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英国総選挙 自動車関連の争点は「エンジン車禁止の時期」「EV支援」か 各党の公約は?

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英国総選挙 自動車関連の争点は「エンジン車禁止の時期」「EV支援」か 各党の公約は?

政権交代? 自動車産業への影響は

英国では7月4日に総選挙が行われる。各政党は電気自動車(EV)補助金の再導入、2030年のエンジン車禁止、道路環境の改善、都市部の環境政策の見直しなど、さまざまな自動車関連政策を掲げている。

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与党の保守党、最大野党の労働党、自由民主党などはそれぞれ、国内自動車産業をマニフェストの重要な柱に位置づけている。自動車の将来性が、国民の移動の自由や英国経済に大きな影響を与えると認識しているのだ。

今回は、総選挙に向けた各政党の公約で、自動車に焦点を当てた主要な政策を紹介する。

保守派(Conservatives)

与党・保守党は、どの政党よりも自動車関連の公約を多く盛り込んでいる。一部を取り上げよう。

自動運転車

リシ・スナク党首(現首相)は、自動運転車の大規模導入を可能にする新しい法案を提出すると述べている。現在、英国では完全な自動運転システムは合法ではない。新しい法案は「Automated Vehicles Act(自動運転車法)」と呼ばれ、主に安全性に関する枠組みを作り、商業化の実現に重点を置く。

法案提出時期については、「次の議会中」という緩い約束しかしていない。この法案は当初2025年に予定されていたが、総選挙によって延期される可能性が高い。

EV

EVについては、主に急速充電サイトの増設を中心に、「真に全国的」な充電インフラで購入者をサポートすることを約束している。

保守党は昨年、公共のEV充電インフラの整備に時間が必要なことや、欧州連合(EUやカナダ)など他の主要地域との整合性を理由に、エンジン車の新車販売禁止を2030年から2035年に延期した。

大手メーカーや業界団体の呼びかけにもかかわらず、EVの販売拡大に向けたインセンティブ(奨励金などの優遇措置)は約束されていない。

道路整備

保守党はさらなる道路整備を約束している。これは、2015年以降「戦略的」道路に費やされた400億ポンドの予算に上乗せされるものだ。

追加予算には、長らく難航しているテムズ川下流横断道路の建設や、交通量の多いA303およびA1幹線道路の改良工事などが含まれる。

自動車産業への支援

保守党は、自動車産業を「わが国の製造業の王冠に輝く宝石」と呼び、中国との厳しい競争に直面している同産業を支援することを約束した。

「他国が国際貿易ルールに違反している証拠があれば、国内自動車メーカーを支援する用意がある」と述べている。

マニフェストには記載されていないが、保守党が再選を果たした場合、EUと協調し、中国製EVに厳しい関税を課すかどうかが重要な検討事項となる。以前、マーク・ハーパー運輸長官は中国製EVの流入に対処するための「強固な対策」を約束した。

スナク党首はまた、「英国の熟練した雇用を守るため」に、EVに移行する自動車メーカーを支援すると約束した。国内に大規模工場を抱えるJLR(ジャガー・ランドローバー)、ミニ、日産、ヴォグゾールはいずれも各工場の電動化に取り組んでいる。

労働党(Labour)

野党・労働党は保守党ほどには力を入れていないが、自動車産業は経済成長を加速させるための重要な柱の1つと捉えている。

2030年のエンジン車禁止令を復活させる

まず、キア・スターマー党首は、2030年のガソリン車とディーゼル車の新車販売禁止を再導入すると約束した。

昨年、与党・保守党がエンジン車の新車販売禁止を2035年に延期した。これを受けて労働党は、当初の期限に戻すことで自動車メーカーに「確実性」をもたらすとしている。

EV購入者の支援

EVについては、「充電ポイントの展開を加速」させることで購入者を支援するという。

充電インフラ企業のZap-Mapによると、2024年5月現在、英国には5336か所、計1万2249基の急速・超急速充電器が設置されている。

労働党は中古EV市場を視野に入れ、バッテリーの健全性基準も導入し、情報をより明確で分かりやすいものにする。

保守党と同様、購入優遇措置は約束していない。

近代的な交通システムの構築

その他、労働党は道路の大規模改良を約束している。

マニフェストでは、「英国の再建とは、交通インフラの近代化を意味する」と書かれており、交通網は「長い間プロジェクトが実現されないことに悩まされてきた」としている。

日本のJAFに相当する英国王立自動車クラブ(RAC)のデータによれば、英国全土に100万個以上の「ポットホール(Pothole)」があるという。ポットホールとは路面のくぼみや穴のことで、排水不良やアスファルトの経年劣化により発生し、車両故障の原因や事故につながるとされている。

