■運転支援システム搭載車の整備が認証事業者しかできなくなった!?
最近の新型車は、カメラやレーダーを用いた運転支援システムを搭載しています。
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この運転支援システムはミリ波レーダーなどを用いた非常に高度な技術で、その精密さゆえに装備自体も高額となり、事故などで破損したバンパーを交換したくても、特定の事業者でないと交換や整備ができないようなのです。
これには、2020年4月より施行された、道路運送車両法の一部改正にともなう「特定整備制度」が関係しています。
特定整備制度とは、ハンズフリー運転を可能にした「自動運転レベル2(部分運転自動化)」の上をいく「自動運転レベル3(アイズフリー)」を念頭にした「自動運転装置」を特定整備とする制度。ただし「レベル2」で実現した走行中の車両の前後・左右の監視および対応(自動操作)するものも含まれています。
もう少し分かりやすくいうと、「追従型クルーズコントロール」や「衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)」「レーンキープ」などの運転支援システムなどを搭載したクルマの場合、新たに「電子制御装置整備」の講習を受講し認証を受けた業者しか整備や修理ができないことになるということです。
資本力のある正規ディーラーならまだしも、整備工場などでは、認証を受けない限り運転支援システム搭載車の修理ができなくなることもあります。
では、特定整備制度の認証を受けるためには、どうするのでしょうか。神奈川県の整備工場を経営するH整備士に聞いてみました。
「今回の特定整備制度では、自動運行装置のある車両、レベル2に付随する運転支援装置を搭載した車両の整備や修理は認定された事業者に委託しないといけなくなるものです。
これはスバルの『アイサイト』などもカメラも含まれていますが、おもにカメラ+ミリ波レーダーを採用した装備に関しては2021年10月より点検基準も改正され、記録簿への記載も必要になりました」
特定整備制度の認証を事業者が受ける場合は、運輸監理部長もしくは運輸支局長がおこなう電子制御装置整備についての講習をクリアし、かつ専用の設備を用意する必要があります。
「たとえばバンパー内にレーダーを受けるセンサーが搭載されている場合は、専用のスキャンツールを用いてのエーミングテストをするための認証、カメラの取り外しや取り付け角度調整をおこなうための認証、ECU(エレクトリック・コントルール・ユニット)の取り外しや角度調整、さらにはフロントウインドウやバンパーの取り外し・角度調整など個別に認証を得る必要があります。
またバンパー交換も単体だけでなく、専用ブラケットなどの取り付け工具、『エーミングターゲット』と呼ばれる専用のテストも含まれています」(H整備士)
しかも、この認証を受けるための講習費用や設備の用意は事業者負担。技術の進歩とともに検査項目も増え、専用の資格や設備が増えてくると、対応できる事業者は限られてしまいますし、そのぶん工賃となってユーザーの負担が増すことにつながるのです。
「メンテナンスもディーラーに集客させたい狙いはわかるのですが、ユーザーにとって優しいとはいい難いです。
実際にバッテリー交換でもキャリブレーション(データの一部初期化)が必要になってきていますし、今後EV化が進むほどに複雑な装置はブラックボックス化しており、整備工場では修理がしにくくなっている印象を受けます」(H整備士)
■高度な技術の搭載で修理費が跳ね上がっている現状
運転支援システム搭載車がバンパーなどを交換する場合、どんな調整が必要になるのでしょうか。
「現在、多くのクルマがエンジンをコンピュータで制御しており、2024年から『OBD(車載式故障診断装置)』を用いた車検になると国土交通省より通達されています。
OBDでは、保安基準項目で人の目では確認しにくい不具合を検知しますが、そのためにはクルマと通信ができ『特定DTC(故障コード)』を照会するアプリをインストールした法定スキャンツールが必要です。
このツールで不具合が検知された場合や、エーミングターゲットと呼ばれる運転支援システム専用の検査をおこなっていないと、車検に受からなくなってしまうといいます」(H整備士)
エーミングターゲット作業をするためには、国が実施する「電子制御装置整備の師備主任等資格取得講習」を受講し、試験によって習熟度を一定以上クリアする必要があるそうです。
「簡単にいえば、ミリ波レーダーを検知するセンサーやカメラの角度調整なども有資格者が決められた方法で検査しないとダメということです。
正しいポジションに設置されるだけでなく、設定された標的(ターゲット)に対して正確に反応するかを確認する作業になります。
まだ弊社でも具体的な工賃は見えてきませんが、単なるバンパー交換費用では済まなくなるでしょう」(H整備士)
実際、運転支援システム搭載車が追突事故などを起こしてしまうと、単純にバンパーだけでなく、さまざまなパーツの交換が必要になるのだそうです。
「先日、現行型『アルファード』(HV)が追突してしまったとのことで、修理依頼が来ました。
バンパーカバーやラジエーターグリル、カバー、グリルロア左右のグリル、アブソーバロア、エネルギーアブソーバなど大きめの周辺部品だけでも約20万円。
さらにヘッドライトが両方で50万円以上、さらにエーミングなどの検査が加わり、総額で100万円オーバーという金額になってしまいました。
これまでのように、カラードバンパー交換や補修できるパーツはそのまま生かすといった修理では済まなくなっています」(H整備士)
アルファードは高級ミニバンとはいえ、追突事故で100万円オーバーの修理費は厳しいものがあります。クルマの高度化により、車両価格だけでなく修理代も軒並み値上がりしているといえます。
「最善策は、周囲のクルマと十分な車間距離を保つことぐらいです。高度なシステムですが、やはり車重のあるクルマは路面状況などによって性能がフルに発揮されない可能性もあります。
こちらとしてもあまりに高額な修理代は気の毒になってしまいます」(H整備士)
※ ※ ※
高性能な運転支援システム搭載車は修理代も高価になってきており、かつ整備費用も高額になってきています。
運転支援システムは非常に有益ですが過信することなく、自ら安全運転を心がけることで、高額な修理費を回避したいところです。
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