーカーは、本作撮影期間中に不慮の事故で亡くなった。本作はポールの遺作、ポールに捧げる作品として上映された (C) 2015 Universal Studios. All Rights Reserved.
2023年の車ファンがもっとも楽しみにしている映画と言えば、5月に日本公開予定の『ワイルド・スピードX』(仮)。メインのシリーズは全11作で(一応)終わりと発表されていて、本作と11作目が前後編になっているのではないかというウワサもある。
監督は、ジェイソン・ステイサムのカーアクション『トランスポーター』シリーズの2作を手掛けたルイ・レティリエというのも期待が高まってしまう理由のひとつだ。
その10作目を観る前におさらいしておきたいのがシリーズの過去作なのだが、今回は7作目の『ワイルド・スピード SKY MISSION』(2015)をピックアップした。
本作を選らんだ理由は、ドミニクことヴィン・ディーゼルと同じようにシリーズの“顔”だったブライアンことポール・ウォーカーの遺作となったから。そのつもりで観ると非常に感慨深い作品になっているからだ。
また、本作でもうひとつ重要なのは、デッカード・ショウを演じるジェイソン・ステイサムの本格的参入だ。
前作の『EURO MISSION』(2013)の最後、それもエンドクレジットが流れ始めてから、東京でドムの仲間ハンの車を猛追して彼を殺し(!?)、ドムのものと思われる携帯に「すぐにオレを知ることになる」と意味シンなメッセージを残す謎の男として顔を出す。
本作では冒頭、意識不明状態で入院中のオーウェン・ショウ(ルーク・エヴァンス)の元を訪れる男として登場し「兄のオレがカタをつけてやる」と復讐を宣言。ここでやっと彼のキャラクターがオーウェンの兄、デッカードであることが判明する構成になっている
ドムたちは“神の目”と呼ばれる監視プログラムと、それを作ったハッカーを犯罪組織から奪還するのが仕事なのだが、ことあるごとにデッカードが現われ、ドムたちに復讐しようとする。
ということは、ドムたちはふたりの敵と闘わなければならず、その分、アクションもてんこ盛りだし、登場する車の数もハンパない。破壊される車の数は軽く230台を超えるとも言われているほどだ。
■過剰化するアクション! 第1作の強盗団から世界を救うスーパーチームへ
アブダビを舞台に派手なカーアクションを展開するのがWモーターズのライカン・ハイパースポーツ。Wモーターズはアラブ初のスーパーカーメーカーなのでこのチョイスはピッタリ! (C) 2015 Universal Studios. All Rights Reserved.
アクションはビルを破壊したり、家一軒を爆破するという定番系から、車をパラシュートで落下させるというこのシリーズだからこその見せ場もある。ドムの仲間たちがそれぞれ車に乗り、ハッカーを奪還するためアゼルバイジャンの山岳地域に落下するのだ。
このシーン、実際に車を落下させ、その様子を、頭にカメラを装着したスタントマンが同時にダイブして撮影したという、まさに手に汗握る“スカイミッション”なシーン。実際にやっているからこその大迫力だ。
もうひとつ、アクロバティックなスカイ系のカーアクションが、アブダビの有名な高層ビル群、エティハド・タワーズ。5棟ある高層ビルのうちの3棟を使って、ビルからビルへと車で飛び移るという、これもまた前人未到のスカイミッションと呼びたくなるアクションをやっている。
このアクションシーンで注目したいのはスカイミッションする真っ赤な車。これがWモーターズのスーパーカー、ライカン・ハイパースポーツなのだ。1台が340万ドル(今の日本円でおよそ4億4000万円!)で世界に7台しかないというとんでもなく高価でスペシャルな車。
これが最後は粉々になってしまうのだが、さすがに酷使するシーンはライカンっぽく仕立てたポルシェで代用したらしい。
Wモーターズはアラブ諸国初のスーパーカーメーカーなので、このアブダビのシーンにはとてもマッチした車ということになる。
そこで、そのほかにどんな車が登場するのかチェックしてみよう。
まずは冒頭に登場するステイサム扮するデッカードから。彼が弟の病院から帰るときに乗っているのはジャガーFタイプRクーペ。
同じくドミニクとの勝負で正面衝突する車はマセラッティのギブリ、ロスでドミニクと再会して車対決するときはアストンマーティンDB9。イギリス人だからなのか、ドミニクと比べるとヨーロッパ系の高級車が多い。
ストーリーのカギとなるプログラム「ゴッド・アイ」を開発したラムジーを救出するため空から急襲をかけるファミリー。こんな場面でもドムはアメリカン・マッスルカーを選ぶ (C) 2015 Universal Studios. All Rights Reserved.
