生産開始から4年足らずで閉鎖
日産が中国国内の車両生産工場のひとつを閉鎖する方針であることが判明しました。現在、日本メーカーに襲いかかる中国メーカーのプレッシャーについて、そのなかでも日産がとりわけ、なぜ中国市場で減速し始めているのかについて解説します。
「アリア」が挑むのは電気自動車の激戦区 [日産アリア試乗記:その1]
これまで日産については、中国国内において160万台もの生産キャパシティを有しており、8つもの車両生産工場を稼働していました。ところが今回、上海の西側に位置するChangzhouの車両生産工場を閉鎖する方針が判明しました。このChangzhouの車両生産工場では、これまでコンパクトSUVセグメントで、欧州などでも発売されているキャシュカイの生産を行っており、年間生産能力も13万台規模と、中国市場の生産能力を支える工場のひとつだったわけです。
他方で、そのChangzhouの工場に関して重要なポイントというのが、2020年の11月に生産をスタートしてから、たったの4年弱しか経過していなかったという新工場という点です。よって、そのような新工場をこの短期間で閉鎖するということ自体が、日産の中国国内における混乱模様を示唆しているのではないかと感じます。
そして、中国市場における日産に関しては、この生産工場閉鎖の流れが、今後さらに加速していくのではないかと懸念します。
というのも、このグラフは、2019年以降の、日本勢などの主要大衆ブランド中国国内の年間販売台数の変遷を示したものです。このとおり、紫で示されている日産は、2019年シーズンで120万台近い販売台数を実現。ところが2023年シーズンでは70万台を割り込んでしまっている状況です。
また、日産が中国国内において抱えている問題点というのが大きくふたつ存在します。
第一に、日産ブランドにおける電気自動車の需要が壊滅的であるという点です。というのも、すでに日産は2022年10月からアリアの発売を中国国内でもスタートしました。
このグラフは、マーケット別のアリアの販売台数を示したものです。紫で示されている中国市場の販売台数を追ってみれば一目瞭然。ほとんどの月において、月間500台も売り捌くことができていない状況です。
中国国内では、現在アリアは20万元弱、日本円で440万円からの発売。ところがディーラーにおいて、さらに全グレード一律で5.5万元もの値引き措置を断行中であり、よって日本円で319万円から購入可能という、まさに破格の値段設定です。投げ売り同然の値段設定だったとしても、中国人には刺さっていないということを意味するわけです。
すでに日産については、中期経営戦略The Arcにおいて、日産ブランドから4車種、合弁ブランドであるVenuciaからも含めて8車種もの新エネルギー車を、2026年度までに中国国内に投入する方針を表明済みです。投げ売り状態のアリアでさえこのような販売状況であるにも関わらず、果たして、いくら新型EVを投入したところで、期待どおりの販売台数を実現できるのか。抜本的な販売戦略を実行せずに、新型EVをいくら投入したところで焼け石に水なのではないかと懸念せざるを得ないわけです。
また、日産の抱える第二の問題点というのが、中国国内における販売攻勢比率です。このグラフは、中国国内のモデル別月間販売台数の変遷を示したものです。
最直近の2024年5月単体では、今回閉鎖されたChangzhou工場で生産されていたキャッシュカイが1万台強程度を発売しているものの、黄色で示されたコンパクトセダンであるシルフィが、圧倒的な販売シェアを実現。なんと日産ブランド全体の販売台数のうち56%を占めているレベルです。
車種別販売台数ではBYD車がトップを独走
つまり、中国市場における日産というのは、あくまでもシルフィ一本足打法であるといえるわけです。裏を返せば、このシルフィの販売台数を死守できなくなり始めることが、中国市場におけるシェア崩壊に直結。よって、複数の人気車種を有するトヨタやホンダと比較しても、日産は現在、中国で極めて危ない橋を渡っているといえるわけです。
そして、この日産に関して厳しい市場動向というのが、第二の懸念点でもあった、シルフィ一本足打法にイエロー信号が点り始めているという点です。そもそもシルフィの販売台数は、この5年間ほどの販売動向を追ってみても、徐々に販売規模が縮小傾向にありました。ところがこのシルフィは、現在断続的な値下げを行っている状況です。2024年5月の最新状況では、ガソリンモデルのエントリーグレードの場合、じつに3.88万元もの値引き措置を行い、日本円で154万円で発売されている状況です。これほどの値引き措置を行って、なんとか販売台数の減少スピードを抑えているといえます。
そして、その大幅値引き措置の決定に大きな影響を与えているのが、大衆セグメントの王者、BYDの大衆セダンQin Plusの存在でしょう。このQin Plusについては、2月からHonor Editionという2024年モデルを発売。EV航続距離46kmを実現するPHEVであるにもかかわらず、なんと8万元未満、日本円で176万円から発売されている状況です。
すでに車種別販売台数という観点では、Qin Plusがトップを独走中。また、日産シルフィのすぐ後を追う3番手に、Qin Plusの兄弟車であるDestroyer 05もランクイン。つまり、これまで大衆セダンの王者に君臨していたシルフィに関しては、Qin Plusに王者を奪われるだけではなく、Destroyer 05と挟み撃ちされてしまっている状況です。
わかりやすいように、それぞれの兄弟車、たとえばトヨタでいうところのカローラとレビン、ホンダでいうところのシビックとインテグラの販売台数を合計したグラフを見てみると、BYDが大衆セダンセグメントに与えている影響の大きさが見て取れるでしょう。
そして、いよいよ日産シルフィをはじめとする既存メーカーの大衆セダンにトドメを指す存在というのが、BYDの最新セダンであるQin L、および兄弟車であるSeal 06の存在です。第5世代のPHEVシステムを搭載したことによって、PHEVとしての完成度がさらに向上しています。
5月末から発売がスタートしているQin LとSeal 06が販売台数を伸ばしていくと、値引き措置で販売台数を維持していたシルフィが、さらに苦しい局面を迎えることは間違いないでしょう。シルフィ一本足打法のジリ貧の戦いの未来が目に見えているわけです。
日産は中期経営戦略上、2026年度までに中国国内の販売台数をむしろ増やすとしていますが、私は最新市場動向をまったく無視した、あまりにも楽観論であると感じます。
果たして、BYDのQin LとSeal 06の登場によって、日産シルフィの販売動向に何が起きるのか。シルフィ一本足打法の日産全体の販売動向に何が起きるのか。今回の中国国内の車両生産工場の閉鎖の流れに不安を抱かずにはいられません。
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みんなのコメント
中国撤退する方が良いって
奴らに関わると何が起きるか分からない
日本車をこき下ろして中国ブランドを褒める、いつものEV TIMESらしい記事だったか。