1980年代に登場したルノーのフラグシップ「25(ヴァンサンク)」を所有するモータージャーナリストの内田俊一さん。日本では滅多に見られない貴重なルノーとの出会いから現在にいたるまでのお話の中編。
25V6バカラを購入した理由
新型メルセデス・ベンツCクラス日本上陸! 価格は654万円から
当時の最上級車「サフラン」には目もくれず、「25V6バカラ」を選んだ理由は、ふたつあった。
【前編】これまでの愛車遍歴を振り返る!
まずはシートの座り心地と乗り心地の良さだ。大柄なレザー・シートは身体をゆったりと包み込んでくれ、往年のルノー車(“数字のルノー”とも言われる)のなかでも、秀逸であると思う。
そしてもうひとつは“バカラ”だったからだ。当時の最上級グレードで、ブラウンの専用レザーシートやバックスキンのヘッドライニングなどを装備。テールゲートを開けると、トノーカバーにはガーメントバックが備わるなど、ちょっとやそっとでは真似できないセンスの良さが魅力的だった。Bピラーに設けられたルームライトが、少し妖しげな雰囲気を漂わせている。バカラが持つ独特な雰囲気に包まれると、妙に落ち着いた気持になるのだ。
搭載するエンジンは、PRV(プジョー・ルノー・ボルボの共同開発)の2.8リッターV型6気筒ガソリンで、最高出力157psと最大トルク23.5kgmを発揮した。組み合わせるトランスミッションは4ATだから、スペックとしてはそれほどすごくはない。
もっとも、当時のルノーを語るのに、具体的なエンジン・スペックは不要な気がする。ほとんどのモデルが、ボディサイズに対し出力・トルクが余裕たっぷりとは言えなかったものの、実際走らせると「本当にその数値なの?」と、驚くほどよく走ってくれるからだ。購入した25V6バカラも同様で、まさに必要にして十分。それ以上でもそれ以下でもない。
25の魅力に気がつく
現在所有する25とは別に、以前25を持っていたのは前回記した。
最初の25は、オートマチック・トランスミッションの不具合が発生したのにくわえ、それまで乗っていたルノーがすべてマニュアル・トランスミッションであり、“元気に走らせることが出来ない”という不満もあって、すぐに手放した。
いま振り返ると、30代だった当時、25の魅力が理解出来ていなかったように思う。「自分の思った通りに走らせたい!」という欲求が強く、それに応えてくれない25に不満を持ったのだ。
ふたたび25を手にいれたとき、すでに私は40代になっていた。かつてと異なり、時の流れに身を任せて、じっくり、そしてのんびりとクルマを走らせることが愉しくなっていた。
まさにそういったシーンに25はぴったりなクルマなのだ。
バカラは特別
当時のフラッグシップだった25は、V6モデルと4気筒モデルの「GTX」を含めても200台ほどしか輸入されなかったように思う。同時期に販売された「21ターボ」も、約7年間の販売期間で500台にも満たなかったそうだ。
最初はキャピタル企業と日英自動車というディーラーが、いわゆる“フェイズ1”という初期型を輸入し、販売した。これは2500ccのV6エンジンに3速ATを組み合わせたものだった。
その後、ルノーの輸入権がJAXへ移る頃にマイナーチェンジが実施され、最上級グレードのバカラが追加された。当時のJAXでは25以外に「5」や「21」、アルピーヌ「V6ターボ」などさまざまなルノー車を扱っていた。そうしたなかにあって25は、高価格(約570万円)という点や、“フランス製高級車”の人気が低かったこともあって、セールスは相当苦戦していたようだ。
JAXがルノーの輸入から撤退するとき、100万~200万円ほど値引きされて販売されたぐらいなので、在庫処分にはかなり苦労したはずだ。なにしろその少し前、筆者が新車で21ターボを購入したとき、価格差がおよそ200万円ある25V6バカラを、21ターボとおなじ値段で購入しないか? と、勧められたほどだ。
ちなみに、当時の25に設定されたV型6気筒エンジン搭載車の「V6」と「V6バカラ」の差は装備のみだ。バカラは、アルミホイールが専用デザインになるうえ、Cピラーとリアに“BACCARA”のエンブレムが備わる。因みに4気筒モデルのGTXも僅かながら輸入されている。
エクステリアの差はごくわずかであるが、インテリアは大きく異なる。専用デザインのステアリグ・ホイールや、ブラウンのレザー・シート、フロアカーペットなどによってゴージャスな雰囲気だ。トランクの内張も、専用カラーのブラウンになる。
本国ではV6バカラの上に、「V6バカラ・ターボ」が存在した。正規輸入されなかったため、日本へは1台も上陸していないはずであるが、オウナーとしてはいつか乗ってみたいものだ。
さて、私が購入した25V6バカラはいかに? 後編で述べる。
【前編】これまでの愛車遍歴を振り返る!
文・内田俊一
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みんなのコメント
少し寝てしまった記憶があります。今までいろいろな車に乗りましたが一番の乗り心地という点では同意します。
あの時21ターボに関してディラーに行ったのですが担当者の「エアコン程度のつまらない故障」という言葉で
ルノーは見送りました。