一方、ドミニクの車はプリムスのバラクーダ、同じくプリムスのロードランナー。この車がデッカードのマセラッティと正面衝突する。アブダビとロスではダッジ チャージャーに乗っている。
またブライアンの車は、ファミリー向けのクライスラー タウン&カントリー、スバルのインプレッサ、アブダビではマクラレーン、ロスに帰ってからは日産のR35 GT-R、そして最後はトヨタスープラ。彼が青いGT-Rに乗るのは1作目、5作目の『MEGA MAX』(2011)に続いて3度目だ。
こうやって並べてみると、シリーズの1作目を思い出させるような車のラインナップ。近年は高級車にシフトした印象のシリーズだが、このときはまだ初心を忘れていなかったのか。あるいは、ウォーカーへの配慮だったのかもしれない。
ミアとの間に生まれた息子が遊んでいるミニカーのデザインはブライアンの愛車、GT-Rがベースになっていたりもするし、そもそもラストシーンでドムとブライアンが乗っているのはドムがダッジ チャージャーで、ブライアンがトヨタのスープラと、ふたりの出会いを彷彿とさせるチョイス。
しかもそれが……という部分は未見の人には伏せておくが、ファンなら目頭が熱くなってしまうだろう。
●解説●
ショウの犯罪組織から恋人のレティ(ミシェル・ロドリゲス)を奪還したドミニク(ヴィン・ディーゼル)だったが、彼女は記憶を失っていた。そんな彼に悲報が届く。東京にいた仲間のハンが何者かに殺されたというのだ。
その犯人はドミニクたちが痛めつけた犯罪組織のボス、ショウ(ルーク・エヴァンス)の兄デッカード(ジェイソン・ステイサム)だった。
デッカードの復讐を受けて立つドミニクだったが、そこにミスター・ノーバディ(カート・ラッセル)と名乗る米国政府の男が現われる。犯罪組織に拉致されたスゴ腕のハッカーと、彼女が開発した監視プログラム“神の目”を奪還して欲しいというのだ。
監督はジャスティン・リンから、『死霊館』シリーズ等のホラー映画でお馴染みのジェームズ・ワンにバトンタッチ。興業的にもシリーズ最高の数字を叩き出したが、やはりそこにはポール・ウォーカーの遺作という要素もあったに違いない。
本作撮影中の2013年11月30日、自動車事故でウォーカーが亡くなったことを知った関係者は12月1日に撮影を中止。監督のワンと映画会社のユニバーサル幹部はすぐに会議を行い、ウォーカーの思い出に敬意を払いつつ撮影を続投することを決定したという。
この時点で撮影は半分が終了していて、残り部分の脚本をリライトし撮影を再開。過去作やアーカイブから映像を引用したり、ウォーカーの実の兄弟ケイレブ&コディに代役を頼んだりして、どうにか完成にこぎつけた。
完成版を観る限りではそういう苦労は伝わらず、ごくごく自然にウォーカーが演技をしているのだから凄い。全米公開は当初、2014年7月11日に予定されていたが、最終的には2015年4月17日に延期された。
本作、ワールドワイドで15億1000万ドルというシリーズ最高の数字を叩き出し、これはまだ破られていない。
また、ジェイソン・ステイサムの参加に関しては、シリーズのプロデューサーも務めるヴィン・ディーゼルの意向が大きい。『EURO MISSION』では当初、犯罪組織のボスをステイサムに演じて貰いたかったのだがスケジュール等の都合が合わず、代わりにルーク・エヴァンスが登板。
諦めきれないディーゼルは、彼の兄として最後にカメオ出演してもらい、本作につなげたというわけだ。
ステイサムとは仲良しらしいディーゼルなのだが、ご存じの通りドウェイン・ジョンソンとは不仲。本作でも共演シーンは限りなく少ないのみならず、実際に顔を合わせなければいけないシーンではデジタルを使用するという徹底ぶり。
プロデューサーでもあるディーゼルはSNSでジョンソンに『X』への出演をオファーしたものの、ジョンソンはそれでも拒否したというのだから、その確執は深い。『X』でジェイソン・モモアが出演しているのは、もしかしてジョンソンの代わり?
* * *
『ワイルド・スピード SKY MISSION』
Blu-ray:2,075円(税込)/DVD:1,572円(税込)
4K ULTRA HD+Blu-rayセット:6,589円(税込)
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
(C) 2015 Universal Studios. All Rights Reserved.
※2023年1月の情報です
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