ポットホール対策の予算は、「費用対効果が悪い」とされるA27幹線道路のアランデル・バイパス工事を延期することで賄われる。

ギガファクトリー

労働党は、EV用バッテリー工場を建設しやすくするために国家計画政策を改定し、「自動車産業が世界をリードできるように」新しいギガファクトリー・プロジェクトに15億ポンド(約3000億円)を投入すると約束している。

また、環境負荷の低い水素製造プロジェクトにも5億ポンド(1000億円)を投じる予定だ。間接的に自動車産業、特に大型貨物車両(HGV)向けパワートレインの開発支援などにつながる可能性がある。

また、自動車産業を含む国内の研究開発部門にも資金を投入することを約束している。

保険料の引き下げ

労働党は「高騰」する自動車保険料にも取り組むとしているが、その内容については明らかにしていない。

英国保険業者協会は以前、大幅な値上がりの背景として、部品代、修理代、代車費用、人身傷害の保険金請求の増加など、多くの要因を挙げていた。

自由民主党(Liberal Democrats)

自由民主党は、交通部門全般の脱炭素化に重点を置いている。

EV補助金の復活

自由民主党のエド・デイビー党首は、2022年に廃止されたEV補助金を復活させると述べた。これは他の政党の公約にはないものだ。

同党は、「ドライバーがより安く、より簡単にEVに乗り換えられるように」したいと考えている。

充電をより安く、より簡単に

これに加えて自由民主党は、各地域の送電網の能力を高めることで、充電ポイントの普及スピードと数を「急速」に増加させると約束している。

また、公共充電にかかる付加価値税を20%から5%に引き下げ、一般家庭での充電と同じ税率にする。また、すべての充電ポイントの支払いをクレジットカードに対応させる。現在はアプリ経由でしかアクセスできないものもある。

2030年のエンジン車禁止を復活させ、高い燃料代を低減する

労働党と同様、2030年のエンジン車の新車販売禁止令を復活させる。

その一方で、「不公平」な保険料や高いガソリン価格から自動車保有者を守ると約束している。詳しい内容については説明していない。

道路の補修

デイビー党首は、英国の道路は「ひどい状態で、至る所に穴が開いている」と話す。

これに対処するため、道路予算の多くを地方議会に与え、地方議会が道路を維持できるようにする。また、道路工事に関する煩雑な手続きも削減するという。

緑の党(Green Party)

当然のことながら、緑の党の主要な焦点は気候に優しいグリーン政策である。

そのため、緑の党は化石燃料の段階的廃止をマニフェストの柱に据えている。英国におけるすべての新規化石燃料採掘プロジェクトの停止、すべての石油・ガス補助金の廃止、すべての化石燃料の輸入および国内採掘に対する炭素税の導入を掲げる。

自動車産業を直接ターゲットにしているわけではないが、ガソリンと軽油の価格に影響を与えるだろう。

緑の党はまた、住宅地や町、都市部の交通量削減を支援する政策も目標とする。ロンドン、ブリストル、ポーツマスに続き、全国に「ULEZ」を設けるだろう。ULEZとは超低排出ガスゾーンのことで、特定エリア内におけるエンジン車の通行を制限し、都市環境の改善を図るものだ。ロンドンなどでは現在、排出ガス基準を超える車両に対して通行料金を課している。

リフォームUK(Reform UK)

リフォームUKは緑の党とは対照的なアプローチをとっている。ULEZとLTN(都市部や住宅地の交通量を減らす制度)の全面廃止など、「自動車運転者との戦争を止める」ことを約束している。

また、2030/2035年のエンジン車販売禁止や、メーカーに一定割合のEV販売を義務付けるZEV義務化も廃止する。

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みんなのコメント

28件
  • han********
    別にEV自体は否定しないけど、色々バレ始めてるのに国家の存亡をかけてまで推進するのも不思議な話。
    さっそく中国に揺さぶられてるし。
  • bla********
    EUはとてもクリーンエナジーに先進的で素晴らしい。どこぞの島国は我がの利益しかなく化石燃料にしがみつく醜さを露呈しているが、2030年にはその勢力図は塗り替えられているだろう。BEVと自然エナジー、再生可能エナジーはセットである。太陽光と風力、水力発電の技術を各国が切磋琢磨して高めて、電気で走る移動手段に統一してほしい。可能な限り素早くハイブリッド、プラグインハイブリッドを含めた化石燃料を使用する車はすべて廃棄し、BEVに置き換えてほしい。孫孫の代まで現在の炭素社会を放置してはならない。ついてこれない国は放置してでも中国、米国、欧州で技術を構築し地球を温暖化や異常気象から救ってほしい。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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