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【激増中なるも要注意点!!】「残価設定ローン」の落とし穴と副作用

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【激増中なるも要注意点!!】「残価設定ローン」の落とし穴と副作用

 クルマを購入しようとディーラーに行って『残価設定ローン』を薦められた人もいると思う。

 1990年代に注目され始めて20年以上が経過するが、残価設定ローンとはいったどのようなローンなのか? そして日本で定着してきているのだろうか?

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 残価設定ローンの特徴、メリット、デメリット、要注意ポイントなどをクルマの売買について詳しい渡辺陽一郎氏が解説する。

文:渡辺陽一郎/写真:TOYOTA、ベストカー編集部

残価設定ローンが増えている理由

ようやく残価設定ローンも認知され始め使う人は増えている。特にアルファードなどの人気車の場合は3年後にいい査定が期待できるため得するケースもある

 一般的に商品をローンで購入する時は、全額を返済して自分の所有にする。しかしクルマには、残価設定ローンもある。契約時に3~5年後の残価(残存価値)を設定して、残価以外の金額を分割返済するローンだ。

 例えば車両価格が200万円で、3年後の残価率(新車価格に占める残価の割合)が40%だったとする。この場合は40%の残価(80万円)を除いた120万円を3年間で分割返済する。ローンの返済を終えても車両は自分の所有にならないが、月々の返済額を安く抑えられる。

 最近は残価設定ローンの利用者が増えている。販売会社によっては、販売総数の50%前後に達することもあるという。残価設定ローンのみに年率1.9%から2.9%の低金利を設定するなど、ユーザーを誘導しているからだ。

 低金利を設定しても利用者を増やしたい理由は、残価設定ローンに、それだけ大きなメリットがあるからだ。

 残価設定ローンの返済期間が満了した時には、車両を引き渡す、残価を支払って車両を買い取る、改めてローンを組み直して返済を続けるという3つの選択をできることが多い。

人気車とは対照的に販売面で苦戦しているモデルは3年後の査定が厳しくなりがちだから、残価設定ローンに向いていないとも言える

 このなかでメーカーと販売会社が希望するのは、ユーザーが車両を引き渡して、改めて別の新車で残価設定ローンを組むことだ。そうすれば新車が売れて、程度の良い下取り車も手に入るから中古車部門にもメリットが生じる。

 だから金利を下げても残価設定ローンに力を入れるのだ。

 通常のフルローンでは、車両価格の全額を返済するから、返済期間を終えると所有権はユーザーに移る。この時に新車購入の提案をしても、「しばらくこのクルマに乗り続ける」と言われる可能性が高い。

 ところが残価設定ローンなら、返済期間を終えても車両はユーザーの所有にならないため、新たに新車で契約する提案をしやすい。

返済を終えた後にどうするかがポイント

 そして先に挙げた3つの選択肢のうち、改めてローンを組み直して返済を続ける場合、残価設定ローンによっては月々の返済額が増えてしまう。残価設定ローンの期間中は低金利を利用できても、その後に改めてローンを組み直すと、標準金利の6~8%を適用する場合もあるからだ。

今までと同じクルマを使いながら、高い返済額を支払うか、それとも新車に乗り替えて従来と同じ安い返済額で済ませるか。多くのユーザーは後者を選ぶ。

 しかも残価設定ローンの残価率は、中古車市場で高値売却できる人気車ほど高い。普通は3年後の残価率が40%前後だが、人気車だったり販売に力を入れる車種は50~55%に達する。

人気のレクサスUX250h Fスポーツも残価設定ローンを使えば月々の返済額を少なく済ませることができるが、絶対にお得なわけではない(下表参照)

 仮に3年後の残価率が55%なら、3年間で残りの45%を返済すればいいため、月々の返済額をいっそう安く抑えられる。

 その半面、返済期間満了時に残価を支払って買い取る場合は、55%を支払わねばならない。改めてローンを組んで返済を続ける時も、再ローンによる返済が増える。

 そうなると大半のユーザーは、残価率の高い車種で改めて残価設定ローンを組み、定期的に乗り替えを続ける。メーカーと販売会社の狙いどおり、もはやこのサイクルから逃れられない。

