夏冬ともに性能を向上させて登場したという「クロスクライメート2」。夏のドライテストは済ませ良好な印象を得たが、やはりオールシーズンの本領は雪道でこそ発揮させて欲しい。早速、テストカーで凍結路や雪道が待つ高原ルートへ向かった。
正直、期待度は低かったのだが……。
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根が体育会系なのでオリンピックイヤーになると、どうしても色々な競技の結果に関心が向かう。モータースポーツ同様に、期待どおりの結果になることのほうが圧倒的に少ない世界。実力伯仲のトップクラスのアスリートが集う場で、はなっから結果の分かっている競技など、まずない。そうとは分かっていながらも、過大に期待したり、逆に期待外れと失望で肩を落としたり、なんとも忙しいものである。
でも世の中には確実に期待通り、いや考える限り最良の結果を残さなければ許されないものもある。その象徴的なものがクルマの先進安全機構である。ドライバーの安全を確実に担保するため、期待以上の働きをして欲しいと願うし、それにしっかりと応えてくれなければクルマと人との信頼関係は完全に崩れる。
さらに言えばクルマ本体の信頼度だけでなく、路面とのコンタクトを支える唯一の存在、タイヤにもその責任は求められる。どんなに先進的な安全機能も、タイヤによっては、持てる実力の半分すら発揮できないことだってある。
そこでオールシーズンタイヤである。今回装着しているミシュラン「クロスクライメート2」。夏のドライ路面でのテストでは、アルファロメオ・ブレラのクイックで切れのいいステアリング性能をしっかりと表現してくれていた。スタッドレスタイヤによるドライ走行時にある腰高感、ぐにゃりとたわんでしまう頼りなさとは無縁であった。つまり夏の使用感は期待通りというか、いい意味で、良好な形で期待を裏切ってくれたわけだ。
だがオールシーズンタイヤに誰もが期待するのは「冬は使い物になるか?」なのである。正直に言えば、これまでに経験したオールシーズンタイヤは物足りなさを感じることが多かった。どこへ行くにも“やっぱりチェーンは必携”という気分なのだ。もちろんスタッドレスもチェーンの携行は求められるのだが、「よほどのことがなければ使わないだろう」という精神的なゆとりがある。それぐらいにオールシーズンタイヤへの期待度は低く、冬はスタッドレスに限るな、と雪国出身の記者は思っていた。
オールマイティ本来の意味を実感する
「クロスクライメート2」の確実なドライ性能は、やはり頼りになる。実はトレッド面に細かいサイプ(溝)が刻まれたスタッドレスタイヤは、ドライ路面でもウエット路面でも、夏用タイヤより踏ん張りが効かずに制動距離が伸びる。当然、コーナリングでのキレもよくはない。その代わりに数多くのサイプが、雪や凍結路面をしっかりと掴んで走ることが出来る。
今回は同行のマツダCX-30には、「ブリヂストンVRX2」、サイズは215/55R18が装着されている。最新のVRX3ではないが、それでも雪道性能ではいまだに大きな不満が出ないスタッドレスタイヤだ。予想どおり、ドライ路面では特段に切れやレスポンスの良さを意識するような事は無かったが、雪道では安心感を得て走れた。
一方のクロスクライメート2のサイズは225/50R17。大きな不満のなかったドライ路面から、標高が上がるごとに雪道へと変化する路面に実に自然にすんなりと走り込んでいける。雪道に入ったからといって、急激に不安定になり、ドライバーのストレスが上がるようなことがないのだ。ざくざくとした積雪路では先行するCX-30にピタリと追従する形で積雪路をどんどん走って行ける。その安定感の高さがどれほどのものかと、安全な駐車場でブレーキテストの真似事をやってみる。1割程度スタッドレスより制動距離は伸びるのだが、それを織り込みながら走行すればストレスを感じることはないのだ。
もっとも気になるのは凍結路。さすがにここではスタッドレスより2割程度速度を落として走らなければいけないだろう。とくにアンダーステアによって対向車線へと飛び出す可能性の高くなる左コーナーでは、右コーナー以上に速を落とし、慎重でなければいけない。そうした「心づもり」をしていれば、このミシュランのオールシーズンタイヤは実に頼りになる存在である。さらに言えば覚悟していたはずのチェーン装着という事態に一度もならずに済んだ。
失礼ながらはなっから大きな期待はしていなかった。だが、いざ実践の場では期待以上の結果を残す。それはアスリートたちの期待以上の活躍にも似て、なんとも清々しく心浮き立つような気分にさせてくれるものであり、快適な雪道ドライブになった。3月はいえ、東京ではまだ突然の降雪の可能性もある。さらには県境を越えて春スキーやドライブがより自由に行える状況になれば、雪道走行も十分に考えられる状況だ。そんな都市部のドライバーにとって「クロスクライメート2」は心地いい存在になってくれるはず。ただし、スタッドレスタイヤと全く同じと思い込まぬこと。安全のためには過度な期待はせず、つねに自らに言い聞かせながら、楽しんで走って欲しい。
テスト当日は幸い積雪路から半凍結路、そしてドライが次々と現れる路面状況だった。
積雪路でしっかりと露面を掴みながら走行出来るクロスクライメート2。
ドライ路面ではブレラのレスポンスの良さを味わいながらの走行を楽しめた。
積雪路にはくっきりとクロスクライメート2のトレッドが刻まれている。
もっとも懸念していた滑りやすい半凍結路。こういう状況ではやはり速度を少し落として慎重に。
比較も兼ねた同行車両のマツダCX-30には評判の高いブリヂストン・ブリザックVRX2が装着。スタッドレスと最新の安全装備のお陰で、その安定感は想像以上に高かった。
さすがにスタッドレス並みとは行かないが、凍結路でも安定感を感じた。
春先でも、まだまだこのようなシーンに出合う可能性あり。つぎのタイヤの交換では「クロスクライメート2」を候補に入れてみてはどうだろうか。
路面適合表
※乾燥路面と同様の性能を保証するものではありません。速度等、雪道での運転には十分ご注意願います。
※いかなるタイヤ(スタッドレスタイヤを含む)もチェーン装着が必要となります。全車チェーン規制に備えチェーンを携行ください。
対応サイズ表
※全サイズ、全額返金保証プログラム対象
ミシュランお客様相談室:0276-25-4411
TEXT:佐藤篤司(AQ編集部)
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
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