この記事をまとめると
■2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員に10点を入れたクルマとその理由を聞いた
アバルト500eは電気自動車でもやっぱりアバルトだった! 2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤーで10点を入れたクルマとその理由【嶋田智之編】
■渡辺陽一郎氏は当初はスバル・インプレッサに投票する予定だったがまさかの10ベスト落選
■そこで、新たなキャラクターを目指し、ハイブリッド車の新しい価値を創造したプリウスを選んだ
本音はインプレッサだった! しかし……
2023−2024年のCOTY(日本カー・オブ・ザ・イヤー)は、トヨタ・プリウスに決定した。トータルで360点を獲得しており、2位のBMW X1は150点だから、2倍以上の差を付けた。プリウスに満点の10点を投じた選考委員は30名だから、360点の内、300点は満点で占められた。
COTYでは、2022年11月から2023年10月31日までに発表または発売された乗用車を対象に、まずは投票で10ベストカーを選出する。この一次選考によって選ばれた10車のなかから、さらにCOTYを決定する仕組みだ。
私の場合、10ベストカーを選ぶ段階では、今年のCOTYはスバル・インプレッサにすると決めていた。インプレッサは視界が優れ、運転がしやすく、後席も広い。走行安定性と乗り心地も良く、混雑した道路でも使いやすい優れた機能を備える。
そして、外観は地味で目立たないが、どのような街並みにも溶け込み、なによりも周囲の歩行者やドライバーに威圧感を与えない。いまは海外では戦争が行われ、日本では新型コロナウイルスの影響も残る。所得も伸び悩む。このような世相に、威圧感を与えるクルマのデザインは相応しくないと思う。街なかの雰囲気もさらに殺伐とさせてしまう。
新型インプレッサも、2世代前までに比べると睨みを利かせる表情になったが、いまの新型車のなかでは穏やかな部類に入る。前述のとおり、実用的な機能が優れ、デザインもマトモで、ベーシックグレードのSTは実用装備を充実させて価格を229万9000円に抑えた。いまの時代に求められる機能とデザインを備えて買い得だから、COTYに相応しいと考えた。
プリウスに10点入れた理由とは
ところが、インプレッサは10ベストカーに入らなかった。クロストレックは選ばれたが、私の考えではインプレッサの派生車種だ。インプレッサを差し置いて、クロストレックをCOTYに選ぶことは筋違いだと思う。
そこでクロストレックも除外すると、私にとっての1位はプリウスとなった。新しいクルマ作りに挑み、それがユーザーのニーズにも沿っているからだ。
ちなみに初代プリウスは、世界初の本格的な量産ハイブリッド車として1997年に発売されたが、今ではトヨタの大半の売れ筋車種にハイブリッドが搭載される。コンパクトカーのヤリスハイブリッドは、WLTCモード燃費が36km/Lに達しており、広い車内が欲しければシエンタやノア&ヴォクシーなどのミニバン、カローラクロスのようなSUVにもハイブリッドが搭載される。
その結果、ハイブリッド専用車のプリウスを選ぶメリットは薄れ、登録台数も下がった。2010年と2012年のプリウスは、1カ月平均登録台数が2万6000台を超えたが、2022年は2700台少々だから約10分の1に減った。
そうなるとプリウスを廃止する方法もあったと思うが、トヨタの技術力を象徴する存在で、いまでは長い伝統に支えられて認知度も高い。廃止は避けたい。
そこで新型プリウスは、「ハイブリッドの付加価値」に力を入れた。具体的には、まずモーター駆動の採用に基づく滑らかな加速と高い瞬発力が挙げられる。そこで新型は、主力エンジンの排気量を2リッターに拡大して動力性能を向上させた。全高は先代型に比べて40mm低く、低重心化によって走行安定性も高めている。
外観は、天井を下げて前後のピラー(柱)とウインドウを寝かせたから、5ドアクーペ風になった。過去を振り返ると、トヨタにはカリーナEDなど背の低い4ドアハードトップが多かったが、近年では廃止された。その一方で欧州車には、天井の低い4ドアや5ドアが増えた。新型プリウスの外観は、背が低くカッコイイ日本車の失地回復とも受け取られる。
以上のようにプリウスは、ハイブリッド専用車の伝統を継承しながら、燃費ではなく付加価値を発展させるフルモデルチェンジを行った。これはいままで見られなかったクルマ作りで、今後の日本車を存続させる上でも優れた前例になる。将来の日本車に向けた貢献も含めて、プリウスをイヤーカーに選んだ。
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