残価設定ローンの魅力は月々の支払額を安く抑えることができることだが、同じ金利でも支払総額は通常ローンのほうが安くなっている。ただし、査定額、下取り額、買取価格なども影響してくるので、この表だけで損得はわからない。あくまでもこの表は支払額を比較したもの

エアロ仕様は残価率が高い

 残価設定ローンが多く利用される背景には、携帯電話の普及もある。以前の認識では、ローンは危うい借金とされたが、定額制の携帯電話が普及した今では毎月お金を支払うのが当たり前になった。残価設定ローンの抵抗感も薄れている。

ステップワゴンのエアロモデルであるスパーダは残価設定ローンを使うことで標準ボディと同じくらいの支払額に抑えることができるケースもある

 普及が進んだため、今のさまざまな販売動向の根底には、残価設定ローンがある。

 例えばステップワゴンは、エアロパーツを装着したスパーダのみに、大幅なマイナーチェンジを施してハイブリッドも加えた。

 標準ボディは小規模の変更にとどめている。その理由としてメーカーは、「ステップワゴンの登録台数の約90%をスパーダが占めるから、マイナーチェンジもスパーダ中心に行った」と説明した。

 この偏った販売比率にも、残価設定ローンが関係している。3年後の残価率は、スパーダなら新車時の50%、標準ボディでは44%という具合に差が生じていたからだ。

軽自動車のエアロモデルは人気も高く、3年後の査定額も高い傾向にあるが、ボディカラーも重要な要素となり、イエローなど好みのわかれる色は不利になることも

 そうなるとカッコよくて価格の高いスパーダと、外観は大人しくて価格の安い標準ボディで、月々の返済額がほぼ同じになってしまう。車両を買い取る場合は、スパーダでは月々の返済額が少ない代わりに高い金額を支払うが、車両を引き渡すのであれば出費は同等だ。

 N-BOXなどの軽自動車も含めて、エアロ仕様は残価率が高い。ボディカラーもブラックや光沢のあるホワイトは有利だ。

 セールスマンも「ブラックとホワイトボディのエアロ仕様は売却時に有利」と推奨するから、売れ方が一層偏る。標準ボディに明るいブルーやグリーン、イエローなどを設定しても、売れ行きを伸ばせずに廃止されてしまう。

借り物という認識で大切に乗る

 ただし残価設定ローンには注意点も多い。まず走行距離やボディに付いたキズなどが規定の範囲に収まらないと、車両を引き渡す時に精算が生じる。走行距離の規定は1か月当たり1000km、3年契約なら3万6000kmのパターンが多く、1km超過するごとに5~10円が加算される。

プライベート、仕事で使用し、かつ高速移動が多い場合は走行距離が伸びて規定の距離を大きく超えると生産時に大きなマイナスとなる

 特に事故には注意したい。登録して2年後くらいに自分の過失に基づく全損事故を発生させると、車両保険金の全額を返済に充当しても、債務が残る場合がある。登録から2年も経過すると車両保険価額は低下するが、残価設定ローンでは返済額が少ないから、債務はあまり減らない。その結果、残債が生じやすい。

 追突事故の被害にあった時も面倒だ。損害の程度次第で事故歴になり、精算が生じるが、この金額まで加害者に請求するのは難しい。自分が無事故でも精算金を支払わねばならない。

スポーツ&GTなどは手も入れたくなるし、ガンガン走ることでキズなどもついてしまいがち。この手のクルマは残価設定ローンには向いてない

 対策としては、車両保険の新車特約(車両新価特約)に加入しておくと、半損以上の被害が生じた時に新車購入費用を補償してくれる。その代わり保険料が高い。

 以上のように残価設定ローンを利用する時は、車両を借りているつもりで大切に使うことが求められる。車両保険も手厚く加入しておきたい。

 また先に述べたとおり、月々の返済額が少ない残価設定ローンでは、債務の返済される速度が遅い。低金利に魅力を感じて利用するとしても、返済期間を短く抑えて頭金を多く充当するなど、なるべく債務の負担を抑えるように心がけたいものだ。 

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