自称アウトロー仕立てのメルセデス300SLロードスター
100年前には鉄道車両の点検・修理に使われていた施設を改装した、自動車エンスージアストの楽園「モーターワールド・ミュンヘン」において、2023年11月25日、RMサザビーズ欧州本社が開催した「Munich 2023」オークションでは、素晴らしい施設に相応しいクラシックカーやコレクターズカーが数多く出品された。今回はその中から、自動車史上に冠たる名作である「メルセデス・ベンツ300SL」、しかも「アウトロー」を自称する、実に興味深い1台をご紹介することにしよう。
640万円なら買いのメルセデス!! 1133台しか生産されなかった「500SLC」は違いがわかる大人の美しいクーペです
歴史的傑作、300SLガルウイングのマイナーチェンジ版?
アメリカ東海岸で有力な輸入車代理店を経営していたドイツ系実業家、ポルシェ「356スピードスター」の誕生にも関与したマックス・ホフマンのアイデアから生産化が決定し、1954年の北米ニューヨーク・ショーにてデビューしたメルセデス・ベンツ300SLは、1950年代という時代背景を考えずとも、きわめて画期的なモデルといえるだろう。
なかでもこのクルマの先進性、そして極めてピュアな成り立ちを物語る3つの先鋭的テクノロジーがあった。ひとつはバードケージ状に組まれた鋼管スペースフレーム。ふたつめは前期のクーペモデルで採用されたガルウイング式ドア。そして3つめは、300SLが量産車としては世界初採用となるフューエルインジェクションである。
前期モデルにあたる300SL「ガルウィング」は欧米のマーケットで大成功を収めたものの、とくに最大のマーケットとなる北米から発信される、オープンエア・モータリングを求めるリクエストに応えて、1957年にモデルチェンジ。特徴的なルーフをカットアウトするとともに、サイドシルを低めてスタンダードの横開きドアとした「300SLロードスター」へと進化を遂げた。
この時代は、市販スポーツカーとレーシングカーとの間に明確な垣根ができ始めた時期に相当する。300SLも時流にしたがって、ガルウイング時代のスパルタンなスポーツ性能を若干犠牲にしてでも快適さと豪華さを求めたいっぽう、ガルウイングでは乗り手を選んだ操縦性を安定志向にする方針も選ぶことにした。
このモデルチェンジによって、もはやレースには不向きな超高級GTへと変貌したものの、いっぽうで1961年3月の生産分からは、4輪ディスクブレーキが採用されるなどのアップデートも鋭意に進められた。そして、1963年に生産を終えるまでに1858台がラインオフする、ガルウイング以上のヒット作となったのだ。
今回RMサザビーズ「Munich 2023」オークションに出品されたメルセデス・ベンツ300SLロードスターはアメリカ仕様車として製作され、1957年10月3日にニューヨークで納車。当初は「グラファイト・グレー」のボディカラーにグレーのレザーインテリア、ライト・グレーのソフトトップで仕上げられた。
この車両は、1973年と1975年に少なくとも2人の米国人オーナーの手に渡り、いずれもカリフォルニアを拠点としていたことが知られているが、2016年にオークションで今回のオークションに出品した現オーナーが、いわゆる「レストアプロジェクト」として入手。そののち、ドイツに輸入されたとのことである。
アウトローを標榜しつつも、とてもエレガントな仕立て
今回のオークション出品にあたって、RMサザビーズは「メルセデス・ベンツ300SLロードスター “アウトロー”」というタイトル名をつけている。
この「アウトロー」とは、アメリカにおけるポルシェ356および「911」の愛好家あたりを端緒に、ここ数年のクラシックカー界で流行しているスタイル。現代的な技術を取り入れた、いわゆる「レストモッド」の一環なのだが、より「ワルっぽい」ワイルドさを前面に押し出したテイストのもののようだ。
しかし、この300 SLに限って言うなら、「アウトロー」を自認するわりにはお行儀の良さそうな雰囲気で、エレガントさも充分に残されているかに見える。
このモディファイは、今回のオークション出品者である現オーナーの手元に届いた直後、2016年から2017年にかけて、クラシック・メルセデスのスペシャリストであるラース・ロンベルスハイムの手によって完全なレストアが施された際に行われたもの。
ボディワークは総剥離ののち修復され、バンパーレスで再仕上げ。6気筒SOHCエンジンは、マッチングナンバーのブロックを残したまま、シリンダーヘッドを交換してリビルトされ、無鉛ガソリンで走行できるように改造された。そのうえガソリンタンクやフロントおよびリアのアクスル、ショックアブソーバーなど、そのほかの主要な機械部品もすべてオーバーホールされたという。
またオリジナルの4速MTに代えて、独ZF社製の5速ギアボックスを組み合わせるうえに、フロントのディスクブレーキ、ラッジ社製センターロック・ホイールへの換装、最新のオルタネーターと高トルクスターターを備えたイグニッションシステムのアップグレード、切替え可能なステンレス製エグゾーストなど、現代的なコンポーネンツが奢られることになった。
さらには、最新のラジエーターとオイルクーラーで冷却効率を高めたほか、「R8」インジェクションポンプとインジェクターが取り付けられた。そして米国仕様の3.89:1のファイナルレシオは、より快適なクルージングのために欧州仕様のデフォルト指定である3.64:1に変更されている。
いっぽうキャビンにはアルミニウム製のシェルを持つ「SLS」スタイルのシートが装備され、メーター類もkm表示のヨーロッパ仕様に換装された。
くわえて、新車時代からオリジナルの4速ギアボックス、トリムし直されたシート、シリンダーヘッド、ブレーキドラムとスタブアクスル、ステアリングホイール、保管前に再メッキした純正バンパーなど、レストアの際に取り外された多くのオリジナルパーツをスペアとして添付するほか、マッチングカラーのハードトップも付属品としてついてくるとのこと。またオリジナルのアメリカ登録書類のコピーや、アメリカに生息していた時代のインボイスや保険証なども添付されている。
メルセデス・ベンツ300SLロードスターは、自動車史における華やかな時代の象徴。とくにこの個体は、5速マニュアルギアボックスをはじめとする数多くの現代的なコンポーネントを搭載し、一流メーカーのスペシャリストによって多大な費用をかけて徹底的に美しく仕上げられた。
それらのセールスポイントをアピールしつつ、RMサザビーズ欧州本社は120万ユーロ~150万ユーロという、かなり強気のエスティメート(推定落札価格)を設定した。ところが2023年11月25日に行われた競売では、エスティメート下限を10万ユーロ以上も下回る109万6250ユーロ、つまり日本円に換算すると約1億7100万円で落札されることになった。
この価格は、やはりこのクラスの歴史的名作となると、オリジナリティが何よりも重視されることの表れかもしれない。しかし、元来300SLはこの時代のスーパースポーツとしては例外的に乗りやすく、信頼性の点でもかなり優れていることから、その資質をさらに高めることで日常的にももっと楽しみたいという考え方も、充分に理解できるのだ。
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