走りを追求した専用エンジンは希少になる!?
安全・環境に関する規制が日々強化され、電動化シフトも急速に進むなか、自動車メーカーにとってパワートレインの共通化によるコストダウンは以前にも増して重要になっている。だがそんな今、贅沢にも専用チューニングのエンジンが搭載されたスポーツモデルが、国産車にも確かに存在する。
「150万円以下」で買えるなんて安すぎ! 乗るなら今しかない中古「ワークスコンプリートモデル」4選
ここではベース車自体がモデルライフ後半に差し掛かり、かつ現在でも新車で買える、まさに今こそ“買い!”な5台を紹介したい。
日産マーチニスモS
現行4代目マーチのベース車は、安さと街なかでの扱いやすさが命のコンパクトカー。パワートレインは、HR12DE型1.2L直3NAエンジン+CVTの組み合わせしか用意されていない。
だがマーチニスモSはHR15DE型直4NAエンジンと5速MTを搭載。しかもそのHR15DEは、排気系だけではなくカムやピストン、コンピューターも専用チューンだ。最高出力は116ps/6000rpm、最大トルクは156N・m/3600rpmと、絶対的な数値は決して高くないものの、1010kgの軽量ボディを気持ち良く加速させるポテンシャルを備えている。
そのうえボディ・シャーシはブレーキやステアリングギヤ比も含めて全面的に強化され、エアロパーツもゼロリフトを実現した本格派。室内にはホールド性・フィット感ともベース車とは比較にならないほどアップしたスポーツシートを備えるなど、ベース車とはまったくの別物に生まれ変わっている。それでいながら価格はベース車の上級グレード「G」より約20万円アップの187万6600円に抑えられているのだから、これはもうバーゲンプライス以外の何物でもないだろう。
マツダ・マツダ2 15MB
4代目デミオあらためマツダ2に2015年9月より設定されている「15MB」は、その「MB」という名が示す通りモータースポーツベース車だ。しかし、単に装備が簡素化されただけのモデルではない。
P5-VPS型「SKYACTIV-G 1.5」直4直噴NAエンジンはハイオクガソリン仕様とされ、圧縮比もベース車の「15C」が搭載するレギュラーガソリン仕様の12.0に対し14.0にアップ。さらに吸排気バルブの開閉タイミングを制御するデュアルS-VT(シーケンシャル・バルブタイミング)を搭載し、排気系やオイル潤滑システムも抵抗を減らした専用品だ。
最高出力は116ps/6000rpm、最大トルクは149N・m/4000rpmと、「15C」用に対し6psと8N・mのアップに留まっているが、唯一組み合わされるトランスミッションは6速MT。そのうえ最終減速比は「15Sプロアクティブ」6速MT車の4.105に対し4.388へ低められており、モータースポーツの場だけではなく日常のワインディングや街乗りでも爽快な加速フィールが味わえるのは間違いない。
マツダ・ロードスターRF
現行4代目ロードスターにはソフトトップ車に加えて、リトラクタブルハードトップモデルの「RF」が設定されている。
国内仕様のソフトトップ車にはP5-VP[RS]型またはP5-VPR[RS]型(i-ELOOP+i-stop装着車)の「SKYACTIV-G 1.5」直4直噴NAエンジン、RFにはPE-VPR[RS]型「SKYACTIV-G 2.0」直4直噴NAエンジンが搭載されている。
いずれもFRのライトウェイトオープンスポーツカーであるロードスターに合わせて専用チューニングが施されているが、とくにRF用の「SKYACTIV-G 2.0」は2018年6月の商品改良で劇的に進化。吸排気系はもちろん動弁系や燃料噴射系の部品も一新され、果てはシリンダーヘッドの吸排気ポート形状まで変更されるなど、ほぼ別物に生まれ変わった。
その結果、従来は158ps/6000rpmと200N・m/4600rpmだった最高出力・最大トルクは、184ps/7000rpmと205N・m/4000rpmへと大幅にアップ。レブリミットも6800rpmから7500rpmへ引き上げられるなど、よりスポーツカーにふさわしい性能と官能性を獲得するに至っている。
スズキ・スイフトスポーツ
日本では4代目となる現行スイフトスポーツには、歴代初のターボエンジンが搭載されている。そのK14C型1.4L直4直噴ターボ「ブースタージェットエンジン」は型式こそ4代目エスクードと同じだが、エスクード用はレギュラーガソリン仕様で、最高出力・最大トルクは136ps/5500rpmと210N・m/2100~4000rpm。
方やスイフトスポーツ用のK14Cはハイオクガソリン仕様で、最高出力・最大トルクは140ps/5500rpmと230N・m/2500~3500rpm。パワーは4psのアップに留まるもののトルクは20N・mも増強されており、6速MT車で970kg、6速AT車で990kgという軽量ボディには充分すぎるほどの性能だ。
しかも、低回転域から扱いやすいフラットなトルク特性を持つエスクード用に対して吸排気系や冷却系を変更し、ウェイストゲートバルブにはタービン回転数を高く保つノーマルクローズ制御を採用。アクセル操作やエンジン回転数に対し、よりレスポンスよくリニアなパワー・トルク特性と排気音量を実現している。そしてその価格は、6速MT車で201万7400円(税込)。スズキセーフティサポート非装着車なら187万4400円とさらに安く、社会人になりたての若者にも優しいホットハッチだ。
スズキ・アルトワークス
8代目となる現行アルトには、そのデビューから3カ月後となる2015年3月に、スポーティなターボモデル「ターボRS」が追加されていた。だが同年12月には、よりホットなモデルとして「ワークス」の名が15年ぶりに復活。
R06A型0.66L直3ターボエンジンも専用チューニングが施され、最高出力は自主規制枠いっぱいの64ps/6000rpmとそのままながら、最大トルクはさらに2N・m高い100N・m/3000rpmへと引き上げられた。
だがその性格はスペックとは裏腹に大きく異なる。ターボRS用がアクセル操作やエンジン回転数に対してリニアに加速する扱いやすい特性だったのに対し、ワークス用はアクセルペダルを踏んだ瞬間にスロットル全開になるかの如く、まるでオンオフスイッチのようにピーキーな特性。
しかしながら、こうしたじゃじゃ馬的なキャラクターはワークスの復活を長年待ち望んでいたユーザーに好評をもって迎え入れられ、ターボRSが2018年12月の一部改良に伴い廃止されたのに対し、ワークスは現在も販売が継続されている。こちらも価格はFF・5速MT車で153万7800円と安く、免許取り立てのクルマ好きが腕を磨くのにうってつけな1台と言えるだろう。
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