EVのシェアがなかなか伸びないが、そもそも500万円オーバーなんて値段を付けられたって簡単に買えるわけがない。日本にはもっと手頃なEVが必要だと思うのだが、その理想を考えれば考えるほど、かつて存在したトヨタのコンパクトカー「ラウム」が正解に思えてくる。トヨタは一考してくれないだろうか?
文:ベストカーWeb編集部/写真:トヨタ自動車
こんなEVならバカ売れ!? えーマジか? いまほしい電気自動車を突き詰めると[トヨタ ラウム]になっちゃうのよ!
■たった4mの全長に夢と工夫をテンコ盛り!
1997年に登場した先進的なコンパクトカー「ラウム」
まず「トヨタ ラウムとはどんなクルマか?」を説明すると、1997年に登場した背の高いコンパクトカーだ。ベースとなったのは当時のターセル/コルサ/カローラII(いわゆるタコII)のプラットフォームだが、ラウムはその車台でまるで違うパッケージングを実現させた。
具体的には、まず全長がわずか4m。この限られた長さの中でホイールベースを2520mmと限界まで長くとり、かつ乗員をアップライト(直立気味)に座らせて乗員と荷物のためのスペースを作り出した。アップライトな姿勢だと頭部周辺が窮屈に感じるから天井は高くとる。その結果、車高は1500mmを超えるものとなった。
さらにラウムは、乗り降りを楽にしたいと考えた。まず前席。ドアヒンジの位置を工夫してドアの上側が下側に対してより広く開くようにした。これで上半身の乗り込みががぜん楽になった。さながら「逆シザーズドア」といったところか。
続いて後席。こちらには両側ともスライドドアが採用された。この時代、大型ミニバンでも片側スライドが当たり前だったから、画期的な決断である。しかも窓ガラスもハメ殺しではなくれっきとしたパワーウインドウだったのだ。
ちなみにこのドア、2代目ラウムでさらに進化する。助手席側はセンターピラーをフロントドアに埋め込んでしまい、前席ドアと後席スライドドアが柱抜きでまるごと開く「パノラマオープンドア」という仕組みを採用したのだ。
この他にもラウムは、普段の使い勝手を考えたあつらえがなされていた。たとえばバンパーは万一こすってしまった時の費用を抑えるため上下2分割式(初代)。シフトレバーにはコラムシフトを採用し、前席の横方向ウォークスルーも実現していたのだ。
■まさにEVのために作られたようなパッケージング
2代目ラウムは助手席側のセンターピラーをフロントドアに内蔵式とした
時は流れて現代。自動車はじわじわと電動化が進んでいるが、日本で発売されているBEVは大きく高額車が主流。電気自動車を普及させるにはもっと安くて、コンパクトなクルマが欠かせないはずだ。
そんなとき、まさにここで説明してきたラウムが理想像として思い浮かぶのだ。
まずなんといっても全長4mというサイズ。「いっそのこと4.3mにしてフリード/シエンタみたいな7人乗りにすればいい」という声もあるかもしれない。しかしBEVを多人数乗車にすると高出力モーターと大容量バッテリーが必要になり、悪循環に陥る。ここはあえて5人乗りなのだ。
もちろん1500mm超という全高もBEVにはぴったりだ。バッテリーを床下に敷き詰めたとき、そのバッテリーの厚みを吸収しやすいためだ。重いバッテリーを床下に配置するぶん重心高が下がるから、コーナーなどの安定感はより増すだろう。
室内の使い勝手はほぼそのままでいいと思うくらいだ。前席の横ウォークスルーも、後席の凸凹の少ないフロア面も、大きなエンジンやトランスミッションを持たないBEVにとっては実現が容易なはず。小っちゃいけれどめちゃくちゃ広い車内を実現してほしい。
こうしてみてくると、ラウムがいかに先進的なファミリーカーだったが分かる。電動化が叫ばれる今、もう一度ラウムの魅力を掘り下げてみてはどうか。仮に「ラウムEV」が300万円前後で発売できれば、日本の電動化の強力な推進役になると思うのだが……。
【画像ギャラリー】長いホイールベースを見て! 神グルマともいえるラウムのお姿がこれ!(9枚)
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みんなのコメント
CO2排出量だってトータル的にシエンタHVなら
BEVに劣らないだろ。高速乗って遠くにも行けるしね。
所詮長距離や雪国運用が不便なBEVなんてサクラのような
軽以外では存在意義はない。