台風15号の影響からか、金曜の搬入日から強風に見舞われたオートポリス。スーパーGT第6戦の予選は、難しい路面コンディションと気温変化のなかで多くのチーム、そしてドライバーが翻弄されるような形の展開となった。
「クルマのフィーリングは良くて自信を持って攻めることができました」とポールポジション会見で塚越広大が語ったように、KEIHIN NSX-GTはフリー走行か予選Q1、そしてQ2とすべてのセッションでトップタイムをマークして順調な1日を過ごした一方、2番手以下は悲喜交々の予選日となった。
塚越&バゲットのKEIHIN NSXが全セッション最速で圧倒。ホンダ勢がフロントロウ占める【スーパーGT第6戦オートポリスGT500予選】
その要因は、この日のコンディション変化の大きさだった。午前のフリー走行開始時から、予選Q1スタート時までに気温が8度上がり予選Q2では急激に下がっていくという気温の大きな変化に加え、予選日朝からマシンが走行するたびに砂埃が上がるのがモニター上でも視認できるほど、強風の影響で路面はダスティな状況で、路面にラバーが乗っていく変化が読みにくいという、エンジニア/ドライバー泣かせの難しいコンディション。予選Q1で2番手を獲得しながら、Q2では8番手となったZENT CERUMO LC500でQ1を担当した石浦宏明が話す。
「予選Q1はそこまでグリップ感は感じていなくて、正直、アタックの時もスライドも多くて走っているときは焦っていて、もう1周アタックに行かなきゃと思っていたくらいだったんですけど、無線で『2番手だから(連続)アタック止めていいよ』と聞いて、周りもグリップは辛いんだなと思いました」と石浦。
「路面温度が朝から予選Q1にかけて急に上がっていたので、その影響もあったのかなと思います。Q2は逆に路面温度が急に下がったので、ウチのパッケージには合っていなかったなと思いますけど、このポジションでも明日は十分にチャンスはあると思っています」と決勝に向けてはポジティブな期待を語った。
予選Q1は石浦が話すように手探りの状態のチーム/ドライバーが多く、さらに気温の変化を考慮してタイヤの選択を変えたことが、逆にマシンのパフォーマンスを難しくしてしまうという結果になったチームも多かった。予選2番手ながら、Q1では7番手となったARTA NSX-GTの伊沢拓也が話す。
「Q1はギリギリでしたね。午前中は硬めのタイヤで良かったのですが、Q1に軟らか目のタイヤを選択したら予選の時に気温も上がって、軟らか目のタイヤが動く感じのフィーリングになってコンディションに合っていませんでしたね。ですので、Q2の野尻(智紀)は硬めの方でうまくいきました」と伊沢。
ARTAと同じような形でRAYBRIG NSX-GTも予選Q1に向けてフリー走行では試していなかったタイヤでアタックしたが、ステアリングを握ったジェンソン・バトンはまさかの12番手でQ1ノックアウトとなってしまった。それでも決勝に向けては自信はあるようで、前回の富士戦同様に、チャンピオンチームがどこまで巻き返すことができるのか注目だ。
ミシュラン陣営としてはCRAFTSPORTS MOTUL GT-Rが6番手を獲得したが、予選Q1では8番手でギリギリ通過。Q1を担当した平手晃平が振り返る。
フロントロウのホンダNSXとその後ろで虎視眈々と上位を狙うレクサスLC500
「Q1突破するのがギリギリな状況だと思ったので、午前のフリー走行でフレッド(フレデリック・マコヴィッキ)もあまり乗れていなかったので僕が担当することになりましたけど、本当にギリギリでしたね(苦笑)。今回、僕たちが選んだタイヤは結構、アグレッシブに振ったものですけど、決して博打を打ったわけではなくてそれなりに実績のあるタイヤです。選択は今のところベストだと思っていますし、順調に来ていると思っています。ただ、ロングランの実績がこのコースではないのでレースは未知数な部分がありますけど、明日どうなるのかですね」と平手。
CRAFTSPORTS GT-Rはどうやら軟らかめのタイヤを選択している雰囲気だが、3番手のリアライズコーポレーション ADVAN GT-Rも軟らかめとの噂もあり、レースでのパフォーマンスと何周まで保たせられるのかが勝負の分かれ目となりそうだ。
そして明日の気温次第になるが、タイヤのパフォーマンスとともにこのオートポリスのレースはタイヤのピックアップ(自分のタイヤかすが採れずにタイヤの表面に付着したままでグリップダウンを招く現象)も重要なカギを握る。昨年は予選でホンダNSX勢がトップ3となったがタイヤのピックアップなどでロングランのペースが苦しくなり、逆にロングランのペースがよかったレクサスLC500が決勝でトップ4を独占するという、勢力図入れ替わり現象が起きることになった。
「明日は今のポジション(2番手)でゴールができれば、まずはうれしいですね。レースで伝統的に出るもの(ピックアップの症状)が出ないことを祈っています。雨のレースは嫌ですけど、成績的なものを考えれば雨の方がいろいろ可能性は広がりますね。いずれにしても、このオートポリスと次のSUGOでポイントをきちんと稼ぎたいと思います」と話すのはARTAの伊沢。チームメイトの野尻も同様にレースへの期待と不安を話す。
「去年の決勝はああいう状況(ロングランで低迷)だったので心配ですけど、タイヤも去年から変わっていますし、セットアップも昨年と同じ過ちをしないようにチームで共有して進めてきていますので、去年とは違った結果が出るとは思っています。明日はまずはきちんと表彰台以上で終えられるように、しっかりとポイントを稼ぎたいと思います」と野尻。
予選9番手のWedsSport ADVAN LC500の坂東正敬監督も「このサーキットは本当に難しい。路面がどこまでできるか(ラバーが乗ってグリップが良くなるか)がキモですね」と、天候次第での対応を想定している。
雨の予報もあり、気温の大きな変化も予想され、とにかく予想が難しいGT500の上位争い。予選ポールポジションのKEIHINはそれらの不安を突き抜けた速さを見せているが、明日のコンディション次第でどうなるか。レクサスLC500陣営は昨年同様に決勝で巻き返しに来ることが想定され、ニッサンGT-R陣営も昨年のような不振からの脱却が期待される。
台風15号の進路とその動向のように、明日のレースは難しいシチュエーションになることが予想される。
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